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最前線②


ダストハイブ、食堂。


くぐもった警報音と共に、館内放送が響き渡る。


「クレリックより応援要請!ネオヨコハマシティにて大規模なランバートの襲撃が発生!繰り返す、ネオヨコハマシティにて――」


マントマンはチーズドリアのスプーンを口に運びながら、ぽつりと呟いた。


「さ、仕事だよタツヤ」


あくびをしながら立ち上がる姿には緊迫感が欠片もない。


タツヤは目を細めたまま、トレイを片付けつつ皮肉っぽく言う。


「…あのバカは、多分HG住宅に遊びに行ってますよ」


「大丈夫大丈夫!バカは先に行ってる。というか、ヒデユキに連絡して、増援で送るように言っといたからね」


「……見越してたんですか?」


「まさかぁ。偶然偶然。ナツキには"別の任務"を与えてただけ。副産物、ってやつ」


タツヤは半信半疑のまま、装甲車の待つ格納庫へ駆け出す。


マントマンはドリアの皿を名残惜しそうに見下ろしながら、ぼやいた。


「……流石に俺も行くかぁ。残してくのは、ちょっと悪いもんな」


--


旧みなとみらい地区。


赤い血と黒煙が吹き上がる戦場で、ランバートの大群に対し、兵士たちは懸命に抗戦を続けていた。爆発音、鋭い絶叫、機械の様な耳障りな羽音が周囲を切り裂いていく。


しかし、未だ…死人は出ていなかった。


「もっと右っ……そっちやない、あかんて!」


アリサは歯を食いしばりながら、ドローンを操作する。脳波リンクの過負荷でこめかみに激しい痛みが走る。


「……アカン、このままじゃ……みんな死ぬ……!」


その瞬間。


ズゥゥゥゥゥン!!

轟音が、戦場の音を押し流す。


だがそれは、ランバートの羽音でも咆哮でもない。

耳をつんざくエンジンの咆哮。


「なっ、なんだアレは!?」


瓦礫の向こうから、黒と赤のバイクが突き抜けてくる。黒の愛車"ウロボロス"を駆るユウキ、そして隣に並ぶのは、赤いフルカウルの愛車"タケミカヅチ"を乗りこなすナツキの姿があった。


その後方…大型のアメリカンバイクを悠然と操り、戦場とは思えぬほど涼しい顔の男が1人…"現代人最強"、ヒデユキ。


ユウキは口を開くなり叫ぶ。


「ヒャーッハー!! 血祭りじゃあぁぁぁぁ!!」


ナツキがそれに続く。


「オラオラオラァ!! 死にてぇ奴から前出てこいやぁ!!」


前線の負傷兵が唖然と呟く。


「な、なんか来たぞ……けどこれ、敵か味方かわかんねぇ……!」


その中で、ヒデユキだけが落ち着き払っていた。


バイクを丁寧に路肩へ停めると、優雅に手を挙げて二人に合図を送る。


「私はここで愛車を守る。お前たちだけで行け」


傍にいた兵士が叫ぶ。

「あ、あんた戦わないのか!?」


ヒデユキはバイクを撫でながら、飄々と答えた。


「出る幕が来たら、自然と始まるさ。今は観客でいる方が面白い」



ユウキはゲラゲラと笑いながら叫んだ。


「俺は軍属じゃねぇから!!軍人の命令は聞かねぇからなぁぁ!」


ナツキも叫ぶ。


「俺は軍属だけどよぉ!軍の命令なんか知らねぇからなぁぁ!!」


突っ込んでいく2人の背中を、ヒデユキはまるで高尚な詩人でも見るように眺める。


「愚かで、美しい…まさに青春だな」


ユリはその光景を見て、一瞬、ぽかんとする。

だが、次の瞬間。彼女の胸には確かなものが芽生えた。



まだ…希望がある。


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