第二五六段 関白殿、二月十日のほどに(その2)
道隆様が、定子様のもとに渡って来られた。
青鈍色の固紋の御指貫に、桜色の直衣の下に、紅色の御衣を三つほど重ねて着けていらっしゃる。定子様をはじめとして、紅梅の濃い織物、薄い織物、固紋、綾紋などを、あるかぎり着ている人々が居並ぶ。そのころは、この八丈という衣は特になかった。その様は、光が満ちていて、唐衣は、萌黄、柳、紅梅などもあった。
道隆様は、定子様の前に座られて、お話をしていらっしゃる。そのお答えの申し分のない素晴らしさを、里に居る人たちに少しでも見せたいものだと思う。
女房達をご覧になって、道隆様が、
「女房がたは、定子様を何と思い見舞っているだろう。このように、美しい女房がたを並べてご覧になっていらっしゃるとは、たいそううらやましいことです。ご身分が申し分ないことと言ったら、何も言うことがない。良家の御娘でいらっしゃる。ああ見事なものだ。
それにしても、貴方たちは、この宮の御心をどのようだと思って集まっていらっしゃるのであろうか。この宮さまは、ことのほか、ものを惜しみ遊ばされるのですよ。この私は、宮様がお生まれになってからこのかた、さまざまにお世話申し上げて来たのに、いまだにお下がりの衣一つ下さらないのです。これは大事なことですから、こそこそ言ったりしないで、堂々と目の前で言わせていただきますよ。」
などとおっしゃるのがおもしろくて、皆笑っている。
「まことに、わたくしめを間抜けだと思ってこのように笑われる。はづかしいことだ。」などとおっしゃる。
(道隆は、冗談好きのイケオジだったようです。)




