初陣②
逃げるべきか、戦うべきか
そんな選択がナツキの脳内で刹那に駆け巡る。
「えぇい、しゃらくせぇ!!」
ナツキは迷いを捨てた。ホルスターからハンドガンを抜き放ち、連射。
「……効かねぇッ! この美肌モンスターが!!」
弾丸は甲殻に弾かれ、表面を滑っていく。
まるで銃撃すら“無意味”と言わんばかりだ。
それでもナツキは前進を止めなかった。
無謀なだけではない。その目には敵の構造を“読む”鋭さが宿っていた。
後方からタツヤが援護狙撃を展開。
だがスコープ越しに見えたのは、弾丸が着弾寸前に軌道を逸らす様子。
「……流石にマズイな」
装甲の厚さと硬度、そして何らかの要因で弾丸が軌道を逸らす…常識外れの防御性能だった。
砂煙の中、ユリの操るリリィが高速で接近。
揺れる視界を必死に制御し、ランバートの身体をスキャンしていく。
「……見つけた! 装甲に隙間がある!」
ユリの声が跳ねる。
「首! 関節のとこに可動軸がある! 外殻が薄い、というか…剥き出しになってる!」
「そこを剥ぎ取ればタツヤの狙撃が通るだろ!」
ナツキは叫ぶと同時に、瓦礫を蹴り飛ばして突撃。
その背をなびかせる砂煙の中、抜き放たれた血刀が赤く光る。
「…危ない!!」
タツヤとユリの声も届かぬほど、突貫は速かった。
ランバートの巨大なハサミが振り下ろされるが、ナツキはそれを紙一重で躱す。
「うおおおおおお!!」
その勢いのまま、刀身を首関節へと突き立てる。
ガリッ、と金属を裂く音。
血刀が甲殻を捻じ開け、内側の“肉”を暴く。
露わになったのは、まるで人間の顔を歪めたような、“生きた中枢”だった。
「コイツは代金代わりにくれてやるぜ……!」
血刀を逆手で鞘に納め、反動の流れで右手のハンドガンを抜き、迷いなく引き金を引く。
乾いた銃声が数発。
弾丸は、今度こそランバートの中枢に到達した。
「釣りはいらねぇぜ!」
叫ぶナツキの表情には、確かな勝利の色が宿る…が、
「――ッ!?」
突如として横合いから飛来した前脚…巨大なハサミがナツキを横薙ぎに吹き飛ばす。
ドゴォッ!!!
鈍い衝撃音とともに、彼の身体は宙を舞う。
空中で二度…三度と回転し、背から叩きつけられたナツキは、瓦礫の山へと衝突し、動きを止めた。




