Episode 7 夜の図書館で大波乱の予感
夜の図書館。
ランプの明かりが机の上の本をほんのり照らす中、わたしは一冊の魔法書に目を落としていた。
「……こんな時間に図書館に誰かいると思ったら、エル嬢?」
振り返ると、そこに立っていたのは――レオニール様だった。
金髪がランプの光に柔らかく反射して、まるで夜の精霊のようだ。
「レオニール様……! こんな夜遅くまで……」
思わず声が小さくなる。心臓の鼓動も早い。
「僕も眠れなくてね……つい、歩き回ってしまった」
その笑みは昼間より優しく見えるのに、瞳の奥には深い影がちらりと見える。
「えっと……夜の図書館は危険よ。お一人で歩くのは……」
咄嗟に注意する。わたしの手が少し震える。
「大丈夫、怖くないよ」
レオニール様はすっと歩み寄り、隣の机に腰掛ける。
わたしと距離が近すぎて、息遣いまで感じる。
「昼間の君はみんなの前で笑っていたけど、夜の君は……とても、素直で、可愛いね」
「そ、そんな……!」
頬が熱くなる。
目を逸らすと、彼は小さく首を傾げる。
「怒らなくていいよ、エル嬢。僕は君を試してるんじゃなくて……ただ、知りたくて……」
その瞬間、笑顔の端に、夜の闇のような冷たさが走る。
心臓が早鐘を打った。
(……昼間の陽気な顔と、これが同じ人?)
「……レオニール様……」
「君の声、すごくいい……」
彼はそっと、でも確実にわたしに近づく。
手が机に触れ、わずかにこちらに伸びる。
そのとき、図書館の重い扉が開く音が響いた。
――振り返ると、そこに立っていたのは、ルカ様。
「……レオニール殿下、何をしているのですか」
静かな声だが、低く冷たい響きに、空気が一瞬で凍る。
その視線がレオニール様とわたし、両方を貫いている。
「ルカ様……」
思わず息が詰まる。
「エル、どうか席から離れてください」
ルカ様はわたしを守るようにこちらに歩み寄る。
その気迫に、レオニール様ですら微かに眉をひそめた。
「ふふ……こんなに緊張した顔も、君は可愛いね、エル嬢」
レオニール様は笑みを絶やさない。
だが、その笑みの下で、冷たい計算が静かに動いているのがわかる。
「……レオニール殿下」
ルカ様の声がさらに鋭くなる。
その場の空気が、まるで嵐の前の静けさのように張り詰めた。
(……これは、大波乱の予感……!)
わたしの心臓は、もう手に取るように分かるくらいに速く打っていた。
ルカ様、だいたいエルがいるところにいる。
もしかしてストーカー? 怖。
ルカ様は独占欲強めのタイプですね。




