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第二五六段 関白殿、二月十日のほどに(その15)

「西の対の唐廂(からびさし)に車を寄せて、そこから乗るはずだ。」というので、そこに居た女房は皆、渡殿に行く。まだ初々しい様子の新参の女房達はたいそう遠慮がちな様子である。


 西の対には、関白で定子様の父上である道隆様がお住まいになっていらっしゃるので、定子様もそこに居られる。まず女房を車に乗せるのをご覧になるということで、御簾の内側に、定子様、妹君の淑景舎(しげいしゃ)様、三の君、四の君、母君の高階貴子様、さらに年下の弟妹お三方が立ち並んでいらっしゃった。


 車の左右には、兄君で大納言である伊周様、弟君で三位の中将である隆家様が二人して、簾を打ち上げ、下簾を引き上げて車に乗せて行かれる。皆が群がっていれば、隠れようがあるのだが、四人ずつだれそれと書き記してあるものに従って、


「だれ、それ。」と名前を呼んで車に乗せられる。車まで歩く心地は、はなはだしくまことに情けなく、人目が多いとはいえ、世によくあるほどだ。(文句を言うわけにもいかない。)


(さすが定子様、内裏から二条の宮に移るときのような混乱が起きないように、きっちり手配をされたようです。)

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