初陣④
ついに、タツヤはナツキの傍へとたどり着いた。
地面に這いつくばるナツキが、目を細めて呟く。
「…ったく。いつもなら俺に“むやみに突っ込むな”とか言ってる奴が…何してんだか」
タツヤは、そんな言葉に苦笑を返す。
「文句なら帰ってから聞くよ」
口元に笑みを浮かべて、銃口をランバートに向ける。
「ま、帰る頃には…僕は君の命の恩人なんだけど?」
ユリの声が通信機越しに再び届く。
「タツヤ、後方から味方が接近中!もう少しよ!」
その時、ランバートが地響きを伴って咆哮する。
重金属が悲鳴を上げるような音。体をくねらせ、全身の外殻を震わせて敵意をむき出しにする。
タツヤはその異形を真正面から見据え、ライフルを構える。
「“ダチ”が世話になったな!!」
「……カッコつけてんじゃねぇよ、メガネくんがよ…」
ナツキがふっと笑う。
血を吐きながらも、どこか安心した顔だった。
ランバートが咆哮する。
その巨体が繰り出す爪撃が、タツヤの頬をかすめて砂埃を巻き上げる。
一撃でももらえば、死。
それでもタツヤは、引かなかった。
恐怖を噛み殺し、視線を逸らさず、真正面から敵を見据える。
「……すげぇな、ナツキ。訓練だとしても、こんな事毎日やってたら気が狂っちゃうよ……」
至近距離から、ライフルの最後の一発を撃つ。
発射音と同時に、ランバートの頭が仰け反る。
しかし、倒れない。…届かなかった。
ランバートが勝ち誇ったように咆哮を上げる。
その音が、まるで「お前の武器は尽きた」と嘲笑っているかのように聞こえた。
タツヤはフーッと息を吐くと。
ここまで自分を支えてきた“相棒”を静かに地面に置き、腰のホルスターからリボルバーを引き抜いた。
「……ナツキみたいには出来なくても!」
叫びと共に、タツヤは駆け出す。
真下から突き上げる尾のドリル攻撃。
その刹那、タツヤは地面を蹴って跳躍し、命を刈り取る軌道をギリギリでかわす。
着地と同時、銃の引き金を引く。
ズドォン!
衝撃音が響き渡ると、ランバートの頭部に肉が削れるような傷が刻まれる。
一発、また一発。
五発目を撃ち終えたとき、ランバートの動きが鈍る。
残弾…一発。
タツヤは呟く。
「……終わりだ」
ズガァン!
最後の一発。マグナム弾の砲声が、戦場を貫いた。
弾丸はランバートの頭部中央を正確に貫通する。
歪な顔面からは無数の肉片吹き飛び、ランバートの巨体が崩れ落ちる。
耳が痛くなるほどの沈黙。
轟音も、咆哮も、振動も、何もかもが途切れた。
タツヤは膝をつき、肩で息をしながら地面に手をついた。
背後から聞こえる、ナツキのかすれた声。
「…やるじゃん」
タツヤは、小さく笑った。




