過去を乗り越えて③
ストーカーが倒れた瞬間、モニタールームの空気が変わった。
映像越しに見守っていたマントマンは、手を組みながら静かに微笑む。
「……これで、彼らもようやく“兵器”になった」
無機質な響きだが、その目は確かに、誇りと信頼を宿していた。
その言葉の裏に、“人間”としての彼らをどう捉えているのか、誰にも分からない。
隣でデータモニターを覗き込んでいたワタナベが歓声を上げる。
「素晴らしい!心拍、脳波、反応速度……どの数値を取っても想定以上だ!これだけのデータがあれば、新たな武器開発も進む!いや、革命が起こせる!!」
仮想空間の光が消え、現実世界に引き戻される。
ナツキは軽く肩で息をしながらも、余裕の笑みを浮かべていた。かつてはシミュレーションのたびに嘔吐し、まともに立っているのがやっとだった男が、肩で息をしながらも堂々と拳を握って立っている。
「……やるじゃん、俺ら」
その言葉に、タツヤがにやりと笑って拳を上げる。
「ナイスキル!」
拳と拳がぶつかる音が、ささやかな勝利の証となる。
ふと、横を見るとユリがどこかモジモジしていた。戦いの中では凛としていた彼女だが、こういう瞬間は少しだけ不器用らしい。
それを見てナツキがニヤリと笑い、タツヤの肩を肘でつつく。視線で「行けよ」と促す。
タツヤは小さく頷くと、ユリに近づいて手を差し出した。
「ナイスアシスト!」
ユリは一瞬驚いたような顔をしたが、すぐに微笑み、ぱちんとハイタッチ。
3人は、“チーム”として一つになった。
その時、シューッ……という静かな音とともにドアが開く。
マントマン達は3人に向かってゆっくりと歩み出る。
「さーて……」
マントマンの声音には、どこか軽快さすらあった。
「それじゃあ、明日から実戦ね。討伐任務に出てもらうよ」
楽しげな口調だが、3人の背筋はぴんと伸びる。
「ま、相手は“ストーカー”だし。さっきのアレと大差ないでしょ?」
どこか試すような笑み。だが、彼の言葉に含まれる信頼と期待は明白だった。
新たな任務の幕が上がる。
訓練ではない、“世界”との再戦が始まるのだ。




