戦場④
HG住宅の一角、雑草が刈り払われ、ドラム缶や土の山で彩られた長いコースが伸びている。
"ヒデユキサーキット"…整地、障害物の設置に至るまでヒデユキが1人で作り上げた物コースだ。
これは彼が「多くの人に"風になる体験"の場を提供したい」と言う計らいから作られている。
それもあってか、HG住宅ではオフロード自転車による賭博レースが盛んで、参加常連からここは"聖地"や"戦場"と呼ばれている。
その戦場で、ナツキとホタフーキによるタケミカヅチを賭けた決戦が行われようとしている。
コース脇の見物席には、タツヤとユリ、そして偶然非番だったアリサが顔を揃えていた。
ユウキはスタート台に座り、レースの開始を見守っている。
「面白そうなことしてるみたいやから遊びに来たで〜。
せや!せっかくやからウチも協力したるわ!それ!」
アリサはドローンを5機展開する。3機はプロジェクター機能を使ったレースのホログラム中継、2機は映像の中継カメラとして飛ばす。
「アリサさん……こんな馬鹿なことに、世界的技術使わないでください……」
ユリが額に手を当ててつぶやく。
一方、スタートラインではホタフーキとナツキが向かい合っていた。
ナツキがにやりと笑って手を差し出す。
「子供相手にも手は抜かねぇからな」
「おうよ!」
ホタフーキは迷わず手を握る。互いにグッと握手を交わすと、自転車に跨がり、スタートの合図を待つ。
スタート台でユウキが腕を上げる。
「準備はいいか?レディ…ゴー!!」
ユウキが手を振り下ろす。
号令と同時に、2人の足がペダルに力を込める。
…しかし。
ガンッ!!
金属音が鳴り、ホタフーキの前輪が外れ、勢いよく顔面から地面に激突する。
「いってぇええぇぇぇ!!」
ナツキは既に先を行く。そして、後ろを振り返ると高らかに笑う。
「バーカ!!勝負はレースの前から始まってんだよ!そこで寝てな!!ギャハハハ!!」
「お、大人気ねぇ……」
タツヤとアリサが同時に呟く。
ユウキは笑いを堪えきれず腹を抱えていた。
ユリは慌ててホタフーキに駆け寄る。
「だ、大丈夫!? 」
地面に伏していたホタフーキが顔を上げた。
その表情は血と怒りで染まっている…まるで鬼神のごとく。
「ナツキィィィィィィィィィ!!!!」
怒りの雄叫びを上げながら、ホタフーキは片輪しかない自転車をウィリー状態で立ち上げる。
ユウキがニヤリと口元を歪める。
「こりゃあ面白くなりそうだぜ……」




