過去を乗り越えて①
「さて…武器も揃ったことだし、“本当の試練”を始めようか」
モニター越しのマントマンが、どこか試すような目を向け、手元の端末を操作する。
次の瞬間、ホロルームに耳鳴りのような重低音が響く。白い床がゆっくりと崩れ落ち、炎と瓦礫の幻影が立ちのぼる。
…そこに映し出されたのは、かつて彼ら3人が地獄を見た旧時代…2012年の"あの日の街"だった。
炎を上げる建物、響き渡る無数の悲鳴が彼らの神経を逆撫でしてくる。
街の中央、あの時出会った四足歩行のランバート…"ストーカー"が市民を蹂躙していた。
体高は約3メートル。関節が逆に曲がったような異様な脚と、背中から突き出した大鎌のような突起が不気味にきらめく。外骨格は硬質で、刃や銃弾をはじく光沢がある。
タツヤは恐怖に震え、しゃがみ込みながらもブルブルと震える手でライフルを構える。
最新式電子スコープ"ホークアイ"が敵の動きを精密に捉える。
「…逃げ無いぞ…もう、絶対に…」
スコープ越しのストーカーがこちらに向けて首を傾ける。ゆっくりと…あの時と同じように。
ユリは腰のホルスターから小型のヘッドセットを取り出し、耳に装着する。
ピッという電子音とともに、ヘッドセットのアームが自動展開され、片目を覆う半透明のバイザーがスライドイン。
バイザーには、戦況マップとドローンの視点映像がリアルタイムで投影される。ユリが視線を送ると、バイザー内のカーソルが滑らかに追従し、まるで視線そのものが指示になるかのようにドローンと連動する。
空中には、ユリ専用ドローン"リリィ"が静かに起動していた。
機体の脇腹には、医療キットや撹乱弾、EMPフラッシュなどの小型支援装備が格納されており、必要に応じて射出が可能。
「……守ってみせる」
ユリは静かに、けれど決然とそう呟き、ゴーグル越しに敵の位置を睨みつけた。
そしてナツキは、まるで獣のように軽やかな足取りで一歩前へ出る。
「……あの時はぜってー勝てないと思ってたけど、なんか…今見ると大したことなさそうだな」
首をボキボキと鳴らし、フーッとゆっくり息を吐く。瞳の奥に浮かぶのは、恐怖ではなく、闘志。
「遊んでやんよ、バケモン!!」
次の瞬間、まっすぐ標的に向けて駆け出した。
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「…始まりましたね」
ワタナベは画面に映る3人を見つめながら、静かに呟く。
「過去のトラウマ…それを超える瞬間を、俺は信じたいんだ」
マントマンは腕を組んだまま目を細める。
「タツヤたちなら…“俺達”とは違う彼らなら…」
彼はそこで言葉を切り、モニターに目を戻した。




