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第二五六段 関白殿、二月十日のほどに(その23)

 定子様は、三尺(約90㎝)の御几帳一双を互い違いに立させこちら側と隔て、その後ろに畳一枚を長い方を端にして長押(なげし)の上に敷かせておられる。


 そこには、道隆様の叔父の右兵衛督(うひょうえのかみ)藤原忠君(ただきみ)(右大臣の子)の娘である中納言の君、左大臣の子藤原顕忠の娘である宰相の君のお二人が座っていらっしゃる。

(つまり、右大臣の孫と左大臣の孫が女房の筆頭として並んでいる。)


 定子様は、辺りを見渡して、

「宰相の君は、あちらに座って殿上人の者たちが居るところに行って見ていなさい。」とおっしゃるので、私を座らせようとお思いなのであろうと察して、

「ここで三人で見た方が、よく見えるでございましょう。」と申し上げると、

「それでは、そうなさい。」とおっしゃって、長押の上に召しあげさせられる。


 すると、長押の下に座っている女房達が、

舎人(うどねり)(下級の官人)のくせに殿上(てんじょう)(殿上に昇ることを許された身分の高い貴族)を許されたのね。」と笑う。

「自分こそ、ここに座るべきだと思っているのでしょう」という者もいる。

「御前に侍るべきほどの者かしら。」など言う者もいる。


 そういわれながらも、長押の上に入って座っているのは、たいそう晴れがましい。


 このようなことを自分から言うのは、『吹き語り』(自慢話)でもあり、また、定子様のためにも、軽々しく

「こんな程度の者までそのように重用されたのか。」などと物をわきまえ世間のことを非難する人などは、思うであろう。


 不都合で、恐れ多いことながら、実際にそうであったのだから、どうして書かずにいることができようか。本当に、身の程に過ぎたこともあったのだ。

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