445/496
第二八〇段 三月ばかり物忌しにとて(上)
三月ごろ、物忌をするために、ほんのひととき人の家に行った。すると、植えられた木も頼りない中に、柳と言って普通の柳のように優雅ではなくて、葉が広がって憎らしく見える木を、
「柳の木ではないようだ。」と言うと、
「こういう柳もある。」などと言うので、
さかしらの 柳のまゆの ひろごりて 春のおもてを 伏する宿かな
(こざかしく、柳の萌え出でた繭(芽)が広がっていて、女の眉が面を伏せる(恥じて下を向く)ように、春の面を伏せる(面目を失う)宿であることよ。優雅でないこと。)と見えた。
(日ごろ、優雅な庭を見つけている清少納言は、優雅でない庭がお気に召さなかったようです。)




