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第二七一段 成信中将は(その1)
成信中将は、村上天皇(一条天皇の祖父)の皇子で入道兵部卿宮の御子である。姿かたちがとても美しく、心ばえも趣のある方でいらっしゃる。伊予の守源の兼資の娘が、この方に忘れられ、親と共に伊予に下って行ったと聞いた折には、どんなにあわれな心持であったであろうかと思ったものだ。
暁に旅立たれるということで、その夜に訪ねていらっしゃり、有明の月の中、帰って行かれる中将の直衣姿を想像すると、娘の心持はさぞや。
その中将は、いつもここに座って、話をし、女房の身の上などを、よくないものは『わろし』などと、はっきりおっしゃっていらしたのだが。




