7話
この物語には妖怪に対する自己解釈やオリジナル設定が含まれています。
オリジナルの妖怪が登場することもあります。
素人がただ思い付きで書いている物語なので最後まで温かい目で読んでいただければと思います。
※作者に教養がないためここで使っている外国語はAIで翻訳しています。
樹霧之介たちはまずは志乃の育った港町に行く事になった。
近くに妖ノ郷の出入り口が無いのでバスに乗って近くまで行く。
来ているのは樹霧之介、柚子、黒根に加えて陽葵、ハラミも来ていた。
樹霧之介「久しぶりの連休なのに僕たちに付き合わせて大丈夫ですか?」
陽葵「だからこそ、ついて来たんじゃん。浜名瀬さんがいるかもしれない場所。」
黒根「こやつで大丈夫なんかの?」
陽葵「それってどういう意味?」
柚子「まあまあ、私たちも志乃の暮らしたっていう港町は見た事ないのよ。」
樹霧之介「はい、枕返しに一緒に眠らされた時に志乃さんの夢で見た陽葵さんと志乃さんの式神以外に見たものはいないんです。」
陽葵「だけど本当にここなの?遠くに海は見えるけどここ、道路だよ。」
12号「間違いないよ。ご主人、僕たち連れて一度だけ来たから。僕覚えてる。」
黒根「まあ、近くに集落はあるようじゃし、行ってみんか?」
柚子「そうね。」
陽葵「聞き込みしようか?」
黒根「何を聞くんじゃ?」
陽葵「浜名瀬さんに似た小学生って言っても分からないか。」
樹霧之介「それよりこの近くで泊まれる場所聞いてまわりませんか?直接聞くより別の話題を作って、その流れで色々聞くのはどうでしょう?」
陽葵「良いね、それ。」
ハラミ「ってか聞き込みの基本だろ。」
陽葵「いつもは警察官としてだから直接聞いても答えてくれたんだよ。」
ハラミ「今は一般人だ。少しは考えろ。」
陽葵「あ、だけど警察手帳は持って来たよ。」
ハラミ「それ使えば職権乱用だぞ。」
陽葵「バレなきゃいいでしょ。」
ハラミ「それ本気で言っているのか?」
樹霧之介「それは緊急時以外使わないでおきましょう。陽葵さんが困る事になるのは僕らも望んでいません。」
陽葵「冗談だよ。職務以外では使わない。」
黒根「陽葵ならやりかねん。バラバラで動こうかと思っとったが、二手くらいに分かれた方が良いな。」
陽葵「信用ない。」
黒根「わしは陽葵たちと行く、樹霧之介と柚子は2人で行けるか?」
柚子「分かったわ。」
12号「僕もいるよ。僕、樹霧之介と行くからね。」
黒根「悪い、悪い。それで待ち合わせはどうするんじゃ?」
樹霧之介「父さんたちは宿があれば先に行っていてください。宿が複数あった時や無かった時は5号で探します。」
陽葵「話進めてるけど、姿を現すのに妖力使うって聞いたよ。樹霧之介はともかく、2人は大丈夫なの?」
柚子「私たちもハラミと同じで妖視帯を持っているの。」
陽葵「そうなんだ。」
それからそれぞれ分かれて住民に話を聞くことになった。
黒根、陽葵、ハラミの組が一軒の家の呼び鈴を鳴らすとお婆さんが出てきた。
陽葵「この辺で泊まれる場所を知りませんか?」
お婆さん「あら?探しているのは浜ノ内荘かね?」
陽葵「確かそんな名前だった様な気がします。」
お婆さん「この辺で泊まれるのはそこくらいだからね。だけど今の子は何か、機械で調べられるんだろ?」
陽葵「私のスマホ、ここに来る時に電池切れちゃって、、」
黒根「わしも機械音痴で持っとらんのじゃ。」
お婆さん「そうかい、それで場所は分かるかい?」
陽葵「いえ、どう行けば良いんですか?」
陽葵がお婆さんから宿への行き方を聞いていると外から子供の声が聞こえる。
陽葵「ここにも子供がいるんですね。」
お婆さん「辺鄙な場所だけど、私みたいな老人ばかりではないよ。」
陽葵「あ、すみません。私、そんなつもりで言ったんじゃないんです。」
黒根「すまんのう。こやつ思った事がすぐ口に出るんじゃ。」
お婆さん「いいよ。古い建物ばかりで名物もないからね。古民家が流行らなければ若者は皆出て行っていたかもしれなかったからね。」
陽葵「ここで魚は獲っていないんですか?」
お婆さん「最近原因不明の船の故障が多くてね。海に出る者が減ったんだ。昔は魚も貝とかもよく獲れたんだけど、海を埋めて山を崩して道路を作ったから人魚が怒ったんだろうね。」
陽葵「人魚がいるんですか?」
お婆さん「皆信じちゃいないが、私は8年ほど前に見たんだ。魚でもイルカでもない、尾鰭を持った人間を。あれは人魚だと思う。」
陽葵「8年前って浜名瀬さんが旅立った日ですよね?」
黒根「やっぱり故郷は気になっておったんじゃな。」
陽葵「だけどこのお婆ちゃん、霊力をあまり感じないよ。何で見えたんだろ。」
黒根「あやつは半分人間みたいなものじゃし、普通の妖怪より見られやすいのかもしれん。信じている者には見えたんじゃろう。」
お婆さん「いきなりヒソヒソ話して、どうしたんだい?」
陽葵「いえ、何でもありません。宿の場所教えてくれてありがとうございます。」
お婆さん「行けそうかい?」
陽葵「はい。」
陽葵たちはお婆さんと別れて教えてもらった宿へ向かってみる。
その途中でさっきの子供たちに出会った。
陽葵「君たち何してるの?」
子供1「友達が海で妖怪見たって言ってたから見に来たんだ。」
陽葵「え、妖怪?」
黒根「妖気は感じるか?」
陽葵「ううん。今のところ何も、、遠いのかもしれない。」
子供2「おばさんも妖怪に興味あるのか?」
陽葵「おばさん、、」
黒根「相手は子供じゃぞ。」
陽葵「それで、妖怪見たのって君?」
子供2「違うよ。見たやつは事故が起こるかもって漁に出てる大人たちに警告しに行った。」
陽葵「それって何処にあるの?」
子供1「あそこに船見えるだろ。あそこ。」
子供が指差す方には確かに漁船が何隻か停まっている。
子供2「おばさんたちここの人じゃないでしょ。古民家の宿が目当て?」
陽葵「それもあるけど、ここには歴史があるんでしょ。それも知りたくて来たんだよ。」
子供1「そんなのあったか?」
子供3「死んだ婆ちゃんが何か言ってた気もするけど、よく覚えてない。」
子供2「あいつなら知ってるんじゃないか?妖怪にも詳しいし。」
陽葵「あいつって誰?」
子供1「さっき言った妖怪を見たって言う奴だよ。」
陽葵「ああ、大人たちに警告しに行った子ね。」
子供2「そいつ清里って言うんだけど、正直僕たちは妖怪なんて見た事ないし、本当かどうかなんて分かんないけどね。」
陽葵「その妖怪の姿がどんなのとか聞いてないの?」
子供3「大きくて長い妖怪って聞いた。」
子供1「そうそう、それが船に巻き付くんだって。」
黒根「なら蛇系の妖怪かの。」
子供2「爺さんも妖怪詳しいのか?」
黒根「まあの。」
陽葵「話聞かせてくれてありがとう。清里ちゃんだっけ?会いに行ってみるね。」
陽葵たちは子供たちと別れて港の方へ行ってみる事にした。
行くとすぐに清里と思われる漁師の人たちと話している子供を見つける。
ただ少し様子が変で、話している内容を聞くと海に出ている一隻の漁船と連絡がつかないらしい。
陽葵たちに気づいた漁師の1人が話しかけてくる。
漁師「観光の人でしょうか?今は少し立て込んでいるから何かあるなら後ででも良いですか?」
陽葵「あ、はい。ただ私たちは清里ちゃんに妖怪の事聞きたくて来たんです。」
漁師「子供の戯言ですよ。あの子の家庭は少し複雑でね、親戚に引き取られてここに来たんですが、構ってほしいのかよくそういう事言うんですよ。」
陽葵「でも、妖怪が出たって言ったら事故が起こるんですよね?」
漁師「偶然ですよ。事故って言うか悪戯ですし、子供1人でできるものではないうえに証拠も無いので故障とは言っていますが。」
陽葵「その子と話しても良いですか?」
漁師「ああ、相手してもらえればこちらも助かります。」
黒根「連絡のつかない船があるんじゃったか?」
漁師「聞かれていましたか。でも心配はいりません。古い機器を使っているので不具合はよくあるんです。」
黒根「それなら良いがの。」
???「お姉さん、家のお客さん?」
漁師と話していると女の子が話しかけてきた。
陽葵「君は清里ちゃん?お客さんって何かお店してるの?」
清里「うん、私が清里だよ。浜ノ内荘の看板娘。」
陽葵「あのお婆さんに聞いた宿だね。予約してないんだけど、今晩泊まれるかな?」
清里「おじさんに聞かないと分からないけど、まだ空いてたと思うよ。一緒に行く?私ここにいたら邪魔みたいだから。」
陽葵「良い?私君が見たって言う妖怪の事も聞きたいんだ。」
清里「皆、影では嘘だって言ってるよ。お姉さん、物好きだね。」
陽葵「そんな事ないよ。君の事聞いた子供たちは君の言葉信じて妖怪を探してたもの。」
清里「違うよ。また見つけれなかったって明日文句言うために探すふりしてるんだ。」
陽葵「それ言いたいだけなら探すふりもしなくても良いでしょ。半分は信じてるよ。」
清里「全部じゃないんだね。」
陽葵「そこまでは分からないからね。それは自分から聞いたらいいよ。」
清里「別にいいよ。信じようが信じまいが、その人の勝手。それよりお姉さんたち、宿行くんでしょ。案内するよ。」
清里が歩き出したので陽葵たちはついていく。
しばらく歩くと清里は不思議そうにチラチラこちらを見ている。
陽葵「何か気になる事ある?」
清里「この辺、猫がそこそこいるからその子も野良かなって思ってたけど、ずっと付いて来てる。もしかしてお姉さんの猫?うち、ペット禁止だよ。」
黒根「ふむ、見えてはいるが見分けはついてなさそうじゃな。」
清里「何の話?」
陽葵「ハラミ、普通の猫のふりはもういいよ。」
ハラミ「はあ、地味だけど意識しないといけないから疲れるんだぜ。」
清里「喋った!?尻尾も増えてる!?猫又なの?」
陽葵「まあ、そう言う事。私も見える人だから遠慮なくなんでも言ってよ。」
清里「本当?」
ハラミ「疑うなら尻尾触るか?少しだけだけどな。」
ハラミが清里に尻尾を向けると清里は興味深々で触っている。
ハラミ「本物だと分かったらさっさと離してくれ、触られるのはそこまで好きじゃないんだ。」
清里「ごめん。それで、お姉さんは何を聞きたいの?」
陽葵「えっと、まずは清里ちゃんって何歳?」
清里「6歳、来月で7歳になるよ。」
陽葵「へー、落ち着いているからもう少し上だと思ってた。」
清里「まあ、色々あったからね。」
陽葵「それで清里ちゃんの見た妖怪ってどんなの?どの辺で、どの時間帯に見る事多い?」
清里「一気に聞かないでよ。」
ハラミ「そうだぞ。仕事の時だってそれで人を困らせてるだろ。」
陽葵「ごめん、ごめん。えっと、最初に見たのはいつかな?」
清里「1ヶ月くらい前だよ。初めは朝にヌルヌルな海藻が船に大量に入れられていて、誰のせいかって騒いでたの。それで犯人探しが始まったんだけど、夜中にいつの間にか溜まってるの。誰も見つけられないその犯人を私も見つけようとして夜見張ってたら頭と尻尾は海の中で見えなかったけど、長いウナギみたいなのが船の上に乗ってあの海藻をばら撒きながら動いてたの。それ言っても誰も信じてくれなかった。」
黒根「なるほど、思い当たる妖怪はおるが、清里ちゃん、今日は昼の沖に出たんか?」
清里「うん。遠くてよく見えなかったけど、ウネウネ長いのが動いてた。」
黒根「そうか。」
清里「ねえ、お姉さんはおじいちゃんの孫なの?」
陽葵「違うよ。」
清里「そうだよね、似てないもん。」
黒根「陽葵はわしらを手伝ってくれとるんじゃよ。」
清里「へー。おじいちゃんの他にも誰かいるの?」
黒根「わしの妻と息子がおるんじゃ。一緒に宿に泊まる事になると思うからその時に紹介しようかの。」
清里「おじいちゃんには家族がいるんだ。仲良いの?」
黒根「ああ。」
そう話しながら歩いていると宿へと着く。
陽葵たちがこの町に来たのは昼過ぎだったので、その時には空の端がオレンジ色に染まりかけていた。
丁度2人部屋が2部屋空いており、チェックインを済ませて清里とロビーで色々話していると樹霧之介たちも宿へ来た。
陽葵「あ、来た来た。樹霧之介、こっちだよ。」
清里「この人たちがおじいちゃんの家族?」
黒根「そうじゃよ。」
樹霧之介「不思議な事を言う子供がいるって聞きましたが、その子でしょうか?」
陽葵「清里ちゃんって言うんだよ。霊力がそこそこあってハラミも見えてる。」
清里「おばちゃんとお兄ちゃん、若く見えるけど本当におじいちゃんの妻と子供?何歳離れてるの?」
柚子「ふふ、実は私の方が歳は上なのよ。」
陽葵「えっ、そうなの?」
清里「えええええっ!?嘘でしょ?」
樹霧之介「僕たちに年齢はあまり関係ないですからね。」
清里「どう言う事?」
陽葵「まあその話は置いておこう。それで清里ちゃんは泳ぐのが好きなんだよね。」
清里「うん。学校の中で1番速いんだよ。」
樹霧之介「海でもよく泳いでいるんですか?」
清里「うん。海の中が1番落ち着くんだ。おじさんやおばちゃんに止められるけど目を盗んで出て行けば探されないしね。」
柚子「お父さんとお母さんはいないの?」
その言葉に清里は表情を曇らせる。
清里「、、2人共、赤ちゃんの私を捨ててどっかに行っちゃった。」
柚子「あ、、ごめんね。嫌な事聞いちゃったね。」
清里「ううん。顔も見た事ない人の事何てどうでもいいよ。」
陽葵「私、同じ様な人知ってるけど、その人の両親は仕方なく預けてたの。清里ちゃんの両親も何か理由があったのかもよ。」
清里「、、そうだと良いけどね。揃ったのなら部屋に案内するよ。ついて来て。」
部屋は隣同士で、黒根と樹霧之介と12号、柚子と陽葵とハラミで分かれて泊まる事になった。
ハラミは疲れたのか部屋に入ると座布団の上で丸くなり寝てしまった。
部屋は海がよく見える場所だったので陽葵は清里が言っていた事もあり、しばらく眺めてみるが何もない。
柚子「ここ、温泉あるんだって、樹霧之介たちも誘って行かない?」
陽葵「え、調査はいいの?」
柚子「沖にいるなら手出しできないわ。主な活動時間は夜みたいだし、それまでゆっくりしましょ。」
陽葵「あれ?最初の目的、浜名瀬さん探すんじゃなかったっけ?」
柚子「私たちが聞いたところ子供自体少なくて、6,7歳の女の子は清里ちゃんくらいだったのよ。それに生まれ変わりって、前世と同じ運命を辿る事があるらしいわ。」
陽葵「誰が言ってたの?」
柚子「噂程度よ。でも何も無いよりはマシだと思うわ。」
陽葵「確かに浜名瀬さんと同じく赤ちゃんの時に浜名瀬さんと同じ場所に預けられたなんて偶然にしては出来すぎだよね。」
柚子「確かめる術なんて無いからね。様子を見るしかできないのよ。」
陽葵「だけど前世を見れる妖怪はいないの?大天狗とか出来そうとか思ったけど、、浜名瀬さん知らなきゃ分からないよね。」
柚子「、、まあ、いるのよね。志乃を知ってる大天狗。」
陽葵「手伝ってもらう事は出来ないの?」
柚子「一応黒根が行ったけど門前払い。山からも出て来てくれないし。」
陽葵「気になる子をその山に連れて行くなんてできないよね。」
柚子「それに自分より弱いものの頼みなんて聞いてはくれないわ。」
陽葵「強いの?」
柚子「志乃が1度負けるくらいにはね。」
陽葵「え!?」
柚子「まだ実践に慣れてない時だったけど、黒根と力を合わせてなんとか言う事聞かせた感じだったみたいよ。」
陽葵「その時の話、詳しく聞いても良い?」
柚子「私も志乃と黒根から聞いた話しか知らないから詳しく聞きたいなら黒根から聞いた方が良いかもね。」
陽葵「へー。夕食って皆一緒だったよね。その時に聞こうかな。」
柚子「それが良いわね。」
陽葵「あれ?」
陽葵は何かに気づいて窓の外を見てみる。
柚子「どうしたの?」
陽葵「少し遠いけど妖気を感じる。近くに来てるかも。」
柚子「夕飯まで時間はあるわ。行ってみましょう。」
陽葵「うん。」
陽葵と柚子は黒根と樹霧之介にも声を掛ける。
12号は樹霧之介の持っている木の筒から隠里へ戻っているのか見当たらず、4人で海の方へ向かおうとすると玄関で清里と出会う。
清里「お姉ちゃんたちどこか行くの?」
陽葵「あ、えっと、、」
妖怪の事なので、巻き込めないと思い陽葵は言い訳を考えようとするが柚子が答える。
柚子「妖怪が出たから見に行くのよ。」
樹霧之介「良いんですか?」
黒根「今から見に行く妖怪がこの子の見たものと同じか聞きたいし、良いじゃろう。」
柚子「そう言う事。清里ちゃんも来てくれる?」
清里「うん。」
そうして5人で海の方へ向かっている途中でさっきの港で慌ただしく漁師たちが何か叫んだり、走り回っていた。
樹霧之介「何かあったんでしょうか?」
陽葵は先程声を掛けた漁師を見つけて声を掛けてみる。
陽葵「何かあったんですか?」
漁師「あ、子供やお客さんが見るものではありません。大丈夫ですので離れてください。」
陽葵「事件ですか?」
漁師「大丈夫ですので、離れてください。」
陽葵「あ、いえ、私は翠嶺署の巡査、九重と言います。危険があるようでしたら、私が確認しますので、皆さんは少し離れていてください。」
陽葵は持っていた鞄から警察手帳を取り出して漁師に見せる。
漁師「え?警察の人?」
陽葵「休暇中ですが危険があるなら対応しなければなりません。何があったか差し支えない範囲で教えていただけると助かります。」
漁師「分かりました。先程連絡の付かなかった漁船が帰って来たのですが、、見た方が早いですね。来てください。」
陽葵「分かりました。」
陽葵が他の漁師にも説明しながら問題の船に案内されると、そこにはまるで大きなペンチの様な物で押し切られ、先端が無くなった船があった。
その船からは妖気が漂い、明らかに何かの妖怪に襲われた後だった。
黒根「こんなことできるやつは限られるな。」
いつの間にか陽葵の背後にいた黒根が声をかける。
陽葵「漁師の人に見つかったら入れないでしょ。どうやって来たの?」
黒根「わしらは妖怪じゃ。妖視帯を外せば簡単な事じゃよ。」
陽葵「あ、そうか、、」
黒根「じゃから気をつけるのは陽葵、お主のみじゃ。」
漁師「何1人で話しているんですか?」
陽葵「あ、何でもないです。船の中を確かめても良いですか?」
漁師「はい。ただ沈んでないのが不思議なくらいです。気をつけてください。」
陽葵「ありがとうございます。」
船の中を確認しようと足を踏み入れると近くの浜から「いやーー!」と叫び声が聞こえた。
陽葵「私は悲鳴の方を確認します。どなたか110番をお願いします。そして念のため、周りの方には近づかないよう伝えておいてください。」
漁師「あ、はい。分かりました。」
黒根「船はわしが調べておこう。」
陽葵「うん、お願い。」
陽葵は小声で黒根に答えた後、悲鳴が聞こえた場所へ樹霧之介と向かい、清里は柚子と宿へ戻る事になった。
陽葵と樹霧之介が浜へ向かうと腰を抜かして怯えた表情で一点を見つめている女性を発見する。
陽葵「大丈夫ですか?怪我は?何がありました?」
女性「え、あ、あの、、」
陽葵「私は警察官です。落ち着いて話せますか?」
女性「あ、あの、あそこ、、」
女性が震える手で指差した先に人影が見えたので確かめに行くと下半身の無くなった男性の遺体が打ち上げられていた。
そして女性の悲鳴を聞いた人たちが何事かと集まって来ている。
女性「あの、私、、」
陽葵「大丈夫です。あとは私や地元の警察が対応しますから。少し離れて落ち着ける場所へ移動しましょう。」
女性「は、はい。」
陽葵「ごめん、樹霧之介。遺体に人が近寄らないように声掛けしてくれる?」
樹霧之介「あ、ちょっと待ってください。」
女性「誰に言っているんですか?」
陽葵「え?あ、何でもないです。こっちに座れる場所ありますね。行きましょう。」
女性「は、はあ、、」
樹霧之介は影で姿を見えるようにして集まる人に遺体へ近づかないよう声を掛けてくれている。
しばらくして陽葵が樹霧之介の元に戻って来た。
樹霧之介「さっきの女性大丈夫だったんですか?」
陽葵「うん。野次馬の中に旦那さんがいて付き添ってもらった。」
樹霧之介「帰して良かったんですか?」
陽葵「身元は聞いたからね。見つけた時の事少し聞いたけど、散歩中にたまたま見つけただけみたいだし。」
樹霧之介「災難ですよね。」
陽葵「そうだね。波が荒れて来たから少し遺体を移動させたいな。樹霧之介は少し離れてて。」
樹霧之介「手伝いましょうか?」
陽葵「それは駄目。」
樹霧之介「人間のルールですか。」
陽葵「面倒くさいけどね。樹霧之介は声掛け続けてくれる?」
樹霧之介「分かりました。」
そうこうしていると通報を聞きつけた地元の警察が来たので、陽葵は引き継ぎをする。
その頃にはもう妖気も消えていたので樹霧之介と共に宿へ向かう。
樹霧之介「陽葵さんが仕事してるのを近くで見たのは初めてかもしれません。意外と仕事できるんですね。」
陽葵「意外とって言うのは余計じゃない?私だっていつまでも子供じゃないんだよ。」
樹霧之介「分かってはいますがどうしても違和感を感じるんですよ。」
陽葵「、、浜名瀬さんも、こういう違う時間の流れが嫌だったのかな。」
樹霧之介「すみません、、」
陽葵「あ、違、、私こそごめん。そういう意味で言ったんじゃないよね。分かるよ。私はまだ子供っぽいところあるからさ。」
樹霧之介「いえ、、」
それから2人は無言で宿へと到着し、各自の部屋へと入る。
陽葵は部屋に入るとハラミを抱えて部屋の隅で寝転がった。
ハラミ「おい、ちょ、何すんだ!」
陽葵「…。」
ハラミ「、、何があったんだよ。」
陽葵「おばさん、ごめん。私、樹霧之介に余計な事言っちゃった。」
柚子「何言ったかは知らないけど、樹霧之介も悪気はなかった事くらいは分かってるわよ。あまり落ち込まなくてもいいのよ。」
陽葵「それでも、言ったら駄目だった。ずっとしまっておくべきだった。そう、思ってたのについ言っちゃった。」
柚子「あなたは思った事を溜めていられる人じゃないでしょ。」
陽葵「私だってもう大人だもん。我慢しないといけない事くらい分かってる。」
柚子「、、そうね。だけど私は少し嬉しいのよ。」
陽葵「何で?」
柚子「本音ってそうそう、話せる事じゃないでしょ?あなたにとって樹霧之介がそんな存在である事は私にとっても嬉しい。それに樹霧之介はいつも本音を言おうとすると黙っちゃうの。」
陽葵「実の両親でも?」
柚子「だからだと思うわ。本音を隠して生きてきた人の末路を知っている筈なのにね。」
陽葵「末路って、、」
柚子「あれを完全な終わりにしない為に私たちは動いてるけどね。まあ、これからもあなたには樹霧之介に本音をぶつけてほしいわ。あの子も本音をぶつけられる相手を探していると思うから。」
陽葵「でも、そんな事したら、、」
柚子「傷つけるかもね。でもね、多少強引でないとあの子は内側から崩壊する。それに私たち木霊には面白い特性があってね、人の声を返す事があるの。だからあなたが本音を樹霧之介にぶつければあの子も本音を返してくれるかもしれない。」
陽葵「そんなの私にできるの?」
柚子「素直なあなただからこそできると思ってるわ。私たちだとできなかった事をね。」
陽葵「おばさん、、次に話せるのは夕飯の時ですよね?」
柚子「1番近いのはそうね。」
陽葵「すみません、私、、」
柚子「無理はしなくてもいいのよ。そんな話ができたら良いなって思っただけだから。」
陽葵「本当にすみません。その時は大天狗の話を聞きたいから、その後でも良いですか?」
柚子「ははは。ええ、良いわよ。夜は長いもの。でも、私たちは夜活動する事多いから平気だけど、あなたは大丈夫?」
陽葵「警官の仕事も夜勤が多いんだよ。」
柚子「まあ、無理しない程度でいいわよ。」
陽葵「浜名瀬さんがいなくなってからまともに話してないから話したい事はいっぱいあるよ。」
柚子「あなたも成長しても変わらないわね。」
陽葵「良い事でしょ?」
柚子「ええ。」
ハラミ「立ち直ったんなら離してくれよ。」
陽葵「ああ、ごめん。可愛いものって癒しだから落ち込んだ時とかに良いんだよね。」
ハラミ「そうだろ。俺で癒されろ。」
陽葵「やっぱりハラミって可愛いって言葉に弱いよね。」
ハラミ「何か言ったか?」
陽葵「別に。」
それから夕食の時間になり、食堂へ向かう。
まだ樹霧之介たちは来てなかったがしばらく待っていると来たが、樹霧之介は陽葵と目を合わせないようにしていた。
席に座り、食事が始まる。
陽葵「ねえ、おじさん。おばさんから聞いたんだけど、大天狗との戦いってどうやって勝ったの?」
黒根「それ聞いてもお主らでは勝てんと思うぞ。」
陽葵「戦おうとは思ってないよ。ただ、浜名瀬さんが負けるような相手ってどんな相手だったんだろうと思ってさ。」
樹霧之介「え?志乃さん負けたんですか?」
ずっと俯いていた樹霧之介が顔を上げる。
黒根「なるほどのう。少し長くはなるが時間もある。ゆっくり話そうか。」
陽葵「お願いします。」
そうして黒根は語り出した。
ここまで読んでいただいてありがとうございます。
次も読んでくれたら嬉しいです。




