Episode 31 エルリウール・アルカ・ショアンの前世
ここにいたのがわたしじゃなかったら、はて? と首をかしげていたと思う。
でもわたしは違う。
なぜならわたしは──
「わたし、アレクシス様推しじゃなくて、ルカ様推しなのよ。そのことをあなたも知ってるでしょう──わたしの前世、姫島柚希の親友⋯⋯櫻井陽碧さん?」
わたしが言うと、不敵に微笑んだエルナ──否、櫻井陽碧が転生した、エルナ・デルエーラ・ローズファルト。
「まさかこのタイミングで出してくるとは思ってませんでしたわ」
「⋯⋯ねえ、エルナ──いえ、陽碧。堅苦しいのはなしにして──“エルリウール・アルカ・ショアン”と“エルナ・デルエーラ・ローズファルト”ではなくて、“姫島柚希”と“櫻井陽碧”として話さない?」
「それはいいわね。⋯⋯正直、“エルナ”でいるのも疲れるのよ。なんせ中身が変わったってバレないように、“エルナ・デルエーラ・ローズファルト”を維持しなきゃならないんだもの。まあ、『あな薔薇』においてエルナ・デルエーラ・ローズファルトはモブですけど」
「あはは⋯⋯。悪役令嬢の従姉妹なんて、いてもいなくても変わらないんもんね。わたしも性格については結構頑張ってるよ。エリオット様とか、意外と観察眼鋭いんだもん」
「あら、流石は【観察眼の加護】の持ち主。やはり、油断はできないようね」
「うん。それに、アレクシス様にも気をつけないと」
「アレクシス様って⋯⋯なんか加護持ってたかしら?」
「えっ、陽碧、それで“アレクシス推し”を自称してたの? ⋯⋯アレクシス様は、【統治者の加護】持ちだよ」
「ああ⋯⋯。レオニールルートに入らないと解放されない加護ね。ただでさえレオニールルートは突破口がなかなか見つからなくて、結局クリアできなかったのよ」
「わたしも同じ。あ〜あ、今の『あな薔薇』はどうなってるかな〜」
「さあね〜。どうせ私達は転生したんだもの。今更前世のこと考えたって意味ないわ」
「それは言えてる。⋯⋯うん、やっぱり【魅了の加護】、封印しといてよかったな〜。二回も死ぬなんてごめんだよ」
「だからアレクシス様達はエルを溺愛してたのね。もうっ、私の知らないところで何やってるのよ」
「だって二回目の人生もすぐ死ぬなんて耐えられないじゃない。断罪回避ルートを選ぶのは当たり前でしょ?」
「それもそうね。私はモブに転生したけど、柚希は悪役令嬢だものね。でも【魅了の加護】で相手を意のままにするなんて、バレて断罪されるのは当たり前だわ」
「わたし、当事者だからね!? 断罪回避ルート選んだけど!!」
「あら、私ならゲーム通りに進めるわ⋯⋯って言いたいけど、推しに溺愛されるのも悪くないわね」
「ルカ様の溺愛は強すぎるよー⋯⋯」
「それはそれでいいじゃない。──何かあったら私を頼りなさいな。姫島柚希の親友で、エルリウール・アルカ・ショアンの従姉妹である、エルナ・デルエーラ・ローズファルトに転生した、櫻井陽碧に」
「ふふっ、ありがと、陽碧。なんかあったら頼るね」
「ええ。力になってみせましょう」
わたしが転生者だと知るのはエルナだけ。
従姉妹に転生した親友は、心強い味方だった。
整理します。
姫島柚希が転生したのは、エルリウール・アルカ・ショアン。
櫻井陽碧が転生したのは、エルナ・デルエーラ・ローズファルト。




