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木霊の成長記  作者: 火乃香


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7話

この物語には妖怪に対する自己解釈やオリジナル設定が含まれています。

オリジナルの妖怪が登場することもあります。

素人がただ思い付きで書いている物語なので最後まで温かい目で読んでいただければと思います。

※作者に教養がないためここで使っている外国語はAIで翻訳しています。

樹霧之介(きりのすけ)たちはまずは志乃(しの)の育った港町に行く事になった。

近くに妖ノ郷(あやかしのさと)の出入り口が無いのでバスに乗って近くまで行く。

来ているのは樹霧之介(きりのすけ)柚子(ゆず)黒根(くろね)に加えて陽葵(ひまり)、ハラミも来ていた。

樹霧之介(きりのすけ)「久しぶりの連休なのに僕たちに付き合わせて大丈夫ですか?」

陽葵(ひまり)「だからこそ、ついて来たんじゃん。浜名瀬(はまなせ)さんがいるかもしれない場所。」

黒根(くろね)「こやつで大丈夫なんかの?」

陽葵(ひまり)「それってどういう意味?」

柚子(ゆず)「まあまあ、私たちも志乃(しの)の暮らしたっていう港町は見た事ないのよ。」

樹霧之介(きりのすけ)「はい、枕返(まくらがえ)しに一緒に眠らされた時に志乃(しの)さんの夢で見た陽葵(ひまり)さんと志乃(しの)さんの式神以外に見たものはいないんです。」

陽葵(ひまり)「だけど本当にここなの?遠くに海は見えるけどここ、道路だよ。」

12号「間違いないよ。ご主人、僕たち連れて一度だけ来たから。僕覚えてる。」

黒根(くろね)「まあ、近くに集落はあるようじゃし、行ってみんか?」

柚子(ゆず)「そうね。」

陽葵(ひまり)「聞き込みしようか?」

黒根(くろね)「何を聞くんじゃ?」

陽葵(ひまり)浜名瀬(はまなせ)さんに似た小学生って言っても分からないか。」

樹霧之介(きりのすけ)「それよりこの近くで泊まれる場所聞いてまわりませんか?直接聞くより別の話題を作って、その流れで色々聞くのはどうでしょう?」

陽葵(ひまり)「良いね、それ。」

ハラミ「ってか聞き込みの基本だろ。」

陽葵(ひまり)「いつもは警察官としてだから直接聞いても答えてくれたんだよ。」

ハラミ「今は一般人だ。少しは考えろ。」

陽葵(ひまり)「あ、だけど警察手帳は持って来たよ。」

ハラミ「それ使えば職権乱用だぞ。」

陽葵(ひまり)「バレなきゃいいでしょ。」

ハラミ「それ本気で言っているのか?」

樹霧之介(きりのすけ)「それは緊急時以外使わないでおきましょう。陽葵(ひまり)さんが困る事になるのは僕らも望んでいません。」

陽葵(ひまり)「冗談だよ。職務以外では使わない。」

黒根(くろね)陽葵(ひまり)ならやりかねん。バラバラで動こうかと思っとったが、二手くらいに分かれた方が良いな。」

陽葵(ひまり)「信用ない。」

黒根(くろね)「わしは陽葵(ひまり)たちと行く、樹霧之介(きりのすけ)柚子(ゆず)は2人で行けるか?」

柚子(ゆず)「分かったわ。」

12号「僕もいるよ。僕、樹霧之介(きりのすけ)と行くからね。」

黒根(くろね)「悪い、悪い。それで待ち合わせはどうするんじゃ?」

樹霧之介(きりのすけ)「父さんたちは宿があれば先に行っていてください。宿が複数あった時や無かった時は5号で探します。」

陽葵(ひまり)「話進めてるけど、姿を現すのに妖力使うって聞いたよ。樹霧之介(きりのすけ)はともかく、2人は大丈夫なの?」

柚子(ゆず)「私たちもハラミと同じで妖視帯(ようしたい)を持っているの。」

陽葵(ひまり)「そうなんだ。」

それからそれぞれ分かれて住民に話を聞くことになった。

黒根(くろね)陽葵(ひまり)、ハラミの組が一軒の家の呼び鈴を鳴らすとお婆さんが出てきた。

陽葵(ひまり)「この辺で泊まれる場所を知りませんか?」

お婆さん「あら?探しているのは浜ノ内荘(はまのうちそう)かね?」

陽葵(ひまり)「確かそんな名前だった様な気がします。」

お婆さん「この辺で泊まれるのはそこくらいだからね。だけど今の子は何か、機械で調べられるんだろ?」

陽葵(ひまり)「私のスマホ、ここに来る時に電池切れちゃって、、」

黒根(くろね)「わしも機械音痴で持っとらんのじゃ。」

お婆さん「そうかい、それで場所は分かるかい?」

陽葵(ひまり)「いえ、どう行けば良いんですか?」

陽葵(ひまり)がお婆さんから宿への行き方を聞いていると外から子供の声が聞こえる。

陽葵(ひまり)「ここにも子供がいるんですね。」

お婆さん「辺鄙な場所だけど、私みたいな老人ばかりではないよ。」

陽葵(ひまり)「あ、すみません。私、そんなつもりで言ったんじゃないんです。」

黒根(くろね)「すまんのう。こやつ思った事がすぐ口に出るんじゃ。」

お婆さん「いいよ。古い建物ばかりで名物もないからね。古民家が流行らなければ若者は皆出て行っていたかもしれなかったからね。」

陽葵(ひまり)「ここで魚は獲っていないんですか?」

お婆さん「最近原因不明の船の故障が多くてね。海に出る者が減ったんだ。昔は魚も貝とかもよく獲れたんだけど、海を埋めて山を崩して道路を作ったから人魚が怒ったんだろうね。」

陽葵(ひまり)「人魚がいるんですか?」

お婆さん「皆信じちゃいないが、私は8年ほど前に見たんだ。魚でもイルカでもない、尾鰭を持った人間を。あれは人魚だと思う。」

陽葵(ひまり)「8年前って浜名瀬(はまなせ)さんが旅立った日ですよね?」

黒根(くろね)「やっぱり故郷は気になっておったんじゃな。」

陽葵(ひまり)「だけどこのお婆ちゃん、霊力をあまり感じないよ。何で見えたんだろ。」

黒根(くろね)「あやつは半分人間みたいなものじゃし、普通の妖怪より見られやすいのかもしれん。信じている者には見えたんじゃろう。」

お婆さん「いきなりヒソヒソ話して、どうしたんだい?」

陽葵(ひまり)「いえ、何でもありません。宿の場所教えてくれてありがとうございます。」

お婆さん「行けそうかい?」

陽葵(ひまり)「はい。」

陽葵(ひまり)たちはお婆さんと別れて教えてもらった宿へ向かってみる。

その途中でさっきの子供たちに出会った。

陽葵(ひまり)「君たち何してるの?」

子供1「友達が海で妖怪見たって言ってたから見に来たんだ。」

陽葵(ひまり)「え、妖怪?」

黒根(くろね)「妖気は感じるか?」

陽葵(ひまり)「ううん。今のところ何も、、遠いのかもしれない。」

子供2「おばさんも妖怪に興味あるのか?」

陽葵(ひまり)「おばさん、、」

黒根(くろね)「相手は子供じゃぞ。」

陽葵(ひまり)「それで、妖怪見たのって君?」

子供2「違うよ。見たやつは事故が起こるかもって漁に出てる大人たちに警告しに行った。」

陽葵(ひまり)「それって何処にあるの?」

子供1「あそこに船見えるだろ。あそこ。」

子供が指差す方には確かに漁船が何隻か停まっている。

子供2「おばさんたちここの人じゃないでしょ。古民家の宿が目当て?」

陽葵(ひまり)「それもあるけど、ここには歴史があるんでしょ。それも知りたくて来たんだよ。」

子供1「そんなのあったか?」

子供3「死んだ婆ちゃんが何か言ってた気もするけど、よく覚えてない。」

子供2「あいつなら知ってるんじゃないか?妖怪にも詳しいし。」

陽葵(ひまり)「あいつって誰?」

子供1「さっき言った妖怪を見たって言う奴だよ。」

陽葵(ひまり)「ああ、大人たちに警告しに行った子ね。」

子供2「そいつ清里(きより)って言うんだけど、正直僕たちは妖怪なんて見た事ないし、本当かどうかなんて分かんないけどね。」

陽葵(ひまり)「その妖怪の姿がどんなのとか聞いてないの?」

子供3「大きくて長い妖怪って聞いた。」

子供1「そうそう、それが船に巻き付くんだって。」

黒根(くろね)「なら蛇系の妖怪かの。」

子供2「爺さんも妖怪詳しいのか?」

黒根(くろね)「まあの。」

陽葵(ひまり)「話聞かせてくれてありがとう。清里(きより)ちゃんだっけ?会いに行ってみるね。」

陽葵(ひまり)たちは子供たちと別れて港の方へ行ってみる事にした。

行くとすぐに清里(きより)と思われる漁師の人たちと話している子供を見つける。

ただ少し様子が変で、話している内容を聞くと海に出ている一隻の漁船と連絡がつかないらしい。

陽葵(ひまり)たちに気づいた漁師の1人が話しかけてくる。

漁師「観光の人でしょうか?今は少し立て込んでいるから何かあるなら後ででも良いですか?」

陽葵(ひまり)「あ、はい。ただ私たちは清里(きより)ちゃんに妖怪の事聞きたくて来たんです。」

漁師「子供の戯言ですよ。あの子の家庭は少し複雑でね、親戚に引き取られてここに来たんですが、構ってほしいのかよくそういう事言うんですよ。」

陽葵(ひまり)「でも、妖怪が出たって言ったら事故が起こるんですよね?」

漁師「偶然ですよ。事故って言うか悪戯ですし、子供1人でできるものではないうえに証拠も無いので故障とは言っていますが。」

陽葵(ひまり)「その子と話しても良いですか?」

漁師「ああ、相手してもらえればこちらも助かります。」

黒根(くろね)「連絡のつかない船があるんじゃったか?」

漁師「聞かれていましたか。でも心配はいりません。古い機器を使っているので不具合はよくあるんです。」

黒根(くろね)「それなら良いがの。」

???「お姉さん、家のお客さん?」

漁師と話していると女の子が話しかけてきた。

陽葵(ひまり)「君は清里(きより)ちゃん?お客さんって何かお店してるの?」

清里(きより)「うん、私が清里(きより)だよ。浜ノ内荘(はまのうちそう)の看板娘。」

陽葵(ひまり)「あのお婆さんに聞いた宿だね。予約してないんだけど、今晩泊まれるかな?」

清里(きより)「おじさんに聞かないと分からないけど、まだ空いてたと思うよ。一緒に行く?私ここにいたら邪魔みたいだから。」

陽葵(ひまり)「良い?私君が見たって言う妖怪の事も聞きたいんだ。」

清里(きより)「皆、影では嘘だって言ってるよ。お姉さん、物好きだね。」

陽葵(ひまり)「そんな事ないよ。君の事聞いた子供たちは君の言葉信じて妖怪を探してたもの。」

清里(きより)「違うよ。また見つけれなかったって明日文句言うために探すふりしてるんだ。」

陽葵(ひまり)「それ言いたいだけなら探すふりもしなくても良いでしょ。半分は信じてるよ。」

清里(きより)「全部じゃないんだね。」

陽葵(ひまり)「そこまでは分からないからね。それは自分から聞いたらいいよ。」

清里(きより)「別にいいよ。信じようが信じまいが、その人の勝手。それよりお姉さんたち、宿行くんでしょ。案内するよ。」

清里(きより)が歩き出したので陽葵(ひまり)たちはついていく。

しばらく歩くと清里(きより)は不思議そうにチラチラこちらを見ている。

陽葵(ひまり)「何か気になる事ある?」

清里(きより)「この辺、猫がそこそこいるからその子も野良かなって思ってたけど、ずっと付いて来てる。もしかしてお姉さんの猫?うち、ペット禁止だよ。」

黒根(くろね)「ふむ、見えてはいるが見分けはついてなさそうじゃな。」

清里(きより)「何の話?」

陽葵(ひまり)「ハラミ、普通の猫のふりはもういいよ。」

ハラミ「はあ、地味だけど意識しないといけないから疲れるんだぜ。」

清里(きより)「喋った!?尻尾も増えてる!?猫又なの?」

陽葵(ひまり)「まあ、そう言う事。私も見える人だから遠慮なくなんでも言ってよ。」

清里(きより)「本当?」

ハラミ「疑うなら尻尾触るか?少しだけだけどな。」

ハラミが清里(きより)に尻尾を向けると清里(きより)は興味深々で触っている。

ハラミ「本物だと分かったらさっさと離してくれ、触られるのはそこまで好きじゃないんだ。」

清里(きより)「ごめん。それで、お姉さんは何を聞きたいの?」

陽葵(ひまり)「えっと、まずは清里(きより)ちゃんって何歳?」

清里(きより)「6歳、来月で7歳になるよ。」

陽葵(ひまり)「へー、落ち着いているからもう少し上だと思ってた。」

清里(きより)「まあ、色々あったからね。」

陽葵(ひまり)「それで清里(きより)ちゃんの見た妖怪ってどんなの?どの辺で、どの時間帯に見る事多い?」

清里(きより)「一気に聞かないでよ。」

ハラミ「そうだぞ。仕事の時だってそれで人を困らせてるだろ。」

陽葵(ひまり)「ごめん、ごめん。えっと、最初に見たのはいつかな?」

清里(きより)「1ヶ月くらい前だよ。初めは朝にヌルヌルな海藻が船に大量に入れられていて、誰のせいかって騒いでたの。それで犯人探しが始まったんだけど、夜中にいつの間にか溜まってるの。誰も見つけられないその犯人を私も見つけようとして夜見張ってたら頭と尻尾は海の中で見えなかったけど、長いウナギみたいなのが船の上に乗ってあの海藻をばら撒きながら動いてたの。それ言っても誰も信じてくれなかった。」

黒根(くろね)「なるほど、思い当たる妖怪はおるが、清里(きより)ちゃん、今日は昼の沖に出たんか?」

清里(きより)「うん。遠くてよく見えなかったけど、ウネウネ長いのが動いてた。」

黒根(くろね)「そうか。」

清里(きより)「ねえ、お姉さんはおじいちゃんの孫なの?」

陽葵(ひまり)「違うよ。」

清里(きより)「そうだよね、似てないもん。」

黒根(くろね)陽葵(ひまり)はわしらを手伝ってくれとるんじゃよ。」

清里(きより)「へー。おじいちゃんの他にも誰かいるの?」

黒根(くろね)「わしの妻と息子がおるんじゃ。一緒に宿に泊まる事になると思うからその時に紹介しようかの。」

清里(きより)「おじいちゃんには家族がいるんだ。仲良いの?」

黒根(くろね)「ああ。」

そう話しながら歩いていると宿へと着く。

陽葵(ひまり)たちがこの町に来たのは昼過ぎだったので、その時には空の端がオレンジ色に染まりかけていた。

丁度2人部屋が2部屋空いており、チェックインを済ませて清里(きより)とロビーで色々話していると樹霧之介(きりのすけ)たちも宿へ来た。

陽葵(ひまり)「あ、来た来た。樹霧之介(きりのすけ)、こっちだよ。」

清里(きより)「この人たちがおじいちゃんの家族?」

黒根(くろね)「そうじゃよ。」

樹霧之介(きりのすけ)「不思議な事を言う子供がいるって聞きましたが、その子でしょうか?」

陽葵(ひまり)清里(きより)ちゃんって言うんだよ。霊力がそこそこあってハラミも見えてる。」

清里(きより)「おばちゃんとお兄ちゃん、若く見えるけど本当におじいちゃんの妻と子供?何歳離れてるの?」

柚子(ゆず)「ふふ、実は私の方が歳は上なのよ。」

陽葵(ひまり)「えっ、そうなの?」

清里(きより)「えええええっ!?嘘でしょ?」

樹霧之介(きりのすけ)「僕たちに年齢はあまり関係ないですからね。」

清里(きより)「どう言う事?」

陽葵(ひまり)「まあその話は置いておこう。それで清里(きより)ちゃんは泳ぐのが好きなんだよね。」

清里(きより)「うん。学校の中で1番速いんだよ。」

樹霧之介(きりのすけ)「海でもよく泳いでいるんですか?」

清里(きより)「うん。海の中が1番落ち着くんだ。おじさんやおばちゃんに止められるけど目を盗んで出て行けば探されないしね。」

柚子(ゆず)「お父さんとお母さんはいないの?」

その言葉に清里(きより)は表情を曇らせる。

清里(きより)「、、2人共、赤ちゃんの私を捨ててどっかに行っちゃった。」

柚子(ゆず)「あ、、ごめんね。嫌な事聞いちゃったね。」

清里(きより)「ううん。顔も見た事ない人の事何てどうでもいいよ。」

陽葵(ひまり)「私、同じ様な人知ってるけど、その人の両親は仕方なく預けてたの。清里(きより)ちゃんの両親も何か理由があったのかもよ。」

清里(きより)「、、そうだと良いけどね。揃ったのなら部屋に案内するよ。ついて来て。」

部屋は隣同士で、黒根(くろね)樹霧之介(きりのすけ)と12号、柚子(ゆず)陽葵(ひまり)とハラミで分かれて泊まる事になった。

ハラミは疲れたのか部屋に入ると座布団の上で丸くなり寝てしまった。

部屋は海がよく見える場所だったので陽葵(ひまり)清里(きより)が言っていた事もあり、しばらく眺めてみるが何もない。

柚子(ゆず)「ここ、温泉あるんだって、樹霧之介(きりのすけ)たちも誘って行かない?」

陽葵(ひまり)「え、調査はいいの?」

柚子(ゆず)「沖にいるなら手出しできないわ。主な活動時間は夜みたいだし、それまでゆっくりしましょ。」

陽葵(ひまり)「あれ?最初の目的、浜名瀬(はまなせ)さん探すんじゃなかったっけ?」

柚子(ゆず)「私たちが聞いたところ子供自体少なくて、6,7歳の女の子は清里(きより)ちゃんくらいだったのよ。それに生まれ変わりって、前世と同じ運命を辿る事があるらしいわ。」

陽葵(ひまり)「誰が言ってたの?」

柚子(ゆず)「噂程度よ。でも何も無いよりはマシだと思うわ。」

陽葵(ひまり)「確かに浜名瀬(はまなせ)さんと同じく赤ちゃんの時に浜名瀬(はまなせ)さんと同じ場所に預けられたなんて偶然にしては出来すぎだよね。」

柚子(ゆず)「確かめる術なんて無いからね。様子を見るしかできないのよ。」

陽葵(ひまり)「だけど前世を見れる妖怪はいないの?大天狗(おおてんぐ)とか出来そうとか思ったけど、、浜名瀬(はまなせ)さん知らなきゃ分からないよね。」

柚子(ゆず)「、、まあ、いるのよね。志乃(しの)を知ってる大天狗(おおてんぐ)。」

陽葵(ひまり)「手伝ってもらう事は出来ないの?」

柚子(ゆず)「一応黒根(くろね)が行ったけど門前払い。山からも出て来てくれないし。」

陽葵(ひまり)「気になる子をその山に連れて行くなんてできないよね。」

柚子(ゆず)「それに自分より弱いものの頼みなんて聞いてはくれないわ。」

陽葵(ひまり)「強いの?」

柚子(ゆず)志乃(しの)が1度負けるくらいにはね。」

陽葵(ひまり)「え!?」

柚子(ゆず)「まだ実践に慣れてない時だったけど、黒根(くろね)と力を合わせてなんとか言う事聞かせた感じだったみたいよ。」

陽葵(ひまり)「その時の話、詳しく聞いても良い?」

柚子(ゆず)「私も志乃(しの)黒根(くろね)から聞いた話しか知らないから詳しく聞きたいなら黒根(くろね)から聞いた方が良いかもね。」

陽葵(ひまり)「へー。夕食って皆一緒だったよね。その時に聞こうかな。」

柚子(ゆず)「それが良いわね。」

陽葵(ひまり)「あれ?」

陽葵(ひまり)は何かに気づいて窓の外を見てみる。

柚子(ゆず)「どうしたの?」

陽葵(ひまり)「少し遠いけど妖気を感じる。近くに来てるかも。」

柚子(ゆず)「夕飯まで時間はあるわ。行ってみましょう。」

陽葵(ひまり)「うん。」

陽葵(ひまり)柚子(ゆず)黒根(くろね)樹霧之介(きりのすけ)にも声を掛ける。

12号は樹霧之介(きりのすけ)の持っている木の筒から隠里(かくれざと)へ戻っているのか見当たらず、4人で海の方へ向かおうとすると玄関で清里(きより)と出会う。

清里(きより)「お姉ちゃんたちどこか行くの?」

陽葵(ひまり)「あ、えっと、、」

妖怪の事なので、巻き込めないと思い陽葵(ひまり)は言い訳を考えようとするが柚子(ゆず)が答える。

柚子(ゆず)「妖怪が出たから見に行くのよ。」

樹霧之介(きりのすけ)「良いんですか?」

黒根(くろね)「今から見に行く妖怪がこの子の見たものと同じか聞きたいし、良いじゃろう。」

柚子(ゆず)「そう言う事。清里(きより)ちゃんも来てくれる?」

清里(きより)「うん。」

そうして5人で海の方へ向かっている途中でさっきの港で慌ただしく漁師たちが何か叫んだり、走り回っていた。

樹霧之介(きりのすけ)「何かあったんでしょうか?」

陽葵(ひまり)は先程声を掛けた漁師を見つけて声を掛けてみる。

陽葵(ひまり)「何かあったんですか?」

漁師「あ、子供やお客さんが見るものではありません。大丈夫ですので離れてください。」

陽葵(ひまり)「事件ですか?」

漁師「大丈夫ですので、離れてください。」

陽葵(ひまり)「あ、いえ、私は翠嶺署(すいれいしょ)の巡査、九重(ここのえ)と言います。危険があるようでしたら、私が確認しますので、皆さんは少し離れていてください。」

陽葵(ひまり)は持っていた鞄から警察手帳を取り出して漁師に見せる。

漁師「え?警察の人?」

陽葵(ひまり)「休暇中ですが危険があるなら対応しなければなりません。何があったか差し支えない範囲で教えていただけると助かります。」

漁師「分かりました。先程連絡の付かなかった漁船が帰って来たのですが、、見た方が早いですね。来てください。」

陽葵(ひまり)「分かりました。」

陽葵(ひまり)が他の漁師にも説明しながら問題の船に案内されると、そこにはまるで大きなペンチの様な物で押し切られ、先端が無くなった船があった。

その船からは妖気が漂い、明らかに何かの妖怪に襲われた後だった。

黒根(くろね)「こんなことできるやつは限られるな。」

いつの間にか陽葵(ひまり)の背後にいた黒根(くろね)が声をかける。

陽葵(ひまり)「漁師の人に見つかったら入れないでしょ。どうやって来たの?」

黒根(くろね)「わしらは妖怪じゃ。妖視帯(ようしたい)を外せば簡単な事じゃよ。」

陽葵(ひまり)「あ、そうか、、」

黒根(くろね)「じゃから気をつけるのは陽葵(ひまり)、お主のみじゃ。」

漁師「何1人で話しているんですか?」

陽葵(ひまり)「あ、何でもないです。船の中を確かめても良いですか?」

漁師「はい。ただ沈んでないのが不思議なくらいです。気をつけてください。」

陽葵(ひまり)「ありがとうございます。」

船の中を確認しようと足を踏み入れると近くの浜から「いやーー!」と叫び声が聞こえた。

陽葵(ひまり)「私は悲鳴の方を確認します。どなたか110番をお願いします。そして念のため、周りの方には近づかないよう伝えておいてください。」

漁師「あ、はい。分かりました。」

黒根(くろね)「船はわしが調べておこう。」

陽葵(ひまり)「うん、お願い。」

陽葵(ひまり)は小声で黒根(くろね)に答えた後、悲鳴が聞こえた場所へ樹霧之介(きりのすけ)と向かい、清里(きより)柚子(ゆず)と宿へ戻る事になった。

陽葵(ひまり)樹霧之介(きりのすけ)が浜へ向かうと腰を抜かして怯えた表情で一点を見つめている女性を発見する。

陽葵(ひまり)「大丈夫ですか?怪我は?何がありました?」

女性「え、あ、あの、、」

陽葵(ひまり)「私は警察官です。落ち着いて話せますか?」

女性「あ、あの、あそこ、、」

女性が震える手で指差した先に人影が見えたので確かめに行くと下半身の無くなった男性の遺体が打ち上げられていた。

そして女性の悲鳴を聞いた人たちが何事かと集まって来ている。

女性「あの、私、、」

陽葵(ひまり)「大丈夫です。あとは私や地元の警察が対応しますから。少し離れて落ち着ける場所へ移動しましょう。」

女性「は、はい。」

陽葵(ひまり)「ごめん、樹霧之介(きりのすけ)。遺体に人が近寄らないように声掛けしてくれる?」

樹霧之介(きりのすけ)「あ、ちょっと待ってください。」

女性「誰に言っているんですか?」

陽葵(ひまり)「え?あ、何でもないです。こっちに座れる場所ありますね。行きましょう。」

女性「は、はあ、、」

樹霧之介(きりのすけ)は影で姿を見えるようにして集まる人に遺体へ近づかないよう声を掛けてくれている。

しばらくして陽葵(ひまり)樹霧之介(きりのすけ)の元に戻って来た。

樹霧之介(きりのすけ)「さっきの女性大丈夫だったんですか?」

陽葵(ひまり)「うん。野次馬の中に旦那さんがいて付き添ってもらった。」

樹霧之介(きりのすけ)「帰して良かったんですか?」

陽葵(ひまり)「身元は聞いたからね。見つけた時の事少し聞いたけど、散歩中にたまたま見つけただけみたいだし。」

樹霧之介(きりのすけ)「災難ですよね。」

陽葵(ひまり)「そうだね。波が荒れて来たから少し遺体を移動させたいな。樹霧之介(きりのすけ)は少し離れてて。」

樹霧之介(きりのすけ)「手伝いましょうか?」

陽葵(ひまり)「それは駄目。」

樹霧之介(きりのすけ)「人間のルールですか。」

陽葵(ひまり)「面倒くさいけどね。樹霧之介(きりのすけ)は声掛け続けてくれる?」

樹霧之介(きりのすけ)「分かりました。」

そうこうしていると通報を聞きつけた地元の警察が来たので、陽葵(ひまり)は引き継ぎをする。

その頃にはもう妖気も消えていたので樹霧之介(きりのすけ)と共に宿へ向かう。

樹霧之介(きりのすけ)陽葵(ひまり)さんが仕事してるのを近くで見たのは初めてかもしれません。意外と仕事できるんですね。」

陽葵(ひまり)「意外とって言うのは余計じゃない?私だっていつまでも子供じゃないんだよ。」

樹霧之介(きりのすけ)「分かってはいますがどうしても違和感を感じるんですよ。」

陽葵(ひまり)「、、浜名瀬(はまなせ)さんも、こういう違う時間の流れが嫌だったのかな。」

樹霧之介(きりのすけ)「すみません、、」

陽葵(ひまり)「あ、違、、私こそごめん。そういう意味で言ったんじゃないよね。分かるよ。私はまだ子供っぽいところあるからさ。」

樹霧之介(きりのすけ)「いえ、、」

それから2人は無言で宿へと到着し、各自の部屋へと入る。

陽葵(ひまり)は部屋に入るとハラミを抱えて部屋の隅で寝転がった。

ハラミ「おい、ちょ、何すんだ!」

陽葵(ひまり)「…。」

ハラミ「、、何があったんだよ。」

陽葵(ひまり)「おばさん、ごめん。私、樹霧之介(きりのすけ)に余計な事言っちゃった。」

柚子(ゆず)「何言ったかは知らないけど、樹霧之介(きりのすけ)も悪気はなかった事くらいは分かってるわよ。あまり落ち込まなくてもいいのよ。」

陽葵(ひまり)「それでも、言ったら駄目だった。ずっとしまっておくべきだった。そう、思ってたのについ言っちゃった。」

柚子(ゆず)「あなたは思った事を溜めていられる人じゃないでしょ。」

陽葵(ひまり)「私だってもう大人だもん。我慢しないといけない事くらい分かってる。」

柚子(ゆず)「、、そうね。だけど私は少し嬉しいのよ。」

陽葵(ひまり)「何で?」

柚子(ゆず)「本音ってそうそう、話せる事じゃないでしょ?あなたにとって樹霧之介(きりのすけ)がそんな存在である事は私にとっても嬉しい。それに樹霧之介(きりのすけ)はいつも本音を言おうとすると黙っちゃうの。」

陽葵(ひまり)「実の両親でも?」

柚子(ゆず)「だからだと思うわ。本音を隠して生きてきた人の末路を知っている筈なのにね。」

陽葵(ひまり)「末路って、、」

柚子(ゆず)「あれを完全な終わりにしない為に私たちは動いてるけどね。まあ、これからもあなたには樹霧之介(きりのすけ)に本音をぶつけてほしいわ。あの子も本音をぶつけられる相手を探していると思うから。」

陽葵(ひまり)「でも、そんな事したら、、」

柚子(ゆず)「傷つけるかもね。でもね、多少強引でないとあの子は内側から崩壊する。それに私たち木霊(こだま)には面白い特性があってね、人の声を返す事があるの。だからあなたが本音を樹霧之介(きりのすけ)にぶつければあの子も本音を返してくれるかもしれない。」

陽葵(ひまり)「そんなの私にできるの?」

柚子(ゆず)「素直なあなただからこそできると思ってるわ。私たちだとできなかった事をね。」

陽葵(ひまり)「おばさん、、次に話せるのは夕飯の時ですよね?」

柚子(ゆず)「1番近いのはそうね。」

陽葵(ひまり)「すみません、私、、」

柚子(ゆず)「無理はしなくてもいいのよ。そんな話ができたら良いなって思っただけだから。」

陽葵(ひまり)「本当にすみません。その時は大天狗(おおてんぐ)の話を聞きたいから、その後でも良いですか?」

柚子(ゆず)「ははは。ええ、良いわよ。夜は長いもの。でも、私たちは夜活動する事多いから平気だけど、あなたは大丈夫?」

陽葵(ひまり)「警官の仕事も夜勤が多いんだよ。」

柚子(ゆず)「まあ、無理しない程度でいいわよ。」

陽葵(ひまり)浜名瀬(はまなせ)さんがいなくなってからまともに話してないから話したい事はいっぱいあるよ。」

柚子(ゆず)「あなたも成長しても変わらないわね。」

陽葵(ひまり)「良い事でしょ?」

柚子(ゆず)「ええ。」

ハラミ「立ち直ったんなら離してくれよ。」

陽葵(ひまり)「ああ、ごめん。可愛いものって癒しだから落ち込んだ時とかに良いんだよね。」

ハラミ「そうだろ。俺で癒されろ。」

陽葵(ひまり)「やっぱりハラミって可愛いって言葉に弱いよね。」

ハラミ「何か言ったか?」

陽葵(ひまり)「別に。」

それから夕食の時間になり、食堂へ向かう。

まだ樹霧之介(きりのすけ)たちは来てなかったがしばらく待っていると来たが、樹霧之介(きりのすけ)陽葵(ひまり)と目を合わせないようにしていた。

席に座り、食事が始まる。

陽葵(ひまり)「ねえ、おじさん。おばさんから聞いたんだけど、大天狗(おおてんぐ)との戦いってどうやって勝ったの?」

黒根(くろね)「それ聞いてもお主らでは勝てんと思うぞ。」

陽葵(ひまり)「戦おうとは思ってないよ。ただ、浜名瀬(はまなせ)さんが負けるような相手ってどんな相手だったんだろうと思ってさ。」

樹霧之介(きりのすけ)「え?志乃(しの)さん負けたんですか?」

ずっと俯いていた樹霧之介(きりのすけ)が顔を上げる。

黒根(くろね)「なるほどのう。少し長くはなるが時間もある。ゆっくり話そうか。」

陽葵(ひまり)「お願いします。」

そうして黒根(くろね)は語り出した。

ここまで読んでいただいてありがとうございます。

次も読んでくれたら嬉しいです。

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