カゴノトリ③
乾いた銃声が響く研究室、マントマンとヒデユキ…そして"魔女たち"の死闘は続いている。
魔女たちは例え弾丸が当たろうと、表情一つ変えず…ゆっくりと近付いてくる。
マントマンの拳銃は弾を撃ちながら突破口を探すべく走る。
「……チッ」
研究所内を駆け回り、傍に転がっていたアサルトライフルを拾い上げた。
ヒデユキもすでに別のライフルを手に入れており、無言でチャージングハンドルを引くと、静かに構える。
マントマンは肩越しに言った。
「分が悪い!悪いけど…突破口、作ってくれる?」
言うや否や、自身が拾ったライフルを片手でヒデユキに投げた。
「……承知した」
ヒデユキはそれを受け取り、両手に銃を構える。
迫りくる“魔女たち”に向けて、銃口が火を噴いた。
連射される弾丸が、老婆の異形を弾き、幼い少女の脚部を削る。だが…どの個体もやはり、悲鳴ひとつ上げることはなく淡々と前進を続ける。
マントマンは別の角度から老婆型に銃を向け、丁寧に狙いを定めて引き金を引いた。
命中…しかし、老婆は少し仰け反っただけで歩みを止めることはなかった。
「参ったなぁ……荷物になると思って今日は血刀持ってきてないし」
苦笑を浮かべながらマントマンは一歩、二歩と後退する。
「やっぱ、逃げるしかないか」
その頃にはヒデユキの両手の銃も弾切れ。
ガチャリ、と無情な乾いた音が鳴る。
「脱出しよう!これ以上は埒が明かないよ!」
マントマンが叫ぶと同時に、ヒデユキは無言でライフルを地面に投げ捨て、右拳を地面に叩きつけた。
「……ムンッ!」
轟音と共に床が砕け、床材と配管、機器の残骸が爆風のように吹き飛び、魔女たちと2人を分断するかのように大穴が開く。
マントマンはそれを確認するとエレベーターに向けて駆け出し、ヒデユキもその後に続いた。
背後、壊れかけたフロアの端に、魔女たちが立ち尽くしていた。
追いかけてくる気配はない。
「……追ってこないな」
ヒデユキが呟く。
マントマンは小さく肩をすくめて答えた。
「多分、追えないんだよ。彼女たちは巣から出られない。“籠の鳥”さ。……檻の中にしか、生きられないように造られたんだ」
沈黙。
冷たい風が通路を吹き抜ける。
薄汚れた金属の扉が目につく。"表の研究所"への架け橋…それはまだ、辛うじて動いていた。
「急ごう」
マントマンがボタンを押すと、ゆっくりと軋んだ音を立てて扉が開く。
ふたりは無言で乗り込むと、上昇ボタンを押す。
エレベーターはゆっくりと、だが確実に地上へと昇っていった。
その間もなお、魔女たちは階下で、誰ひとり動くことなく、ただ、じっと、“空になった巣”を見つめていた。




