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第二五六段 関白殿、二月十日のほどに(その25)
道隆様が、定子様のところに入って来られて周りを見渡されると、そこにいる女房達は皆、宮中の女房装束である裳と唐衣を、春宮妃である妹君の御匣殿まで、着ていらっしゃる。道隆様の北の方は、裳の上に小袿を着ていらっしゃる。
「絵にかいたようなご様子ですね。『今お答えします。本日はお招きいただき、ありがとうございます。』とおっしゃるのですよ。三の君、四の君、姉君の宮様(定子)の裳を脱がせて差し上げなさい。この中の主は、貴方様ですよ。こうして、御桟敷の前に陣屋をおいていらっしゃるのは、なんと格別のことであろうか。」とおっしゃって泣かれる。女房達も、本当に、と涙ぐむ。
私が、赤色の上着に、桜襲の五重の唐衣をきているのをご覧になって、
「お布施の赤色の法服を僧たちに差し上げたのだが、急にもう一つ必要だったから、これをお借りすればよかった。ところで、その衣装は、法服を切って縮めた物でしょうか。」とおっしゃるので、皆が笑う。
(もちろん、いつもの関白道隆の冗談です。)
大納言伊周様が、少し後ろにいらっしゃったのだが、
「それは、『清』僧都の法衣でしょう。」とおっしゃる。
一言として『おかし』と思わずにいられることはない。




