新世界へ④
曇りなく壁を見つめるナツキに、呆れたようにタツヤは言う。
「…僕たちが初めてここに来た時、壁によじ登ろうとしてた君は先輩に言われて無かったっけ?
"女湯を覗こうとしても浴室に設置された防犯ドローンが視界を妨げて何も見えない"って…流石に諦めろよ」
その言葉で浴室に静寂が戻る…かに思えた。
「なぁ、タツヤ。お前のホークアイ…ライフルのスコープ。あれなら使えねぇか?"新世界"発見によ…」
「…そんなバカなことに大事なホークアイを使えるか」
タツヤは即座に却下する。最早、ダメだコイツ…と言う諦めの表情だ。
ナツキはふと、空を見上げるかのように目を細め、湯船からそっと立ち上がった。
「……いや、違ぇな」
その声は妙に静かだった。
そして次の瞬間、ナツキの目に、一筋の光が宿る。
「俺は新世界を“覗き”たいんじゃない。“踏み込み”たいんだ」
ナツキは全裸のまま湯気を切り裂いて浴室を飛び出していった。
「この前まで死にかけてた奴とは思えねぇよ…」
タツヤはそう呟き、考えるのを辞めて湯に沈んだ。
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脱衣所から生まれたままの姿で飛び出したナツキはそのまま勢いに任せて辿り着く。
"新世界"…そこは…女湯の脱衣所。
誰がどう見ても完全にアウト、正真正銘の犯罪である。
彼の心は穏やか…むしろ清らかだった。
「すげぇ…男湯と全然違う…汗の匂いなんてしない…」
ふわっと香る柔軟剤と、花のような香り。
その“違い”に思わず深呼吸するナツキ。まるで森林浴でもするかのように…。
そして、目の前には整然と畳まれた着替えが置かれている。当然、そこには最小限の布面積…"世界の裏側”も置いてある。
ナツキの手が、そっと"世界の裏側"へと伸びる。
しかし、伸びかけたその手は震えながら止まった。
「……違う。"この世界"は、俺の手で触れていい場所じゃねぇ……」
手は止まり、引っ込める。
そして、その先にあった目的の品に気づく。
脱衣所に置かれているのは、ワタナベが言っていた“最新式リラックスカプセル”。
「この中なら、見れる……」
ナツキはスッ……と音もなくカプセルに滑り込む。人体を感知したカプセルの扉はスーッと静かに閉じていく。
「思ったとおりだ。中からは外が見えるが、外からは中が見えない。さすがR.W技術…変なところで超有能」
しばらくして、ユリが風呂から戻ってくる。湯気、観葉植物、なぜか漂うオシャレな霧の演出が絶妙に全てを隠してはいるものの…逆に際立つ。
濡れた髪から落ちる水滴、少し赤く染まった肌、そしてその……"果実"。
「やはり……いや、想像以上だ……デカい……!!」
カプセルの中で、ナツキは静かに両手を合わせた。
「ありがとう、未来技術…そして、ごめんなさい…」




