6話
この物語には妖怪に対する自己解釈やオリジナル設定が含まれています。
オリジナルの妖怪が登場することもあります。
素人がただ思い付きで書いている物語なので最後まで温かい目で読んでいただければと思います。
志乃の魂を探すと言っても手掛かりはないので樹霧之介は前に約束をしていた学校の休日に柚子と共に真生に会いに行く事になった。
柚子「まさか真生ちゃんが志乃の子孫だったなんてね。」
樹霧之介「12号が反応した理由も分かった気がします。」
柚子「だけど見つけれない時もあったのよね。」
樹霧之介「そうなんですよね。」
疑問は残りつつも話しながら歩いて行くと真生の家へ着いたが人の気配はない。
柚子「休日だものね。」
今は太陽が空高く登った昼過ぎ、子供が遊びに出かけていても不思議ではない。
両親もいないため、遠出している可能性もある。
樹霧之介「夕方に出直しますか?」
柚子「ねえ、どこ行ったか気にならない?」
樹霧之介「え!?だけど、どこへ行ったかなんて分かりませんよ。」
柚子「情報収集なら任せなさい。」
そう言って柚子が口笛を吹くと周りから小鳥が集まって来てその小鳥たちに話しかける。
柚子「ここに住んでる人たちがどこに行ったか分かる?」
柚子はしばらく話した後、小鳥が1羽だけ残ってあとは解散して行った。
柚子「白い車に乗ってあっちの方向行ったって。その車はこの子が教えてくれるわ。」
樹霧之介「こんな事して良いんでしょうか?」
柚子「だけど今の子がどんな場所に親子で行くか気にならない?それとも樹霧之介は私とお出かけ嫌?」
樹霧之介「嫌なわけないじゃないですか。そんな言い方ずるいです。」
柚子「なら行きましょう。」
そう言って柚子はるんるんと歩き出そうとする。
樹霧之介「真生ちゃんたち、車で行ったんですよね?歩きで追いつけますか?」
柚子「、、まあ、方向と大体の距離は分かるから近くまで妖ノ郷を通って行きましょう。」
妖ノ郷は色んな所に出入り口があるので2人は小鳥を連れて近くまで行き、そこから歩いて行くとショッピングモールの駐車場で小鳥が1台の車に止まる。
柚子はその小鳥にお礼をあげると小鳥はどこかへ飛んで行った。
柚子「中に入りましょうか。」
樹霧之介「人、多いですよね。大丈夫でしょうか?」
柚子「、、なら姿現しても良いんじゃない。」
樹霧之介「え、僕は平気ですが母さんは妖力少ないですよね。」
柚子「こんな事もあろうかとこれ持って来ているの。」
そう言って柚子は懐から布製の腕輪を取り出す。
樹霧之介「それはなんですか?」
柚子「妖視帯よ。ずっと姿を現すのは疲れるでしょ。人間のお店使っている時にぼろが出ないように志乃に作ってもらったの。」
樹霧之介「だけど昔は見える人多かったはずですよね?」
柚子「それでも見えない人はいたからね。黒根のも持って来たからあなたが使いなさい。」
樹霧之介「あ、はい。」
樹霧之介は柚子から妖視帯を受け取って腕に付けてみる。
柚子「妖怪ごとに微調整が必要って言っていたけど、大丈夫そうね。やっぱり親子だからかしら。」
樹霧之介「え。」
柚子「さあ、行きましょう。」
2人が中に入ると休日ということもあり多くの人で賑わっていた。
樹霧之介「この中から探さないといけないんですよね。」
柚子「あ、見て樹霧之介。あそこに鉢植え売ってるわ。」
樹霧之介「え?」
柚子は早足で観葉植物の置いてあるお店に行き、それを樹霧之介が追いかける。
樹霧之介「真生ちゃん探さなくていいんですか?」
柚子「夕方には家に帰るでしょ。最悪その時に会えば良いのよ。」
樹霧之介「なら、何でここまで来たんですか?」
柚子「樹霧之介と遠出したくても志乃の事ばかりで断られ続けたからね。こんな理由でもつけなきゃ一緒に来れないんだから。」
樹霧之介「それは、、」
柚子「ついでに真生ちゃん見つけれたらラッキーって感じでしょ。」
樹霧之介「そっちがついでですか。」
柚子「ねえ、歩いて喉乾いてない?何か飲まない?」
樹霧之介「人間のお金なんて無いですよ。」
柚子「大丈夫。実は真琴に聞いてバイトしてたんだから。」
樹霧之介「え!?何してたんですか?」
柚子「スマホっていうの?あれで文字打って占いしてたのよ。」
樹霧之介「何でそんな事してたんですか?」
柚子「私の親である木霊は神木だからね、人の悩みを聞いてた事もあるのよ。私は妖怪たちの悩みしか聞いてなかったけど、思い切ってやってみたら結構人気でちゃって、1回の時間と人数決めないと途切れなくて困るくらいだったのよ。」
樹霧之介「何も知りませんでした。」
柚子「驚かせたくて秘密にしてたからね。真琴にも口止めしたし。」
樹霧之介「驚きましたよ。」
柚子「スマホの契約代くらいしか使ってないから結構溜まったし、遠慮しないで今日は楽しみましょう。」
樹霧之介「だけど、やりたい事なんてないですよ。」
柚子「なら付き合って。篁音に話聞いてから樹霧之介と来てみたかったんだから。」
樹霧之介「いつの間に篁音さんと仲良くなっていたんですか?」
篁音とは野々香の母親であり、烏天狗の山の長の妻で烏天狗たちのまとめ役をしているものである。
柚子「連絡先交換したの。メッセージアプリって気軽に連絡できて便利よね。たまに野々香と一緒にこういう所に来てるって聞いて私も樹霧之介と来たかったの。」
樹霧之介「分かりましたから、2回も言わなくてもいいですよ。」
柚子「じゃあ行きましょ。クレーンゲームっていうのが面白いらしいわ。」
樹霧之介「本来の目的って何でしたっけ、、」
樹霧之介は柚子に付き合ってゲームコーナーへ行ったり、ペットショップに寄り道したりと楽しんでいた。
柚子が気になると言った映画を見て映画館から出ると見知った顔を見つける。
柚子「あら篁音、あなたも来ていたの?」
篁音「柚子こそ、念願の息子とのお出かけ実現したの?」
柚子「そうなの。」
篁音「いいわね。野々香は最近はあまり帰って来ないのよ。連絡はあるから元気なのは分かるんだけどね。」
柚子「女優さんだっけ?真琴にCM見せてもらったわよ。頑張っているじゃない。」
篁音「え!?私は聞いてない。」
柚子「連絡は来てるのよね?」
篁音「昨日も事務所や劇団の愚痴を送ってきたわよ。だけどCMの事なんて一言も、、ねえ、そのCM今見れる?」
柚子「動画投稿サイトで見れるわ。確か会社の名前が、、」
奥様トークについて行けない樹霧之介は近くの椅子に座って待っていた。
そんな時ピンポンパンポンと放送の合図がされる。
放送「迷子のお知らせです。白いパーカーを着たお姉さんと、黄色いTシャツの男の子。お連れさまが1階インフォメーションでお待ちです。お近くの係員までお知らせください。」
樹霧之介「迷子ですか、人多いですもんね。」
そんな独り言を言っていると目の前の小道具店が目に入る。
入り口で小さな僧侶姿の人影が廊下を覗いては戻るを繰り返しているのだ。
樹霧之介はその店に入り、辺りを見渡すと1つの小さめのすりこぎにさっきの小さい妖怪がくっついていた。
樹霧之介「それが君の本体ですか?」
そう声をかけるとその妖怪は驚いて小物の影に隠れてしまう。
樹霧之介「待ってください。君は木心坊ですよね?さっきからこちらの方気にしてましたがどうしたんですか?」
木心坊「君は痛くしない?ゴリゴリってやらない?」
樹霧之介「しませんよ。僕も同じなんです、ほら。」
樹霧之介は手の先だけ木の姿に戻して木心坊に見せると同族と分かって安心したのか陰から出て来る。
樹霧之介「君は何故廊下を確認していたんですか?」
木心坊「変なのがいたんだ。」
樹霧之介「変ってどんなのですか?」
木心坊「廊下に急に現れたんだ。なんか毛の生えた長い何かが、怖かったけどこっち来たら嫌だから観察してたら急に動いたんだ。その時は分からなかったが縮んでいたんだろうな、しばらくしたら頭が見えたんだ。猫だった。前足もあった。それを追いかける子供もいた。」
木心坊は小さい体全体を使って樹霧之介に説明する。
樹霧之介「それ、さっき放送で言っていた子供でしょうか?」
木心坊「黄色の服だっけ?その子供も着ていたな。」
樹霧之介「それ、どこ行ったか分かりますか?」
木心坊「それなら、、」
木心坊は棚から降りると廊下に行き、左の方を指差す。
木心坊「本体から離れられないから方向しか分からないけどあっちに行った。」
樹霧之介「ありがとうございます。」
樹霧之介はお礼を言って店を出ようとするが木心坊に呼び止められる。
木心坊「待てよ。手伝ったんだからお前も僕を手伝ってくれよ。」
樹霧之介「何か困った事があるんですか?」
木心坊「ここに居たら誰か知らない奴に売られる可能性があるだろ。また使われるのが嫌なんだ。連れ出してくれないか?」
樹霧之介「売り物ですし、勝手に持ち出せません。僕はお金を持っていませんし、、」
木心坊「けっ、金無しかよ。協力して損した。」
樹霧之介「母に相談したら買えるかもしれませんが、今口調荒くなりませんでした?」
木心坊「買える奴いるのか、先に言ってくれよ。」
樹霧之介は少し複雑な気持ちになりながらもまだ話している柚子の元に向かう。
樹霧之介「母さん。」
柚子「あら、ごめんね。次はどこに行こうか?ねえ、篁音。どこかおすすめある?」
樹霧之介「あ、あの、買って欲しいものがあるんですが、良いですか?」
柚子「良いわよ。まさか樹霧之介から言ってくれるなんて、何欲しいの?」
樹霧之介の我儘が嬉しい柚子に少し申し訳なさを感じながらもさっきの小道具店へ柚子と行き、木心坊の宿るすりこぎを買う。
樹霧之介「ありがとうございます。」
柚子「まあ、樹霧之介らしいと言えば樹霧之介らしい買い物よね。」
樹霧之介「君はどこに行きたいんですか?」
木心坊「ゴリゴリされなければどこでもいい。できれば植えて欲しいけど。」
樹霧之介「なら妖ノ郷のどこかに植えましょう。」
木心坊「なんだよそこ。」
樹霧之介「妖怪たちが住んでいる隠里です。」
木心坊「僕を加工するような人間はいないのか。それは良いな。」
樹霧之介「それで、僕はその子供を探しに行きたいんですが、、」
柚子「その子は私が預かるわ。いってらっしゃい。」
樹霧之介「ですが、子供の方は誰かが見つけてくれるかもしれませんし、母さんは僕と周りたいんでしょ?」
柚子「確かにそうだけど、、でも、放っておけないんでしょ。」
樹霧之介「はい。すぐ戻って来ますから。」
柚子「ええ、ちゃんと助けてらっしゃい。」
樹霧之介「はい、行って来ます。」
それから樹霧之介は妖視帯を外して木心坊に教えてもらった方向を順に探すとテナントの入っていない場所を見つける。
人のいる場所なら見ているだろうからこういった人のいない場所が怪しいのだ。
ロープパーテーションを乗り越えて中に入ると奥から小さく声が聞こえてきた。
その声は店の奥の従業員用のバックヤードのまた奥から聞こえてくるのでさらに進むと、休憩所と書かれた扉の奥から声が聞こえる。
だがその扉には鍵がかかっているらしく開けようとしても開かない。
???「離してよ。」
小さく聞きにくかった声が近づいた事によりはっきりと聞こえたがそれは聞いた事のある声だった。
樹霧之介「真生ちゃん!?そこにいるんですか?」
真生「お兄ちゃん?」
樹霧之介「猫を追っていたのは男の子じゃないんですか?」
真生「弟に変な猫が巻き付いて。ドア開かなくて、助け呼べなくて。」
真生の声は掠れて、今にも泣きそうだ。
樹霧之介「分かりました。ドアを壊します。その弟はドアの近くにいますか?」
真生「ううん。部屋の奥にいる。」
樹霧之介「分かりました。必ず助けます。真生ちゃん、危ないからドアから離れた場所にいてください。」
真生「うん。」
足音が聞こえた後、真生の声が聞こえる。
真生「離れたよ。お兄ちゃん。」
樹霧之介「それじゃ念の為ドアから離れて伏せててくださいね。」
樹霧之介はあるだけの木の玉を地面に撒くとドリルのように先を尖らせてドアの鍵をめがけて力いっぱいに攻撃を加える。
だが少し傷がつくだけで開く気配はない。
幸いにも音はここが奥にある事と外の喧騒にかき消されて聞こえてなさそうだ。
樹霧之介は諦めずに何度か繰り返すとバキッという音と共に鍵は壊れてドアが開いた。
樹霧之介が部屋に入ると真生が走り寄って樹霧之介の足に抱き付く。
その様子を見て樹霧之介は真生の頭を優しくポンポンと叩く。
樹霧之介「もう大丈夫ですよ。」
樹霧之介が真生を宥めながら部屋を見回すと薄暗い部屋の中で光る丸い目がこちらを警戒していた。
それは蛇の様に長い胴を男の子に巻き付けた黒い猫だった。
男の子は操られているのか樹霧之介が入って来ても反応せず、猫を撫で続けている。
樹霧之介は鍵を開けた時の木のドリルを玉に戻してその内の1つを手に取り、棒にして猫を突いてみる。
だが猫は柔軟に体をくねらせてその棒を避けた。
樹霧之介は真生の弟に当たらない様に真生の弟と猫の間に木の棒を差し込み、そのまま変形させて猫だけを木の棒を巻きつけて引き剥がそうとするが真生の弟は猫を抱きしめてしまう。
このままでは力ずくで引き剥がそうとすれば真生の弟も傷つけてしまうので樹霧之介は他の仲間を呼ぼうか迷っていると真生が樹霧之介に聞く。
真生「ねえ、あの猫の後ろ足どこにあるの?」
樹霧之介「え、それ今聞く事ですか?」
そうは言ったが今見えているのは猫の胴と上半身のみで真生の言う下半身は見えていない。
暗さに慣れてきた目を凝らすと猫と真生の弟がいる後ろの部屋の角に何かあるのが見える。
毛が生えていて肉球もあるためこの猫の後ろ足かと思ったが、前足や頭もあり丸まっている様に見える。
樹霧之介は猫を真生の弟から引き剥がすのを一旦やめて、真生の弟ごと猫をずらすと部屋の角の猫を見てみると、その猫はピクリとも動かず、毛並みもボサボサで乾いている様だ。
樹霧之介が近づこうとすると長い猫が真生の弟から離れて、飛びかかって来たので尖らせた棒の先で突くと白い煙となって消えてしまった。
それと同時に真生の弟は糸が切れた様に倒れ、真生が駆け寄って抱き起こす。
真生「凪、凪、起きて、大丈夫?」
真生の弟の名前は凪らしく、何度か真生が呼ぶと目を覚ました。
凪「姉ちゃん、どうしたの?ここ何処?」
真生と凪は心配いらなさそうなので樹霧之介は部屋の角を改めて見るとそこには黒い子猫が横たわっていた。
触れば冷たく固くなっていて既に生きてはいない事が分かる。
上の方には蓋の外れた換気口があり、そこから落ちてこの誰もいない鍵のかかった部屋で息絶えたのだろう。
凪「その猫、迷子だったんだよ。」
樹霧之介「この猫のこと知っているんですか?」
凪「あのね、この子のお母さんがね、この子を餌をくれる家に置いてったの。それでね、その家で暮らしてたの。だけどお母さんに会いたくて家出たら迷子になったの。」
操られている間に猫の記憶を見たのか凪は詳しく話してくれた。
猫の首を見てみると名前と住所が書かれている。
真生「その子、家に帰れる?」
樹霧之介「帰したいですがいきなり飼ってた猫の死体を家に置かれても困るでしょうし、焔に来てもらってこの猫の家の近くで弔ってあげましょう。」
真生「そうだね。」
樹霧之介「あとは僕がやりますから、真生ちゃんと凪くんはお母さんとお父さんが心配しているのでえっと、確か1階のインフォメーションでしたっけ?そこに行ってください。」
樹霧之介がそう言うと真生は樹霧之介のズボンを掴む。
真生「やだ。一緒に行って。」
真生は不安そうな顔で樹霧之介を見つめ、凪はそんな真生の手を掴んで戸惑っている。
樹霧之介「、、怖い目に遭ったんです。それに人が多い中、ここから2人だけで行かせるのも危ないですよね。分かりました。お母さんとお父さんの所まで送りましょう。」
それを聞いて真生は凪と繋いでいる手と反対の手を差し出したので樹霧之介は妖視帯を着けてからその手を掴む。
真生「行こう。」
真生と共に店を出ると木心坊を持った柚子が待っていた。
木心坊「遅いぞ!」
柚子「おかえり、その子たちが迷子の子?」
樹霧之介「はい、それで、この女の子の方が真生ちゃんです。」
柚子「あら、そうなの。初めまして。」
真生「誰、、痛い。」
柚子が真生の視線に合わせてしゃがむと、真生は疑問そうに首を傾げたあとに頭を抱えてしゃがみ込んでしまった。
樹霧之介「真生ちゃん!大丈夫ですか!?」
真生「うう。」
凪「お姉ちゃん、たまに頭痛くなるの。お医者さんも原因分からないって。」
樹霧之介「父さんは妖力酔いって言っていましたが、妖力の弱い母さんが近づいてなるものなんでしょうか?」
柚子「分からない。だけど私は側にいない方が良いかもね。この辺見てるから樹霧之介は2人を送ってらっしゃい。」
木心坊「まだ待つのかよ。」
柚子は木心坊を持って適当なお店に入って行った。
すると真生の頭痛も無くなってきたのか、顔を上げて辺りをキョロキョロとしている。
真生「さっきのおばちゃんは?」
樹霧之介「あっちのお店に入りました。真生ちゃんは大丈夫ですか?」
真生「うん。だけど、なんだろう。あの人見たら急に頭痛くなって、悲しくて、、」
樹霧之介「悲しい?」
真生「分かんない。他にも何かが頭ぐるぐるしたけど、痛くてよく分かんないし、けど、何故かゆず、かな?その言葉は分かった。」
樹霧之介「え?」
真生「どうしたの?」
樹霧之介「いえ、何でも無いです。早く君たちのお母さんとお父さんの所に行きましょう。」
真生「うん。」
樹霧之介は1階にある迷子センターまで2人を送り届けると2人の父親が待っていた。
母親は心配で探しに出ていたらしく、父親がスマホで連絡し、無事に家族全員合流できた。
樹霧之介はそれを見届けた後、焔に連絡して柚子と合流するとあの猫の死体を持って首輪の住所の場所に行く。
その家の周りには迷い猫の貼り紙がいくつも貼ってあり、今でも探している事が伺える。
焔には住所を伝えてそこで待っていてもらう事になっていたのだが、樹霧之介たちが向かうと雫も一緒に待っていた。
樹霧之介「あれ?雫も来たんですね。」
雫「こいつ住所だけじゃ場所が分からないのに樹霧之介から呼ばれたって飛び出したのよ。樹霧之介もこいつが人の常識を知っているなんて思っちゃ駄目よ。」
樹霧之介「あはは、すみません。僕が迎えに行くべきでしたね。」
雫「まあいいわ。それでその猫が例の猫ね。」
樹霧之介「はい。お願いできますか?」
焔「任せろ。同じ黒猫が迷ってるってなら俺の炎で道を照らしてやるよ。」
樹霧之介たちは人には見えないので迷い猫の飼い主の家の庭に入る。
家の人達は丁度出かけているようなので猫の死体を置いて焔が燃やす。
その様子を影から見ている猫がいたが、猫の死体が燃えて無くなるころにはいつの間にか居なくなっていた。
柚子「我が子の最期を見届けに来たのね。」
樹霧之介「そうですね。それにしても焔は炎の扱いが上手くなりましたね。」
焔は炎の扱いがより上手くなっており、庭には焼け跡が残っていない。
焔「まあな、今じゃ燃やしたい物と燃やしたくない物、一緒になってても平気だぜ。」
樹霧之介「すごいですね。」
雫「これには私も驚いたわ。ガサツなこいつがこんな繊細なことできるなんて。」
焔「俺だって考えがあって練習してんだよ。」
雫「はいはい。」
樹霧之介「それじゃ2人共ありがとうございます。」
焔「また呼べよ。」
樹霧之介「ええ、その時はお願いします。」
雫「1人で突っ走って迷子になっても助けないわよ。」
焔「えー。」
雫と焔は先に妖ノ郷へと戻って行った。
樹霧之介「僕らはどうします?またショッピングセンター戻りますか?」
柚子「もう十分楽しんだし、私たちも帰りましょう。木心坊も退屈している様だし。」
木心坊「待ってやってんだから早く俺の居場所を提供してくれよ。」
木心坊はもう本心を隠す気もない様でグタッと柚子の持つすりこぎの上で横になっている。
柚子「ねえ、この近くに入り口はあるけど、あっちの入り口まで歩いて行かない?」
柚子の提案に樹霧之介は少し考える。
樹霧之介「それはいつでもできます。今日はさっさと帰って木心坊を植えましょう。」
木心坊「まだ待たされるのかと思ったぜ。」
柚子「そうね。荷物が無い時にまた行きましょうか。」
そう言って樹霧之介と柚子も木心坊を連れて妖ノ郷へと戻り、木心坊の文句を聞きながら満足する場所へと埋めて家へ帰った。
黒根「お帰り、遅かったが楽しめたか?」
柚子「ええ、ショッピングモールへ行って来たの。」
黒根「そうか。」
樹霧之介「真生ちゃんに会いに行くんじゃなくて遊びに行くこと、父さんは知っていたんですか?」
黒根「行く時の柚子の顔を見れば察しはついた。昔っからあの顔の柚子には振り回されたからの。」
樹霧之介「妙に手慣れてたのはそのせいですか。」
柚子「でも真生ちゃんや弟の凪くんにも出会えたじゃない。」
樹霧之介「そうですけど、、」
黒根「そっちの目的も果たせた様で何よりじゃ。」
樹霧之介「はい、、」
黒根「なんじゃ?浮かない顔して。」
柚子「もしかして私の顔見て真生ちゃんが頭痛を起こしたの気にしてるの?」
樹霧之介「、、はい。」
黒根「柚子が近づいてなったという事は妖力酔いじゃなかったのか?」
樹霧之介「それで、母さんが離れた後気になる事を言っていて、、」
柚子「気になる事?」
樹霧之介「頭が痛い時、何故か悲しくなったそうなんです。しかもゆずって言葉が浮かんだとも、、」
柚子「真生ちゃんがそんな事言ってたの、、」
樹霧之介「父さん、やっぱり真生ちゃんは、、」
黒根「それでも悲しくなる理由は何じゃ?」
樹霧之介「分かりませんが、猫の幽霊を前に泣きそうになっていました。感情は小学生なんです。母さんとの思い出を思い出してそんな感情になったのかもしれません。」
黒根「一応筋は通るが、お主は幼い子をあの森に連れて行くのか?それにその予想が正しければ記憶を思い出す度に頭痛を起こしとる。ディブクと、自身の体と会わせた時に何が起こるか分からんぞ。」
樹霧之介「それは、、」
黒根「まだ決まったわけではないが、わしらのせいで頭痛を引き起こしているとなると今は近づかん方が良いな。」
樹霧之介「志乃さんの願いは普通の人間の一生を送る事、真生ちゃんとして暮らせばその願いが叶います。父さんはそう言いたいんですか?」
黒根「違う、あくまでも今だけじゃ。成長してから一度試してみようじゃないか。」
樹霧之介「ですがそれは志乃さんの、真生ちゃんの生活を壊しかねません。これ以上僕たちの勝手で振り回すのは、やめましょう。」
黒根「なら何故お主と出会ったあの町に生まれ変わったんじゃ?」
樹霧之介「子孫がいたからでしょう。」
黒根「お主を見た時、どうだったんじゃ?」
樹霧之介「あの時も頭痛を起こしてましたね。」
黒根「最初は天井下りの事もあってよく分からんだが、2度目はわしらに駆け寄ってくれたじゃろ。」
樹霧之介「それは、、記憶がほとんど無いんです。助けてくれたものに好感を持っててもおかしくはないでしょ。僕は母さんみたいに志乃さんと過ごした時間は少ない。思い出さなくてもおかしくはありません。」
黒根「わしも居たんじゃがな。やはりお主はまだ怖いんじゃな。」
樹霧之介「何がですか?」
黒根「真実を知るのがじゃ。前に話してくれたじゃろ。」
樹霧之介「確かに言いました。ですが今は、、」
黒根「なら何故ディブクと会った時にあの時言った事が本当の事だったか聞かなかったんじゃ?」
樹霧之介「それは、、確かに怖かったです。それを聞いたら僕たちが今までした事が否定されるかもしれないと思って、、」
柚子「あの、言いづらくて言えなかったんだけど、、私、今でもあの癖抜けてないの。」
黒根「今の妖力の量でもなるんか?」
柚子「ええ、ごめんなさい。」
黒根「謝る事ではない。ないが、そうか、なら真生のあれはまだ妖力酔いの可能性があるな。」
樹霧之介「どういう事ですか?」
柚子「私、無意識に香りを出す事があるの。」
樹霧之介「あの気持ちを落ち着けたりするやつですか?」
柚子「ええ、感情が高まると出してしまって、その香りを嗅ぐとその時の私の感情と同じ気持ちになるの。」
樹霧之介「なら、あれは、、」
柚子「私が近づいたのと、元々妖力に敏感なんだと思う。」
黒根「妖力が弱くても妖力を使った匂いを嗅いだせいで頭痛が起きたのかもしれんな。」
樹霧之介「なら、ゆずって言葉が浮かんだのは?」
柚子「それが分からなくて言い出せなかったのもあるのよね。」
樹霧之介「ですが、母さんあの時、悲しかったんですね。やっぱり僕が途中から離れたから、、」
柚子「あああ、そうだけど、それでも息子の成長は嬉しいわ。確かに悲しかったけどちゃんと他の感情もあったんだから。」
樹霧之介「そう言えば悲しかったけど、他の感情もぐるぐるしてたような事も言ってました。」
柚子「初めて一緒に遊んだ最後があれで少し残念だっただけなんだから。」
黒根「なら、志乃がよくいた場所とかを一緒に見て回らんか?いるとすればそういう所じゃろ。」
柚子「そうね。」
樹霧之介「ですがまだ可能性は残ってます。いくつか疑問もありますし。」
柚子「それでもまだ幼いあの子を巻き込むのは良くないわ。」
黒根「そうじゃ、もう少し成長してから調べても良かろう。今は他の可能性を探す事も大事じゃ。」
樹霧之介「、、そうですね。」
柚子「また樹霧之介とお出かけできるの嬉しいわ。」
樹霧之介「僕もです。最初はどこ行きますか?」
黒根「そうじゃの。」
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