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第二七八段 雪のいと高く降りたるを(香炉峰の雪)
雪がたいそう高く降り積もっている日に、いつもと違い、御格子を下ろしたままにして、炭櫃に火をおこして女房達が集まって話をしている。
そこに定子様がいらっしゃって、
「少納言、香炉峰の雪はどうであろうか。」とおっしゃった。
日高く眠り足りて猶起くるにもの慵し
小閣に衾を重ねて寒さを怕れず
遺い愛寺の鐘は枕を欹て聴き
香炉峰の雪は簾を撥て看る
匡蘆は便ち是れ名を逃のがるるの地
司馬は仍老いを送るの官為たり
心泰く身寧きは是れ帰する処
故郷 何ぞ独り長安にのみ在らんや (白氏文集)
この詩句を思い浮かべ、私が御簾を高く上げると、定子様は微笑まれた。
その場にいた女房達も、
「皆この漢詩のこと知っていて、歌などにしてまで歌っているが、思いつきもしなかったのだ。やはりこの宮様(定子)に仕える者としてふさわしい人であることよ。」と言い合った。




