Episode 20 王子&公爵&兄vs元ヤン教師
アレクシス様、ルカ様、お義兄様――三人は廊下で、またしても小声で口論中だった。
「……だから、俺の言うことも聞けってば!」
「いや、それは違う! 冷静に考えろ!」
「うるさいです! 勝手に決めないでください⋯⋯!」
三方向から同時に怒声が飛ぶ。
その瞬間、後方からヒールの音が――カツカツカツッと廊下に響き渡る。
「オメーらァァァ!!」
ハイアス先生、蹴り飛ばすように教室の扉を開けたあの時と同じテンションで登場。
三人、思わずピクリと止まる。
「……先生、またですか?」
お義兄様が戦々恐々。
「静かにしろ。今すぐ反省文三枚分をお前らに書かせるぞ!」
先生の目が光る。まるで獲物を狙うハイエナのようだ。
アレクシス様が微かに眉をひそめる。
「……仕方ありませんね。今回はお手柔らかに」
その言葉とは裏腹に、王子の身体はすでに戦闘態勢。
ルカ様は穏やかな笑みを浮かべつつも、その目には冷たい光。
「……そうですね。私も負けるつもりはありません」
お義兄様だけが、完全にパニック。
「ちょ、ちょっと待ってください! 俺は何もしてませんから!!」
ハイアス先生は一歩前に出るだけで三人を圧倒する。
「覚えておけ――教室は戦場じゃない。王子のプライド? 公爵の威厳? 関係ねー。オメーら全員、私の“教え子”だ!」
その言葉に、三人とも目が点になる。
「……は?」
「……まさか、服従ですか?」
「……いやいや、勘弁してください! ってか俺1-Aじゃねぇしっ!! 二年だし!!」
その隙に、先生のヒールがカツンと床を叩く。
振り返った瞬間、三人は自然と腰が引けている。
「昼休みまでに全員、反省文完了。できなければ、学園長直行。ショアン嬢、ヴィエラ嬢、巻き込まれてるお前らもな」
アレクシス様、ルカ様、お義兄様、そしてわたし、エノリス様――全員、凍りつく。
廊下に静寂が降りた。
「……はぁぁ……先生、またですか……」
お義兄様のため息が、廊下中にこだまする。
しかし、三人が歩き出すと、再び小声で議論が始まる。
「……昼休み、どうするんだ?」
「……ここは冷静に……」
「うるさい!! お前ら二人俺のこと言うことちゃんと聞け、色ボケ王子と宮廷魔術師がーっ!!」
そのとき、ハイアス先生が背後からカツンと音を立てて立つ。
「オメーらァァァ!! 聞こえたんかァァァ!!」
再び始まる“元ヤン教師 vs 王子&公爵&義兄”の壮絶廊下バトル。
廊下の向こう側では、生徒たちがそっと身を隠し、震えながらその光景を見守る。




