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第二二一段 めずらしと言うべきことにはあらねど
いまさら珍しいというべきことではないが、文と言うのは実に素晴らしいものである。
はるか遠くに居る人が、まったく心配で、どのように過ごしているのかと思うのだが、文を見ると、今差し向っているように感じられるのはとても素晴らしいことである。
自分が思っていることを文に書きつけて送れば、まだあちらに行きついてはいないのだけど、満足する気持ちがする。
文というものがなかったのならば、どんなに心も晴れず、心がふさがって真っ暗になるような気持ちになることであろうか。
世のいろいろなことを思い思って、その人のところにこまごまと思いを書き置いていると、不安に思っていることも慰められる気持ちがする。まして、返事を見れば、命が延びるに違いない。これは、本当にもっともなことである。




