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新世界へ⑤

しかし、新世界はそう簡単に彼に全てを見せてはくれなかった。


「…くっ…くそっ……!」


リラックスカプセルの中、ナツキは手を額に当てていた。まるでスナイパーのような構えで、視線を定める。


「湯気……観葉植物……棚の影……!」


見えそうで見えない。むしろ見えないように完璧に配置された謎の隠蔽物たちに、ナツキの忍耐は限界に近づいていた。


そして…。


ピピッ、ピピッ!と電子音が響く。


「…なんだ、この音は!?」


視界の隅を、小さな丸い影がスーッと横切る。

それは、ユリの愛用するサポートドローンのリリィだった。


カプセルの視界に入るたび、まるで「こっち見んな!」とでも言いたげに、肝心な場所にぴたりとホバリングしてくる。


「…こいつの動き…完璧すぎる!!まるで…"そこを隠す"のが仕事みたいじゃねぇか!!」


ピピッ!ピピピピ!

ドローンがユリの目の前まで戻り、せわしなく音を鳴らす。


「ふふっ、なぁに?どうしたの?」


ユリは、タオルで濡れた髪を拭きながら、まるでペットを撫でるかのようにリリィをよしよしと撫でる。


「今日もお利口さんだね」


ナツキの絶望は深かった。


「俺の最大の敵…新世界の番人は…まさかR.Wの機械だったとは…」


その瞬間


ブゥゥ……ピッ。

カプセル内に電子音が響き、無機質な機械音声がアナウンスを始める。


「警告…使用者のバイタルに異常を検出。脈拍上昇、血圧上昇、脳波乱れ、特定部位への血流過剰――これより救命モードへ移行します」


「うわっ!?ちょ、待て待て待て!?救命ってなに!?出せ!俺を出せ!!」


慌ててドアを叩くナツキ。だが、カプセルは外部からの音は遮断する仕様だ。

もちろん、内部からの音も外には届かない。


ユリは鼻歌を歌いながら、ドライヤーのスイッチを入れた。


そして。


「警告…内部からの異常な衝撃を感知。緊急モード起動。可視化処理を開始します」


「な、なんだ今度は…えっ!?」


カプセルの外壁がスッと透明に変化し、中の様子が丸見えになる。


しかも点滅する赤い警告ランプつき。警告音は無駄に壮大。


カプセルの中では顔面蒼白のナツキがドアをバンバン叩いていた。


その光景を目の当たりにしたユリの瞳が、一瞬にして大きく見開かれる。


そして


「きゃああああああああああああああああっ!!」


女湯全体に響き渡る絶叫。思わずタツヤが脱衣所へ飛び込んできた。


「ユリ!?どうした!?何が…」


そこでタツヤが見たものは。


タオルを落としかけた、いや、もう落ちかけてるユリの、ほぼ無防備な後ろ姿。


そして、可視化されたカプセルの中で、涙目で必死にドアを叩く全裸のナツキ。


「……あ……その……」


タツヤは言葉を失い、視線を泳がせた。


そしてユリは、震える指でタオルを持ち直し、涙を滲ませながらタツヤのほうへと歩み寄った。


パァンッ!!!


盛大な音が"新世界"に虚しくこだました。

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