ラクエン①
軍の中でも、特に優秀な者だけが配属されるとされる“旧みなとみらい地区”――
そして、その沖合に浮かぶ人工島に築かれた、ドーム状のバリアに包まれた旧世代人の楽園、"ネオヨコハマシティ"。
若き後方支援兵・ユリと、ダストハイブで支援型ギャル兵士として名を馳せる先輩兵士"アリサ"は、この都市での巡回任務に向かうため、装甲車の座席に揺られていた。
今回の任務は、軍本部からの特別通達により"成績・素行・外見が特に優れた兵士を派遣せよ"という条件が付けられていた。
その選抜を一任されたマントマンの裁量により、彼女たち2人が抜擢されたのである。
ネオヨコハマシティ…それは、R.W社によって建設された完全自給式の都市ドーム。
赤く濁った外の世界とは異なり、そこには“旧時代の青空”がLEDパネルによって完璧に再現されていた。
空調、日照、自然音、清潔な街並み。かつての人々が記憶する"平和な世界"は、あまりにも美しく、あまりにも非現実的だった。
初めて足を踏み入れる者は、誰もがその光景に言葉を失う。
アリサは、ユリの隣で明るくフランクに振る舞っている。
ほんのりと日焼けした小麦色の肌、軽やかに揺れるピンクのポニーテール。
ナチュラルながらセンスの光るメイクは、戦場でも自分らしさを忘れない姿勢の表れだった。
ユリにとって、アリサは“オシャレで素敵なお姉さん”そのもの。
それに何より、支援ポジションにおいてはユリの何歩も先を行く、信頼できるベテランでもある。
「ユリちゃん、今日はよろしくな〜!
いつもこの定期巡回はマントマンと組んでるんやけど、可愛い子とコンビ組むの初めてやねん」
関西訛り混じりに明るく話しかけてくるアリサ。
その勢いに圧倒されたのか、ユリは「はひっ!?」と情けない声を漏らしてしまう。
「アハハ!!そんなん緊張せんでええって!
今日の任務なんて、ドーム内の治安確認くらいやし、身構えるほどのもんちゃうで?」
メイクを軽く整えてきた余裕を表すかのように、アリサはウインクをひとつ。
この都市…ネオヨコハマシティは、ユリにとってただの任地ではない。
それは、“コールドスリープから目覚めた直後に選べたかもしれなかった、もう一つの可能性”でもあったのだ。
「お嬢様方〜! ネオヨコハマシティの入口に到着で〜す!」
運転席から、女性兵士の明るい声が響く。
装甲車は、厳重に管理された地下ゲートをくぐり、運搬用エレベーターでゆっくりと地上へと上昇していく。
「さ、着いたで。ここが……ネオヨコハマシティや!」
眩しい光がユリの頬を照らす。
ドーム天井に設置された巨大なLEDパネルが、懐かしい“太陽”を見事に再現していた。
空は青く、空気は澄んでいて、街を行き交う人々は、笑っていた。
ユリの知る世界とは、あまりにも違う。
世界の終わりなど、微塵も感じさせない。
そこには、完璧に作り込まれた“平和”が広がっていた。




