戦場①
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10年前の旧みなとみらい地区北部境界線。
陽炎のようにゆらめく空気の中、金属の匂いが鼻を突いた。
鉄と油と、どこか焼け焦げたような臭気が、街全体を覆っている。
遠くから響くのは、地鳴りのような低音。
ランバートが現れている証拠だった。
「う、うわぁ……」
若き志願兵、コードネーム"ハーミット"。
細身の体に不釣り合いなアサルトライフルを抱きしめ、指がわずかに震えている。
ブロンドの髪とそばかすの浮かんだ白い頬、澄んだ青い瞳。
旧時代の映画に出てくる…まるでどこか遠い国から来た少年のようだった。
「ルーキー、戦場は初めてか?」
隣から低く、しかしどこか安心感のある声が投げかけられた。
振り返ると、屈強な体に黒いジャケットを羽織った大男がいる。
「だ、大丈夫です……はい……」
震える声に、相手は少しだけ口元を緩めた。
「私はグラディエーター。今回の任務じゃ現場指揮を任されてる。
…とは言っても、俺も前線にいたばかりでな。指揮ってやつはどうも柄じゃない」
「は、ハーミットであります…!」
「ハーミット…いいか? 戦場の死神ってのはな、臆病者のケツにキスをするらしい。しっかり引き締めていけよ?」
ドン、とハーミットの背中を力強く叩く。
思わず前のめりになりながら、ハーミットは「ハ、ハイッ」と声を張った。
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到着した戦場、旧みなとみらい地区地下通路群。
崩れたショッピングモールの地下に進入した部隊は、想像以上の光景に息を呑んだ。
天井から垂れる肉腫のような皮膚。
道路を這いまわるムカデ型ランバート、その背に寄生する虫のような小型体。
現実とは思えない悪夢が、目の前でうごめいていた。
「接敵!各班、散開しろッ!」
グラディエーターの怒号が飛ぶ。
ハーミットは手元のアサルトライフルを抱え、息を止めて引き金を引いた。
連射の反動が肩を打つ。照準がブレる。銃声が脳を震わせる。
「く、来るな……!」
前方から飛びかかってきた昆虫型ランバートを、なんとか撃ち落とす。
肉片が飛び散り、粘液が床に飛び散った。
その間も、ベテラン兵たちは冷静に獲物を仕留めていく。
グラディエーターは指揮を取りながら、要所で自身の大型拳銃による攻撃を行い、確実に敵を仕留めている。
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「敵勢力の鎮圧を確認。全員、撤退準備に入れ」
激戦の末、確認されていたランバートの殲滅に成功すると、部隊内に安堵が広がる。
装備を整え、軽口を交わしながら帰投準備に入った…その時だった。
「……緊急通信ッ!」
通信士の声が、微かに震える。
「未確認のランバートが出現……映像を送ります。なんだこれは…"龍"…!?」
映し出された映像に、誰もが息を呑んだ。
ビルを這う漆黒の鱗。
発光器官を備えた四肢、雷鳴のように咆哮を上げるその影。
「…さ、再戦準備!全員武器を構えろ!!」
グラディエーターの怒号と同時に、兵たちの表情から笑顔が消えた。
戦場が再び、地獄へと変わる。




