トモダチ②
遮蔽物の多いスラムでの戦闘は、ライフルを取り回すのには不便だった。
その為タツヤは、普段の"相棒"を現状では"荷物"と判断し、その場に置いたのだ。
そして手にしたリボルバーは、あのサソリ型ランバートとの戦闘でも勝利の決め手となった一丁。取り回し重視でショートバレルのそれは、まさにこの状況ではうってつけな選択肢だった。
しかし、リスクも生じる。
…反動吸収すら度外視した構造。圧倒的火力にすべてを賭けた"緊急手段"。
「…行くぞ」
タツヤが照準を構える中
ズズズ……ジュグググ……と不気味な音がこだまする。
さきほどナツキが切り落としたトカゲ型ランバートの尻尾が、地面に這うようにして再生を始めていた。肉が蠢き、骨が伸び、再び先端が尖る。
「ケッ!生意気なトカゲ野郎め!!」
ナツキが毒づきながら血刀を振るうが、呼吸は既に荒く、刀身に送り込まれている血液も濁り始めている。限界が近い。それでも…止まれない。
タツヤは、そんなナツキの横を走り抜けながら、ユウキがかつて叩き開けた肉の裂け目に銃口を向ける。
「突破口は、こっちで拡げる……!」
引き金を引く。
——バン!!
爆発音のような銃声と共に、ランバートの頭部に近い傷口が大きく抉れた。体液とともに肉片が飛び散り、トカゲ型の叫び声が周囲に響く。
「遅れてごめん、今合流する!」
無線越しの声と同時に、ユリが戦場へ駆け込んできた。手には治療キットと止血用スプレー。迷いなく、ユウキの傍へと滑り込む。
「おい……テメェ……なんで……」
苦しげに言葉をこぼすユウキの目には、わずかな涙がにじんでいた。
「……昔なら、テメェらみてぇな陰キャは……教室の隅っこでボソボソ飯食ってるだけの…くだらねぇ小物だった…のに…よォ…」
それでも手を伸ばし、治療を拒もうとはしない。意地だけが、ユウキを保っている。
ユリは目を伏せ、少しだけ微笑むように言った。
「“今”と“昔”は違うよ」
傷口に薬液を注ぎ、ナノファイバーを縫うように張り付けながら、彼女は語る。
「確かに、私たちは…親や教師の期待に応えるだけの“優等生”だった。敷かれたレールの上を、ただまっすぐに歩くだけの…」
処置を終え、マシンガンを背から引き抜く。
「でも今、私たちの前にはレールなんてない!
だからこそ……自分たちの手で、“皆が進める道”を作りたい…希望の道を!」
バイザーに視線を送ると、リリィが動きを変える。彼女の瞳の動きだけで、避難民へのルートを切り替え、声の届かない人々へ安全な進路を提示していく。
彼女はそのまま銃を構えて走り出す…戦場の中央へと。
その背中を見送るユウキはフッと、小さく笑った。
「……そうか……ナツキ……」
かすれた声で、横たわったまま呟く。
「おめぇのダチ……最高じゃねぇか……」




