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第二五六段 関白殿、二月十日のほどに(その7)

 掃部司(かもんづかさ)の者が参上して御格子を上げ、主殿寮(とのもり)の女官が清掃をすっかり終えてから、定子様がお起きになり、桜がなくなっているのをご覧になって、


「まあ、驚いた。かの花は、どこに行ったのでしょう。」とおっしゃる。


「暁に、清少納言が『花を盗む人は誰であるか』と言っていたのは、きっと枝などを少し折るのだろうと思って聞いていたのに。誰がこのようなことをしたのか。見たのか。」とおっしゃる。


「そうではございません。まだ暗くてよく見ませんでしたが、白っぽいものがございましたので、花を折るのであろうかと心配して申しました。」と言う。


「そうであっても、木ごとすっかり取って行くとは。殿(父君)が隠させられたのであろう。」と笑われる。

「まさかそのようなことはございませんでしょう。春風がいたしましたことでしょう。」とお答えすると、

「『春風がいたしました』と言いたくて、隠しているのでしょう。盗みではなくて、『ふりにこそふる』(雨が()()()()()|て、()びてしまった)ということでしょう。」とおっしゃる。


 このように機知にとんだ言い方をされるのは、珍しいことではないのだが、たいそう趣深く素晴らしいことであった。


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