生きていく覚悟②
訓練を終えた面々が向かったのは、拠点内の食堂だった。
天井の照明がほんのりとオレンジ色に染まり、夕食の時間を静かに告げる。
並べられたテーブルの上には、湯気を立てる極上の料理がずらりと並んでいた。
ジュウゥ……という音を立てるステーキに、ぷりぷりと赤く艶めくロブスターのグリル。
水滴がきらめく新鮮な野菜サラダと、炊きたての白米まである。
「ようこそ!ユリちゃん、タツヤ、ナツキの歓迎会ってことで、今日はフンパツしたぞ~!!」
腕を組み、誇らしげに笑うのは料理担当のP.J。
白いエプロンには“P”のマーク、頭にはコック帽まで乗っている。
「本来なら旧世代の上級市民しか味わえないレベルの食材だけどな。あっちの冷凍倉庫をゴソゴソしてて、たまたま掘り出したんだよ~ん!」
「これ……全部P.Jさんが……?」
ユリは目を丸くして、ロブスターの爪をじっと見つめる。
「もちろん!ナノバーナーで絶妙な焼き加減にした、俺特製メシよ!食って、生きろ!」
そんなP.Jの熱意などどこ吹く風と、ナツキは既にステーキ三枚目に突入していた。
「ンッッま……ッ!肉ぅ!!ナニコレッ、やばッ!!」
皿に顔を突っ込む勢いでガツガツと食らい、白米を口いっぱいにかき込むその姿は、もはや獣のようだ。
一方でタツヤは…手に持ったフォークが止まっていた。
「……あんまり……食欲が、ない……です……」
頬に汗を浮かべ、わずかに顔色も悪い。
訓練中の極度の緊張と疲労が、後からドッと押し寄せていた。
「……わかるよ」
隣に座ったユリが、少し心配そうに覗き込む。
「私も、最初の頃、訓練の後はほとんど食べられなかった。……心が、追いつかなくてね…」
ユリは小さな声でぽつりと呟いたあと、視線の先のナツキをちらりと見た。
「……でも、ナツキくんは……やっぱり、ちょっと違う。なんだろう、昔、クラスが一緒だった時も"不良"っていう感じだったし…最初から別の世界の人みたいだった」
その言葉に、タツヤも静かに頷いた。
同じ場所にいたはずなのに、違う存在として目に映る――それが、ナツキだった。
「……」
そんな二人を遠巻きに見ていた先輩の女性兵士が、隣の兵士に肘で小突きながらニヤニヤと笑う。
「おい見ろよ、なんか青春してんぞ」
「おうおう、お前らな~、見てるこっちが甘ったるくなるわ~」




