過去を乗り越えて②
張り詰めた静寂を、雷鳴のような銃声が破った。
タツヤのライフルから放たれた一発が、ストーカーの脚部を正確に貫き、巨体の動きを一瞬止める。
それが戦闘の号砲だった。
「行くぞッ!」
ナツキが地を蹴る。駆け出しながらホルスターからハンドガンを抜き放ち、連射。その弾丸はまるで吸い込まれるかのように頭部に集中する。
攻撃を受けたストーカーの注意が、完全にナツキに向いた…その瞬間だった。
上空に展開されたドローン"リリィ"が、小さな機械音を立てて旋回。
ユリの視線に応じて照準が連動し、熱感知撹乱用のチャフを正確に散布していく。
「目はない…熱で追ってくる! チャフで撹乱すれば…!」
落ち着いた声が通信機を通して響く。
ユリの冷静な判断と事前の座学が実を結ぶ。
撹乱され、ストーカーの反応が鈍ったその刹那、ユリのマシンガンが火を吹く。まさに援護に徹した動き。
タツヤは深く一息を吸い、過去の記憶を押し込めるように息を吐く。
(動け…お前はもう、あの時の僕じゃない!)
スコープ越しにストーカーを見据えながら思い出すのは、かつての先輩兵士が訓練中、自分に向けて放った「動け」と言う言葉。
その通りに、射線を変えつつポジションを移動。敵の行動パターンに合わせ、狙撃地点を柔軟に調整していく。
ボルトを引き、薬室に弾を送り込む。
弾き飛ばされた空の薬莢が地面に落ちると、キンッと小気味の良い音が響き渡る。
「次の一発は…決定打だ」
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ナツキのハンドガンがスライドを引いたまま止まる。弾切れの合図だ。
「チッ、もうかよ!」
だが、動きは淀みない。銃を振り、内蔵されていた折りたたみナイフを展開すると同時に空のマガジンを銃から放り出す。
そして腰のポーチから新しいマガジンを引き抜いて装填。
"始めからこの銃は身体の一部だった"かのような無駄のない動きだった。
「やはり天才か」
モニター越しのマントマンが笑みを浮かべる。
「ここまで近付けばなぁ!!」
ナツキが跳躍。地面を蹴った瞬間、筋肉が爆発するように躍動する。
空中でナイフを展開した銃を構え、目が獲物を捉えるその刹那、ストーカーの鎌状の触手が閃く。
「撃てる……今なら!」
タツヤの狙撃が、その瞬間を切り裂く。触手が吹き飛び、ナツキの軌道は守られた。
ナツキはそのまま、落下の勢いに乗せてナイフを頭部に突き刺し、ゼロ距離での乱射。悲鳴のような咆哮をあげ、ストーカーは身体をくねらせて暴れる。ナツキの身体が空中に投げ出される…が、ナツキの顔には笑みが浮かんでいた。
「待ってたぜ、この時をよォ!!」
空中で血刀を抜く。ブラッドグローブを経由して血液が刃へと注ぎ込まれ、刀身が赤く輝く。
一閃…ストーカーの首が切り飛ばされる。
怪物は地響きとともに崩れ落ちる。
砕けた仮想の舗装と、ランバートの血液によって青黒く染まった空間。
その中で、3人は黙って立ち尽くしていた。
…あの時のようには逃げなかった。
彼らは今、自分の力で恐怖にケリをつけたのだ。




