風に②
ホタフーキは、自分の目の前にある光景を信じられないという顔で、ただじっと見つめていた。
ギラリと一つ目のライトが闇夜に鋭く光る、無骨なボディのバイク。マットな黒の車体はまるで猛獣のようで、重厚なエンジン音は心臓を揺さぶる。
ユウキが誇らしげに胸を張る。
「こいつァ俺の相棒、“ウロボロス”だ!旧時代の“ネイキッドタイプ”のバイクをベースにして作った!!中身は全部俺仕様だぜ」
その横で、スタイリッシュな赤いカウルで覆われたもう一台のバイクがエンジンを唸らせた。
艶やかに光を反射する、鋭角的なデザイン。戦場に馴染む低重心の設計、どこか獣じみた曲線美。
ナツキが、笑みを浮かべてハンドルを握る。
「こっちは俺の魂、"タケミカヅチ"!!このバイクがあれば、前線の機動戦なら誰にも負けねぇ!」
だがその横で、ユウキが嫌味っぽく言う。
「お前、運転ヘタクソだから戦闘中に絶対コケるだろ。フレームぶっ壊れる前に、外装交換で済ませられるようにしてやったんだ」
「うるせぇ!コケる前提で作んな!」
二人のやり取りを、ホタフーキは目をキラキラさせながら聞いていた。憧れと尊敬と、ちょっとした嫉妬が混じったような、そんな瞳で。
するとユウキがニヤリと笑いながら、ホタフーキを振り返った。
「これから俺たちは……“風”になるんだがよ。お前も来るか?」
ナツキも、にやつきながら言葉を重ねる。
「ビビったりしねぇよな?お前は俺たちの”弟”なんだからよ」
ホタフーキは、満面の笑みで拳を握る。
「……行く!!」
「んじゃ、俺のケツに乗んな!」
ユウキがバイクの後ろをポンと叩く。
「しっかり掴まってろよ、ぶっ飛ばすからな!」
バリバリバリッとエンジンが唸り、夜のHG住宅を、ヘッドライトが切り裂く。
「いっくぜオラァァァァァァァァァ!!」
HG住宅を抜け、三人の影は荒野の闇に消えてい。
ただひたすらに、風を切るためだけに。




