初陣③
「ぐえっ……!? いってぇ……ダンプカーにでも跳ね飛ばされたみてぇだ……」
ナツキの身体が崩れ落ちる。瓦礫が身体に突き刺さり、口からゴボッと鮮血が吹き出した。
呼吸が浅く、胸が上下するたびに激痛が全身を貫く。
意識は、ある。だがそれは“地獄”だ。
意識が飛ばないからこそ、痛みも恐怖もすべてが残る。
スコープ越しにその姿を見ていたタツヤが、顔を歪める。
「……っ!」
ライフルを下ろし立ち上がると、ナツキの元へと駆け出して行く。
「ダメ!! 今行ったらタツヤも……!」
ユリの悲鳴混じりの声がヘッドセットから飛び込む。だが…それでも足は止まらない。
その無謀を、血にまみれたナツキが叫ぶ。
「バカヤロォがぁ!!スナイパーが敵に見つかっちゃ終わりだろーが!!」
怒鳴り声の中には、仲間を思う痛切な叫びがあった。
「テメェはユリを連れて撤退しろ!!ここで全滅したら意味がねぇんだよッ!!」
「タツヤ、お願い……!冷静になって!」
ユリの声が、繰り返し繰り返し耳に突き刺さる。
背後では、彼女のドローンがピタリと付き、警告灯を点滅させている。
焦りと怒りに支配されていたタツヤの表情が、ゆっくりと変わっていく。
「…そうだ。僕まで取り乱したら、全員が終わる」
タツヤは立ち止まり、自分の頬を力いっぱい叩く。
頬に走る痛みが、感情の濁りを振り払った。
「…ユリ、増援要請を。できるだけ急ぎで」
拳を握り、ライフルを再び手に取る。
「奴は…僕が止める」
砂塵の舞う瓦礫の大地を、タツヤはゆっくりと歩く。
一歩ずつ、覚悟を積み重ねながら。
スコープを覗き込み、尾の動きを見切る。
視界の中に映るむき出しの“中枢”へと狙いを定め、引き金を引く。
弾丸は風を裂き、ランバートの顔面を抉る。確実に敵の姿勢を崩していく。
しかし、敵も止まらない。
ランバートはナツキを踏みつぶすべく、巨大な脚を振り上げた。その瞬間。
「……させるかッ!!」
二発目の狙撃。
タツヤの弾丸が、関節の軸へ正確に突き刺さる。
ズガァンッ!!
異音と共に、関節が揺れる。
ランバートの脚が硬直し、振り下ろしの動きが止まる。
紙一重で、ナツキの命が繋がれた




