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第二二二段 河は
河は、飛鳥川が趣深い。渕瀬が定まっていないで頼りないことであろうと、たいそうしみじみと趣深く感じる。
世の中は 何か常なる 飛鳥川 昨日の淵ぞ 今日は瀬になる(古今集)
みみと川は、朱雀門の前で、また何を小賢しくも聞き取ったのであろうかと、おもしろい。
ももしきの 大宮近き 耳敏川 流れて君を 聞きわたるかな(古今六帖)
音無河は、思いがけない名であることがおもしろいのであろう。
君恋うと 人知らねばや 紀の国の 音無川の 音だにもせぬ(古今六帖)
大井川、泉川、水無瀬河、なのりそ川も、おもしろい。名取川も、どのような名を取っているのか聞きたいものだ。
細谷川、七瀬川、玉ほし河もおもしろい。
天の川は、この下界にもあるそうだ。
「狩り暮らし たなばたつめに 宿からん 天の河原に 我は来にけり(古今集)」と在原業平が詠んだというのも、ましておもしろい。




