表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
40/89

深淵①

がらんどうの廃墟に、乾いた銃声と金属音が響く。


「くっそ、あのランバート、早ぇ!!」


ナツキが悪態をつきながら崩れた歩道を飛び越える。狙うは、トカゲのような新種のランバート。

建物の壁すら駆け上がり、外皮は金属的な光沢を帯び、細長い尾で振り返ると、まるで挑発するかのように一鳴きし、その後にはもう、視界の端へと消えていた。


「……タツヤ、もう今日は追っかけんのやめとこーぜ!なんか、こっち襲ってこないしよ!」


ナツキの声がヘッドセットから届く。だがその言葉に、タツヤはスコープ越しの視線を外さずに返す。


「バカ言え。被害が出てからじゃ遅いだろ!」


ナツキは息を切らしながら返す。

「このタイプ、民間人狙う可能性低くね?」


「“低い”だけで”ゼロ”じゃねぇ!」


そのやり取りを遮るように、ユリの緊迫した声が割り込む。


「待って!あの先は……人が住んでるエリアよ!」


スコープの先、猛スピードで走るランバートが潜り込んだ先。そこには、雑草に覆われ、錆びた金属が折れ重なるように建つ巨大な集合構造――


「……あれって」


「…HG住宅だわ」



HG住宅…旧時代、かつて高級タワーマンションやセレブ居住区が建ち並んでいたエリア。だが、世界崩壊後に管理者を失い、電力も補修も途絶えた結果、建物は骨組みだけを残して崩れ、階層構造のスラムと化した。


“高級”だったはずの住宅群は、いまや犯罪者、難民、アウトロー、そして“世界の闇”に関係する者までもが暮らすという噂の坩堝と化している。


区画は複雑に入り組み、かつてのエレベーターや連絡通路が逆に侵入者を惑わせるトラップとなり、未帰還者も後を絶たない。


そして何より

国が見て見ぬふりをしている区域である。



「マジかよ……。やべぇとこ突っ込んだぞ、あのトカゲ……!」


ナツキが唾を飲み込みながら、ユリと並んでタツヤの後ろに駆け寄る。


眼前には、タワーマンションの廃墟が静かに佇んでいた。壁は剥がれ、看板には黒いペンキで“KEEP OUT”の落書き。なのに、どこかで人の目線を感じる。まるで、廃墟そのものが生きているような気さえする。


「やっぱり……入るのか?」


「ランバートがここを拠点にしている可能性もある…少なくとも、この街にどんな奴が暮らしてるのか把握する必要はある」


タツヤはライフルを下ろし、硬い声で言った。


「ここから先は…多分、ダストハイブとは“空気”が違う」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ