魔女の巣⑥
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ネオヨコハマシティの中央区――人口太陽の光が整然としたガラス張りの高層ビル群を照らし、足元のタイルさえも上品に光る。
その中を、二人の男が歩く。
ひとりは、完璧な仕立てのスリーピーススーツに身を包んだ男。
本来なら軍服とマントが定番の“マントマン”が、この日だけは違った。
サングラスを外し、綺麗にセットされた髪を風に揺らしながら歩くその姿は、まるで旧時代の映画から抜け出した俳優のよう。
すれ違う女性たちが一様に振り返り、目を奪われる。
中には、連れの男の腕を放してまで見惚れる者もいた。
その背後、巨躯の男が黙ってついてくる。
こちらはサングラスをかけ、身体にぴったりと張り付いたスーツの下から、鍛え抜かれた筋肉の厚みが滲み出ていた。
…ヒデユキだ。
スキンヘッドが反射光を跳ね返すたび、周囲の視線が本能的に距離を取る。
傍目には、ただの要人とボディーガード。だがその実、どちらもただの男ではない。
「今日は随分とめかしこんで来たな」
「今日は“上級国民”って設定だからね〜。軍服のままじゃおかしいだろ?」
マントマンは口元だけで笑って、正面のビルを見上げた。
そのビル…R.W社の本社。
この街において、最も人目につく場所であり、最も秘密が隠されている場所でもある。
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受付カウンター前
「……えーと、“タナカ”様、でしたよね?」
受付嬢が端末を操作しながら顔を上げる。
「申し訳ありませんが、こちら関係者以外の立ち入りは……」
「あれぇ? ワタナベって人から見学の許可が出てたと思ったんだけどなぁ」
マントマンが首を傾げ、少しだけ身を乗り出す。
わざとらしい素振り。けれど、その顔は本物だ。
「…せっかく、見学のあと…お姉さんとお茶でもできるかなって思ってたのに」
受付嬢が息をのむ音が聞こえた。
ほんの数秒、視線が彼の紫色の瞳に吸い込まれ、沈黙が支配する。
「ダメならしょうがないか、じゃあね!」
と、踵を返しかけた彼の背に、慌てて声が飛ぶ。
「あっ! 行かないで!……じゃなくて! こ、こちらの手違いでした!どうぞお入りください!」
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「……あまり女性を誑かすんじゃない」
エレベーターホールに向かう途中、ヒデユキがぼそっと言った。
「俺は軍人だよ? 戦場で使えるもんは、なんでも使うさ」
肩をすくめて、マントマンは鼻で笑う。
その背後からは受付嬢たちの会話が少し聞こえる。
「……ねえ、あの“タナカさん”って人……すっごいイケメンだったね」
「うん……なんかこう、現実感ないというか……まるで“作り物”みたい……」
マントマンは、静かに呟いた。
「……作り物、ねぇ」
それは、誰にも聞こえないほどの声。
鏡張りのエレベーターに映る自分の姿を、どこか他人事のように見つめながら、ほんの少しだけ目を細めた。
「……正解っちゃ、正解だね」




