道②
HG住宅、寺院跡…かつて仏教の祈りが捧げられていたであろう古びた寺院。その本堂に足を踏み入れると、驚くような光景が広がっていた。
石畳の上で、坊主頭の男たちが無言のまま、素手で格闘技のような訓練を繰り広げている。
"型"のようでいて実戦的な動き、すべてが研ぎ澄まされている。
ナツキが呆然と呟く。
「……武道、とは違う。
…殺気すらないのに、全部が“殺す”動きだ」
その光景を黙って見守っていたのは、一人のスキンヘッドの男だった。仏像の前で腕を組み、まるで守護神のように仁王立ちするその姿。
鍛え抜かれた筋肉がタンクトップの布地を張り裂かんばかりに盛り上がっている。
彫刻のように無駄のないその肉体は、もはや“人間”というより“武の化身”のようだった。
「"ドゥンドゥン"、お久しぶりです」
ユウキがスッと膝をつく。かつての不良が、まるで修行僧のように。
「ユウキか。どうしたんだ?」
低く、地鳴りのような声。
ユウキは一瞬だけ視線を伏せたあと、後ろに控える仲間たちをチラリと見る。
「外部から来客が……その、俺のダチなんです」
スキンヘッドの男は、静かに笑うと、足音を立てずにタツヤたちの前まで歩いてくる。
その動きはまるで、風…。重力を感じさせないほどの滑らかさなのに、一歩一歩が場の空気を支配していく。
タツヤとユリは思わず背筋を伸ばす。ナツキは眉一つ動かさずに睨み返していた。
「……外からの来客なんて珍しいな。私はこの“血闘衆”の長、"ヒデユキ"だ」
差し出された手。それはまるで岩石のようにごつごつとした形でありながら、所作は礼儀正しい。
タツヤが手を差し出して握る。瞬間。
ゾクリ。
何かが背中を走った。冷たい汗が、一滴、首筋をつたう。
そこに殺意はない。ないのに、どうしてここまで“怖い”のか。
にこやかに微笑む男から感じるのは、圧倒的な“実力”。“生き物としての格の違い”。
"強い"とか"怖い"とか、そういう言葉で括れるものじゃない。
"圧倒的に、生存の次元が違う"
本能がそう告げていた。




