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Episode 5 平和にならない昼食タイム

 昼休みの鐘が鳴り、校舎の庭に学生が溢れ始めた。

 わたしも中庭のベンチで小さな一息をついていたところ――


「エルリウール様!」


 パタパタと小走りで近づいてくる影。

 振り返る前に分かった。声で。


「エノリス様?」


「はいっ! あの……もしよろしければ、一緒にお昼をいただけないかと……!」


 盛大にきらめいた瞳で見上げられて、胸がくすぐったくなる。


(やっぱりこの子、可愛すぎるわ……)


「もちろん、ご一緒いたしましょう」


「えへへ……! よかった……!」


 エノリス様は両手でお弁当箱を抱え、嬉しそうに頬を染めた。

 その瞬間、周囲にいた男子生徒たちが


「すげぇ可愛い……」

「天使……?」


 とひそひそ(ささや)きだす。


 ――愛され体質、恐るべし。


「……エル。どこへ行くつもりですか?」


 いつの間にか隣に立っていたルカ様が、ひっそりと、しかし確かに距離を詰めていた。


「ルカ様。エノリス様と昼食をご一緒しようと……」


「そうですか。……では私も」


「え? ルカ様は忙しいんじゃ――」


「エルの安全が最優先なので」


 言葉はいつも通り丁寧なのに、その声はなぜか少し硬い。


(……まさか、嫉妬?)


 そう思った瞬間――


「エル」


 背後から優しい、けれどどこか鋭い声が降ってきた。


 アレクシス様だ。


「昼食は……私と、だろう?」


「え? アレクシス様と、とは申し上げてませんが……」


「言ってないだけで、暗黙の了解というものがあるだろう?」


「⋯⋯そんなもの、あったかしら⋯⋯?」


「……ふ」


 アレクシス様がわたしの横に立ち、エノリス様に向かって微笑む。


「エノリス嬢。エルは私の婚約者ですので、昼食をご一緒するときは――」


「……アレクシス様」

 わたしは思わず眉をひそめた。


「……なんだ」


「わたしを“所有物”みたいに扱うの、やめていただけませんか?」


「ち、違う! 所有物扱いではなく……その……!」


 アレクシス様が言葉を失って固まった。

 珍しい。いつも余裕のアレクシス様が。


「……ふっ」

 横でルカ様が小さく息を漏らす。


 今の、確実に“笑った”……!


(もしかして、ルカ様……ちょっと嬉しそう?)


 そのとき――


「おや、仲がいいね」


 陽だまりのような声が、すぐ背後から聞こえてきた。


 振り返れば、金髪碧眼の美しい少年がいた。

 そこにいるのは、トリアスト王国の第二王子、レオニール様。


 穏やかな笑み。

 だけど、視線がわたしに触れた瞬間――その底で小さな何かが揺れる。


 まるで“闇が微笑んだ”みたいに。


「エル嬢。お昼は誰とご一緒するの?」


「え、ええと……」


「僕も混ぜてくれたら嬉しいな。兄上と……フォルディアス公爵──ルカと、ね」


 柔らかい声音なのに、どこか挑発のような、試されているような気配がした。


 アレクシス様の眉がわずかに動く。


「レオニール。お前は自分の侍従たちと食べればいいだろう」


「やだなぁ兄上。僕は“家族と仲良くしたい”んだよ? だってさ、兄上とエル嬢が結婚したら、僕にとって、エル嬢は義姉(あね)上──“お義姉(ねえ)様”になるんだから」


 言葉は優しいのに、笑顔の裏で何か黒いものがうごめいている。


 そして――


「でも……誰と食べるかはエル嬢が決めることだよね?」


 ふ、と微笑む彼の瞳。

 そこに一瞬だけ覗く“底なしの深さ”に、わたしは背筋がぞくっとした。


(この人……笑ってるのに、怖い……)


「エルリウール様……あの……」

 エノリス様が不安げに袖を引いた。


 ああ、この子も気づいたのかもしれない。

 第二王子(レオニール様)の“違和感”に。


 わたしは息を整え、笑顔を作った。


「では、皆さまご一緒に。せっかくですもの」


「……エル」

 アレクシス様の声が低い。


「ご一緒……ですか」

 ルカ様の声がわずかに沈んだ。


「やったぁ。嬉しいな」

 レオニール様は満面の笑み。


 笑みが――どこか“仮面のよう”に見えた。

闇ありそうな第二王子殿下登場〜。

彼は中等科でエルたちとは学年が違うため、あんま出てこないかもしれません。

攻略対象の一人なのに。

※エルは、十六歳、高等科一年

アレクシスとレオニールは性格にも差がある。

おかしい、父親同じはずなのに。絶対、どっちか、母親の性格強く受け継いでます。

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