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第二五六段 関白殿、二月十日のほどに(その10)

 さて、八日、九日のころに、私が里に下がるのを、

「もう少し、一切経供養に近くなってからにすればよいのに。」などおっしゃるが、退出する。


 非常にいつもより日の輝る昼間に、

「『春の心開けたりや』。どう答えますか。」と問って来られたので、


 九月西風興(くがつ せいふう おこり)

 月冷霜華凝(つき ひややかにして そうか こる)

 思君秋夜長(きみを おもえば しゅうや ながく)

 一夜魂九升(ひとよに たましい くたび のぼる)

 二月東風来(にがつ とうふう きたたり)

 草拆花心開(くさ さきて かな こころ ひらく)

 ()()()()()(きみを おもえば しゅんじつ おそく)

 ()()()()()(いちじつに はらわた くたび めぐる) (白氏文集)


「秋はまだ、ずいぶん待たなくてはなりませんが、私は夜に九回も魂がのぼる気持ちがしております。」などと御返り事を申し上げた。


(定子は、こういう問答のできる女房が側にいなくなるのが、残念だったのでしょうね。)

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