"血"の武器①
金属の軋む音が響く中、エレベーターの扉が開く。
そこに待っていたのは、白衣を羽織った中年の技術者だった。
「初めまして。私はR.W社兵器開発部門、ワタナベと申します。
……まぁ、この界隈では“血の道具屋”ってあだ名で呼ばれてることもありますがね」
眼鏡の奥に宿る目は鋭く、研究者というよりは技術に取り憑かれた職人のそれに近い。
背後のラックには様々な兵器パーツと、見たこともない装置が並んでいた。
「さて…貴方たちの戦闘データはすでに見させてもらいました。
その結果をもとに、今日は専用装備をお渡ししようと思いまして…わざわざ地下まで来てもらったわけです」
ワタナベが手を叩くと、無骨なロッカーの扉が開く。
「まずは基本装備。これは"ブラッドグローブ"。今じゃ民間から軍用まで、血を使う機械にはだいたいこれが使われてます」
取り出されたのは、黒革を思わせる素材で作られた手袋。手の甲には小さな透明カプセルが組み込まれている。
「ここから血液が滲むように制御されててね。リミッターで一日に流せる量も調整されるから、過剰出血は起こらない……はずです。たぶん」
ワタナベは苦笑いしながら、眼鏡をクイッと上げた。
続いて手渡されたのは、柄の部分に細いチューブが繋がった特殊なナイフ。
「これはそのグローブを通じて、直接刃に血を送り込む仕組みです。旧世代の血を直接ランバートにブチ込める……ふっふふ……失礼、興奮しました」
咳払い一つ。研究者モードを無理やり切り替える。
「あなた方の戦い方や"血の活用"を鑑みて、この形が最適かと判断しました」
「さて…マントマン氏から"特殊弾"の説明はもう聞いてると思います。なので弾ではなく、銃本体の方を重点的に見てもらいたい」
ワタナベが傍らのアタッシュケースを開くと、中にはサイズも形もバラバラな数丁の銃が整然と収められていた。
「こちらが"B-Bullet"式銃。
構造的には旧世代の銃器技術をベースにしてますが、搭載される弾丸…血晶が炸裂する特殊弾"B-Bullet"が我々の最新技術です」
ナツキが腕を組んで唸る。
「……けどさ、直接血液ぶっ放した方が効くんじゃねぇの? なんか遠回りに感じるっつーか」
その言葉に、ワタナベは苦笑しながら言った。
「それについては過去に実証済みです。
初期には“血を直接銃に送り込み、弾として発射する”銃が開発されていました。
マガジン不要。静脈に直接注射針を刺して銃に血液を送り込み、トリガーを引けば吸い上げられた血が銃身内部で圧縮・凝固され…弾丸として射出される、通称"ブラッドエネルギーガン"が開発されていました」
「……おぉ、それ最強じゃね?」
「いいえ。全然ダメでした」
ワタナベは肩をすくめた。
「消費量の管理が効かない、射程が不安定、連射不能、感染症リスクあり、暴発あり、医療班にボロクソ言われて開発停止。今じゃレプリカが博物館に飾られてるだけです」
「……マジかよ」
「というわけで、今はこういう合理的かつ確実に扱える銃器が主流です」




