戦場③
深夜のHG住宅、ユウキ達の家のガレージのシャッターが微かに軋んで開く。
ガレージの中からホタフーキが周囲を見回し、誰もいないのを確認する。
「へへっ……ついに乗る時が来たぜ、ユウキ兄ちゃんの“ウロボロス”……!」
バイクに跨がり、恐る恐るエンジンを起動。低く唸るエンジン音に胸が高鳴る。
しかし、アクセルを回しても、バイクはノロノロと動くだけだった。
「あ、あれ?
これ、どうやってスピード上げんの!?」
その瞬間。
ドンッ!
後部に衝撃が走る。
振り返ると、そこには血管浮き立つ鬼の形相のユウキが立っていた。
「……鬼教官、参上」
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「てめぇ……俺のバイク、勝手に動かしてんじゃねぇぇぇ!!オラァッ!!
まずはアクセル吹かせ! ギア上げろ! その前にコケたくねぇなら坊主頭叩き割って教え込んでやるわァ!!」
ボコボコと頭を殴りながら操縦の説明をする。
「イタタタタ! 降りるからやめてぇぇぇ!!」
「甘えんじゃねぇ!! 一度乗ったら俺が“良い”って言うまで走り続けんだよ!!
ちなみにバイクに傷つけたら、てめぇにも同じ痛みを味わわせてやるからなぁぁ!!」
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翌朝。ダストハイブの食堂に顔面をボッコボコに腫らし、まるで芸術作品のような顔でホタフーキが現れた。
「よ、ようみんな……」
タツヤは持っていたスプーンの手を止め、凄惨な顔面のホタフーキに声を掛ける。
「お、おい……なにがあったんだ……?」
ユリが心配そうに顔を覗き込む横で、ナツキは腹を抱えて大爆笑していた。
そして遅れて現れたユウキは、トレーを運びながらぼそっと一言。
「俺のウロボロスに無断で乗った罰だ」
ドカッと席につき、静かに食事をかきこみ始める。
「けどまあ、分かるぜ? バイク乗りたくなるお年頃だもんな〜?」
と、ナツキはニヤニヤしながら肘でホタフーキを突いているが、ユウキはそんな彼も睨みつける。
「テメェはテメェでいつまで俺にメンテやらせてんだ。そろそろ自分のアシくらいテメーが面倒見ろや」
その言葉を聞いたホタフーキは、食堂のテーブルをバンと叩いてナツキを指差す。
「ナツキ兄ちゃん…俺と! タケミカヅチを賭けて勝負しろ!!俺が勝ったらタケミカヅチは俺のもんだ!!」
ナツキは箸を止めて、ぽかんとした。
「……は?」
ナツキは引きつった顔で言った。
「いきなり何言ってやがる…冗談はそのボコボコの顔だけにしてくれ」
しかし、ユウキの一言で状況は一変する。
「おー、面白そうじゃねーか。元々あのバイクは俺が組んでやったんだ。勝負に勝った方にくれてやるよ」
ガッツポーズをするホタフーキ、そしてナツキに指をさすと一言。
「逃げんなよ!ナツキ兄ちゃん!!」
そして、自分の食事トレーを返すなり、全速力で食堂を飛び出して行く。
静かになった食堂で、タツヤがぽつりと呟く。
「……なんかまた、やかましい展開になりそうだぞ、これ……」




