Episode 22 アレクシス様vsルカ様 巻き込まれているお義兄様とエノリス様
机に座らされたアレクシス様、ルカ様、お義兄様――
三人は反省文と称するペンを握っているが、明らかに真面目には書いていない。
わたしはそっと席に座り、三人の書き方を見比べる。
(……どっちも真剣に書いてるようには見えないわ……)
アレクシス様は小声で、でも明瞭にわたしへ話しかける。
「……昼休み、少しだけ外に行かないか」
その目は真剣で、でもどこか不器用。
ルカ様も同時に目を向けてくる。
「……エル。私も同じです。少しだけ……時間をいただけますか」
エルの頭が一瞬パンクしそうになる。
(え、ちょ、どういうこと!? 二人同時に!?)
その時、ハイアス先生が教室の扉の前で足を組み、冷たい視線を投げる。
「……外に出たら即学園長行きだぞ」
アレクシス様とルカ様は目を合わせ、ほんのわずかだけ顔をしかめる。
(さすがにこれは……)
しかし、三者の視線はエルに集中する。
「……え、えっと……ど、どっちと……?」
エルは必死に動揺を抑える。
アレクシス様が少し前に出て、落ち着いた声で言う。
「……エル、俺とだけ話してくれ。ほんの少しの間だけでいい」
ルカ様もにっこり微笑む。
「……私も、ほんの少しだけです。許していただけますか」
ハイアス先生のヒールが軽く床を叩く。
「……二人同時は許さん」
エルの心臓はバクバク。
(どうしろっていうの……!?)
三人の間で微妙な静寂が流れ――その時、アレクシス様が小声で提案する。
「……交互に話す。五分ずつでどうだ?」
ルカ様も穏やかにうなずく。
「……それで問題ありませんね」
お義兄様は肩を落とす。
「……俺は……また巻き込まれるだけか……」
エルは深呼吸して決意する。
(まずはアレクシス様から……)
アレクシス様の金色の瞳は真剣そのもの。
「……朝の件、謝りたい。エルを怖がらせたくなかった」
ルカ様は静かに耳を傾け、微笑みながらも心中で勝負の計算をしている。
「……その心遣い、伝わってますわ」
エルは胸がドキドキしっぱなし。
(ああああ……どっちもかっこよすぎて……目が離せない……)
そして、反省文タイムのはずが、教室は甘い空気で満たされる。
しかし、ハイアス先生の冷たい視線は常に監視しており、
一瞬でも脱線したら全員反省文追記と学園長行きの恐怖が待つ。
こうして、王子と公爵による“交互に話す昼休み争奪戦”が始まった──




