Episode 21 学園カオス三重奏、開始
アレクシス様、ルカ様、お義兄様、そしてハイアス先生。
三人の小声の口論は、先生の登場と共に一気に静止した……と思いきや。
「オメーらァァァ!!」
ハイアス先生の声が廊下中に響く。
三人は自然と後退し、腰が引ける。
「……っ、今回はお手柔らかに。二回目は手加減してくれますよね?」
アレクシス様、顔を引き締める。
「……私も負けません」
ルカ様は穏やかに微笑むが、目が笑っていない。
「ちょ、ちょっと待ってください! 俺は何もしてません!!」
お義兄様、完全パニック。
(さっきも同じような行しなかったかしら⋯⋯?)
ハイアス先生の足音がカツカツと迫る。
三人はそれだけで圧倒され、自然と後ずさる。
「昼休みまでに全員、反省文完了。できなければ学園長直行だ」
先生のヒールが床に響くたび、三人の表情がどんどん無になる。
そのまま、先生は一歩一歩確実に三人に近づく。
「さあ、行くぞ」
ハイアス先生は短く詠唱した。
発動した拘束系の魔術で、三人を強制的に教室方向へ連行。
「え、えぇ!? 勝手に動くなあああ!!」
お義兄様の叫びもむなしく、アレクシス様もルカ様も軽く抵抗するが、先生の圧には勝てない。
教室に到着すると、机を蹴飛ばしながら先生が指示する。
「全員、机に座れ。反省文スタートだ」
机に押し込まれる三人。
「……三枚以上だぞ」
先生は念を押す。
「ま、待ってください……この場で書くなんて……」
「聞こえなかったか? 三枚だ」
ハイアス先生の目が光る。
アレクシス様がため息混じりにペンを取る。
ルカ様は静かに準備する。
お義兄様はすでに顔面蒼白。
そして、教室内に沈黙が訪れる――と思った瞬間。
アレクシス様がペンを握りながら、低く呟く。
「……これは俺の反省文ではない。戦略ノートだ」
ルカ様もにやりと笑う。
「……私も、学びの記録を兼ねます」
お義兄様だけが、ペンを握りつつ震える。
「うわああああああ!!」
先生が振り返り、冷たい眼差しで二人を睨む。
「……ふざけてんのか? やるなら真面目にやれ」
その瞬間、アレクシス様がペンを地面に置く。
ルカ様も微笑む。
お義兄様はその隙に脱走を試みる――が、先生のヒールが軽く床を叩く音で即座に足が止まる。
「……全員、書き終わるまで出さねー」
教室は戦場にも似た緊張感と、どこか滑稽な空気が入り混じる。
王子、公爵、次期公爵が、元ヤン教師の前でペットのように縮こまる――。
その様子を、わたしとエノリス様は半泣きで見守るしかなかった。
――そして、これが昼休みの“学園カオス三重奏”の始まりであった。




