ダストハイブ前線基地⑤
タツヤの放った一撃がランバートの胸に直撃する。
ランバートは呻き声をあげ、膝をついた。
動きが完全に止まったのを確認した瞬間、訓練空間に柔らかなアナウンスが響く。
「対象撃破確認。仮想戦闘訓練、終了。お疲れ様でした」
緊張が解けた途端、タツヤはその場に膝をついた。
「はぁ……っ」
汗が額から流れ落ちる。腕が、脚が、じんじんと震えている。だが"痛み"は無い。これは“現実の死闘”ではなかったと、今になってようやく思い出す。
「ふぅ……」
ユリは息を荒くしながらも、落ち着いた手つきで額の汗を拭った。呼吸を整え、小さく目を閉じる。
そして
「ぐぅ……オエエェェェェッ!!」
盛大な音を響かせたのは、ナツキだった。膝をつき、先程の合成タンパクピザや甘味料ジュースの混ざった"虹色の何か"を吐き出し、しばらくしてうつ伏せに倒れ込む。
タツヤは呆れた様子で近付き、ナツキの背中をさする。
「おいおい…大丈夫か?」
「でも動けてたね、最後まで」
ユリが呆れ半分、感心半分といった表情で見下ろした。
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その様子を、モニター越しに見守っていたマントマンは、ふむふむと頷いていた。
「いやー、なかなか見ごたえあったよ」
手にした端末をポンと閉じ、軽く顎を撫でながら言う。
「ユリちゃんはね、君たちよりも一足早く“目覚めて”この世界に来たから。やっぱり動きが様になってきたよ。初訓練で震えてた女の子とは思えない。いい反応してる」
モニター越しの彼女の姿は、どこか誇らしげだった。
「タツヤくんは……うん、良くも悪くも“堅実すぎる”かな。銃の知識は十分にあるけど、判断に迷いがあるね。けど――」
口元をニッと緩める。
「センスはある。経験さえ積めば、すぐ化けるタイプだ」
そして、最後の一人へと視線を向ける。
「ナツキくんは……馬鹿だね、完全に。あれじゃ、どっちがバケモノかわかんないよ。あんな突撃、普通はしない」
呆れたように肩をすくめる。が、言葉の中には、ほんの僅かな驚きも混じっていた。
「でもて、近接戦のセンスはピカイチ。…喧嘩慣れしてるんだろうな。判断に迷いが無いし、周りの物をとにかく“使えるもの”として即座に判断してる。こういうのは教えてできるもんじゃない」
やがてマントマンが訓練室に入ってくると、3人はそれぞれの反応で彼を迎えた。
「お疲れ様。いやー、良いもん見せてもらったよ。思ってたより、全然動けるじゃん?」
彼の言葉に、タツヤが汗を拭いながら顔を上げる。
「いや……僕はほとんど何もできませんでした。身体張ってたのは、バ……ナツキとユリです」
「お前今、なんか言おうとしたろ」
ナツキが胃の奥を押さえながら睨む。顔は青ざめているが、ツッコミだけはしっかりしていた。
「気のせいじゃないかな」
タツヤが目を逸らすと、ユリが小さく吹き出した。
マントマンは笑いながら親指を立てた。
「まあまあ、全員合格。あとは“生き残る意志”さえ捨てなけりゃ、なんとかなるよ」




