表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
395/425

第二五六段 関白殿、二月十日のほどに(その6)

 御前にある造花の桜は、色は増すことなく日に当たってしぼんで悪くなってしまっていて、みすぼらしい。雨が降った夜の早朝、たいそうみすぼらしくなった。


 とても早く起きて、

「『泣きて別れん顔』に、期待外れでがっかりすることだ。」


 桜花 露に濡れたる 顔見れば 泣きて別れし 人ぞ恋しき(拾遺集)


と言っているのを、お聞きになったようだ。


「雨の降る気配がしたね。桜はどうなっていますか。」と言って定子様が目を覚まされたときに、道隆様のいらっしゃる方から侍たちや下衆(げす)どもが来て、大勢が桜の花の下に寄ってきて、木をひき倒して、


「『こっそり行って、暗いうちに取り払え』と仰せつけられた。あたりが明るくなってきてしまった。困ったことだ。はやく、はやく。」と、木を倒して取り払っている。その様がおもしろく、


「『言わばは言わん』と、兼澄のことを思って言っているのであろうか。」


 山守は 言わばは言わなん 高砂の尾上の桜 折りてかざさん(後撰集)


とでも、相手が風流な者なら言いたいものだが、この侍には分からないであろう。


「花を盗む人は誰であるか。悪いことであろう。全く物を知らないことだ。」と言うと、笑って、やめるどころかいっそう逃げ出して木を持って行ってしまう。


 悪くなった桜を捨て置かず取り払われる道隆様の御心は、趣があって素晴らしい。そのままでは、枝に濡れた花がまとわりついて、どんなにみすぼらしかったことであろうと思って、部屋に入った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ