ダストハイブ前線基地②
格納庫の奥、無機質な白のドームが静かに佇んでいた。
その扉の前に立っていたのは、まだ少年の面影を残した兵士――年の頃は17くらい、ツンツンに立てた髪に、着崩した迷彩服が妙に板についている。
「よっ、ルーキー共。今日からよろしくな。俺はタケシ、“ちょっとだけ”先輩ってやつだ」
そう言ってニヤリと笑うと、白いドームの中を親指で指し示す。
「初めてのシミュレーター訓練だろ?
せいぜいビビりすぎんなよ。……あ、マスクは外しておけよ?」
ナツキが首を傾げる。
「実戦じゃ着ける事もあるって言ってたぜ?」
「まあな。でもシミュレーターじゃ絶対にやめたほうがいい。俺は……あれで吐いたモンがマスクの中に戻ってきてな…。顔中、素晴らしい香りに包まれちまった」
妙に誇らしげな顔で言い切るタケシに、タツヤは引いた。
「言っとくけど俺だけじゃねぇぞ?
初回のシミュレーターでゲロるのは“通過儀礼”だ。
…せいぜい頑張れよ、"ジジババ共"」
最後の一言に、ナツキが「は?」と眉をひそめる。
その理由は、次の瞬間に明らかになった。
兵士としてのID登録端末に、タツヤが指をかざす。瞬時に網膜と指紋がスキャンされ、個人情報が浮かび上がった。
【氏名:天城タツヤ コードネーム:-】
【生年月日:1997年-月-日(公式データベース破損)】
【年齢:115歳】
「……っうおぉぉぉい!?」
タツヤが無言で驚いている横で、ナツキが叫び声をあげ、画面に顔を近づけている。
【氏名:九条ナツキ コードネーム:-】
【生年月日:1997年-月-日(公式データベース破損)】
【年齢:115歳】
「なんだよこれ!?115歳!?俺たち、めちゃくちゃジジババじゃねぇか!!」
今度は後頭部や顔に手を当てて状況を確認しようとしている。
「なぁタツヤ…俺の後頭部とかハゲてない?顔にシワとかできてない?」
タツヤは呆れたように、視線を外す。
「……変わってないよ。残念ながら頭の中身も100年前のままだよ」
横から、ユリがクスクスと笑う。
「やっぱり、初めて見るとビックリするよね?その“年齢表示”」
ユリは自分の持っている兵士登録IDカードを二人に見せる。
【氏名:白石ユリ コードネーム:クレリック】
【生年月日:1997年-月-日(公式データベース破損)】
【年齢:115歳】
「"コードネーム:クレリック”?」
眉をひそめ、声に出すナツキ。
「このコードネームって何?かっけぇじゃん…」
ユリのIDカードを指差して、じっと見つめる。
「ふふ、これは適性検査の結果で与えられるの。たぶん、タツヤもナツキくんも、訓練が終わったら貰えると思うよ」
ナツキの目が輝く。
「マジで?じゃあ俺、“アルティメットデストロイヤー”とか“カオスエンペラードラゴン”みたいなカッケェのがいいな…」
「絶対そんなのないと思う」
とタツヤが即座に突っ込む。
「うるせぇな、夢はでっけぇ方がいいだろ?」
ワイワイと話す3人の後ろから足音が聞こえる。
「兵士登録おめでとう!
これで晴れて君たちは、俺たちと同じ"消耗品"になった訳だ!」
マントマンが後ろで親指を立てる。
ナツキとタツヤが揃って顔をしかめる。マントマンは特に気にした様子もなくニカっと笑った。
「じゃ、これから戦闘訓練するから。
訓練場に集合!」




