魔女④
後日、3人は再びHG住宅へと足を運び、魔女の巣近辺の調査に当たっていた。
乾いた風が吹き抜け、廃ビルの隙間をカンカンと鉄骨が鳴く音が包み、そこに3人の足音が響いている。
ナツキが鼻を鳴らすように笑いながら言った。
「どうせユウキのことだ。今日もあのシアさんの所でアホ面してデレッデレしてんだろ」
「……はは、なんとなく目に浮かぶな、それ」
タツヤが肩をすくめながら笑う。
ユリはちょっと頬を膨らませる。
「タツヤもせっかくだから、お姉さんと少しお話したらいいのに…」
「うーん…僕がユウキと姉ちゃんの間に入る余地なんて…」
三人のやりとりが続いていたが、ある声をキッカケにピタリ、と足が止まる。
「……そこで止まれ」
聞き覚えのある声だった。
しかし、そこにあったのは…確かに知っているはずの声なのに、妙に冷たく乾いた響きだった。
タツヤがゆっくりと振り返る。
そこに居たのは、片手で銃を構えるユウキの姿。
その手に握られたのは、彼の愛銃、旧時代のコルトガバメントをベースにしたカスタムモデル。
その銃口は、今まさにタツヤたちへと向けられていた。
「…おいおい、今日の歓迎の仕方はちょっと斬新すぎないか?
けど、友達相手に引き金に指を掛けるのは…さすがにシャレにならないよ…」
タツヤは両手を挙げ、引きつった笑顔を浮かべた。
が、ユウキの目はどこか空虚だった。
その表情には彼らが知る“ユウキ”の感情の色がなかった。
タツヤとユリが戸惑いを浮かべる中
いち早く、違和感を察知したのはナツキだった。
ユウキの顔を見るナツキの表情が一瞬曇る。
「……どうでもいい。帰れ」
低く、無機質なユウキの声。
「帰らないなら……」
カチリ、と乾いた音と共に、引き金にかかる指が、少しだけ力を込めるように動いた。
「ちょっ、ちょっと待てユウキ!? お前、何か変だぞ!?」
タツヤが声を上げかけたその瞬間
「…やめとけ」
ナツキがタツヤとユリの間に、スッと身体を滑り込ませる。
そして笑った。
明らかに“演技の笑み”だった。
「コイツが帰れって言ってんだ。じゃあ帰るしかねーよな?」
肩をすくめてタツヤを振り返ると、ナツキはユウキの方に片手を挙げる。
「悪ィ!来るところ間違えたみてぇだわ!」
そう言い残し、ユリとタツヤの肩を無理やり引き寄せ、その場から踵を返す。
「ちょ、ちょっとナツキくん!?任務は!? どうするの……!?」
ユリが抗議の声を上げかけたその時。
彼女はふと、ナツキの表情を見て凍りつく。
そこにあったのは、普段の軽薄で飄々としたナツキではなかった。
怒気。殺気。暴力と焦燥がない交ぜになったような目。
まるで、"敵"に向ける目。
ユリの体が、ピクリと小さく震えた。
ナツキは静かに呟いた。
「アイツは……誰だ……?」
歩きながらも視線は地面の一点を睨みつけていた。
「ユウキは……俺のダチは……どこ行った……?」
その声は、静かで、けれど確実に怒りに満ちていた。
三人の背後で、ユウキはそのまま銃を構えた姿で、まるで“何か”を確認するように無言で見つめ続けていた。




