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第二八〇段 三月ばかり物忌しにとて(下)
(物忌で退出していたら、定子様のお言葉を宰相の君が書かれた文が来て、早く帰れとおっしゃられたのだが、)
申し上げるべき言葉が浮かんでこないのは、いかがすべきか。
『 雲の上も 暮らしかねける 春の日を 所がらとも ながめけるかな
(雲の上にお住まいである定子様でも、暮らしかねていらっしゃるとは。この春の日を暮らしかねるのは、この地の眺めが悪いらだと思っていましたが、違いました。定子様がいらっしゃらないからでした。)
わたくしには、今夜の内にも、かの少将(物語の登場人物でしょうが、どの物語か不明)になってしまいそうです。』と御返事を申し上げた。
そして、暁に参上すると、
「昨日の返しの、『暮らしかねける』と詠んでいたのは、ひどく憎らしいことです。女房達が皆、ひどく非難しました。」とおっしゃられた。とても情けなく、本当にその通りだと思った。
(『暮らしわずらう』と、『暮らしかねける』では、重さが違いますね。他の女房達が怒るのも、もっともです。)




