新世界へ②
採血室のドアが開く。
「失礼します。九条ナツキ115歳、独身です」
ドアを開くと同時に鼻につく気取った口調で言う。
そしてナツキは採血室を物色するかのように見渡す。確かに白衣の人物が居る。
しかし、ナツキの期待していた“白衣の天使”ではなく、あの男の姿が。
「やぁ、お久しぶりです。私は兵器開発部門の人間ですが…同時に医療チームの一員でもあるんですよ…。ふっふっふっ……」
ヌルリとした笑みを浮かべながら、白衣を翻す男。
兵器開発部門所属・ワタナベ。医療チームも兼任している。
悪い人間で無い事は確かなのだが、時折"血"に関して不気味なまでの執着を見せることもあり、ナツキにとっては"少し不気味な存在"である。
「あぁ…」
一瞬で"生きる希望を失った表情”を見せるナツキ。
あのサソリ型ランバートとの戦いの最中ですら見せなかった"本当の絶望"がそこにはあった。
P.Jが静かにナツキの肩を叩いた。
その顔は同情とも取れる、何とも言えない表情をしている。
「ナツキからだよ」
その言葉と同時にニタニタと笑うワタナベが採血用の針を取り出す。
「さぁ、腕まくって。ああ、大丈夫。…さっき君たちのために"針を最適化"しておきましたので…」
ナツキは泣き叫ぶ。
「針を最適化って何だよ!誰かっっ!!!誰か助けてぇぇええ!!」
針の先がゆっくりと迫る。
泣き叫ぶナツキは、診察台の端にへばりついて脱出を試みるが、P.Jの圧倒的な力で制圧される。
そんな様子を採血室の隅で見つめるユリとタツヤ。
ユリはタツヤの服をチョイチョイと引っ張ると、静かに耳打ちした。
「…戻ってきたらよしよし、ってしてあげた方がいいかな?」
タツヤはバッサリと切り捨てる。
「しなくてもいいと思う」
2人のそんな会話も、ナツキの断末魔の叫びによってかき消されていくのだった。




