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43. 光と霧と炎の試練

「ッ……!!」



バンッ!!



柱を破壊して外に飛び出した。

飛び上がりながら見降ろすと、東屋は柱の破片を舞い上げながら小島ごとゆっくりと引っ繰り返るところだった。


木立に覆われた両岸と左右の果てが見えない長い水面みなもはやはり川に見えた。だが堤の一ヵ所が切れていて、コップの水が静かに溢れ落ちるようにそこから水がこぼれている。それがずっと聞こえていた水音の発生源だった。白い建物が遂に吸い込まれるかのようにしてその場所から落ちる。


次の瞬間。


ドオオオ………ン……ッ!!!


「!!」


空気がビリビリと震える。


東屋だった物が粉々に砕け、白い粉塵となって四散した。石(つぶて)が体を掠める。



破壊された……!!



あのどれくらい下に地面があったのか、あるいはなかったのか今いる場所からは視認出来ない。ただ落下の衝撃による崩壊とは明らかに違う。



攻撃……?!どこから……!



高度と保護魔法の強度を上げながら周囲を見渡した。


やっぱり川だ。


緩くうねる長い川の上流と下流はかなり向こうまで見えたが、ある所から先が分からない。木が茂る両岸も流れの両端も霧に覆われており、遠くまでは見通せなかった。


その時、川下方向の霧の中で何かがきらりと光った。その光がこちらに向かって放たれる。


ボンッ!!!


「……ッ!!」


けたつもりだったがけきれなかった。



破られた………!!保護魔法を………!



爆風が体を襲った。川上に向かって体が吹き飛ぶ。



肺をやられた……!



酸素の遮断と胸の痛みで失神しかける。高高度から一気に落ちた。服に強化魔法を掛けていなかったら手足が千切れていたかもしれない。剥き出しの頬がチリチリと焼ける。


今もし解呪されていたら、と背筋が冷たくなった。


自分が不死のままだと常に確信出来るのならこれまでの罠ももっと楽に突破出来ていたと思う。だが突然解呪される恐れがある以上、その優位性はあまり活かせない。迷宮に挑み始めてからずっと、致命的な怪我は負わないように気を付けていた。


保護魔法を張り直しながら水面ぎりぎりで体勢を立て直し、自分に治癒魔法を掛けた。まだ不死だとは思うが、肺が潰れている状態はさすがに苦痛が大きい。呪いによる自然治癒を待っていられない。


口から血が噴き出る。


構わずに体を起こし、起きたことを反芻した。


川下から何か光る物が飛来して、保護魔法に接触した瞬間に爆発した。


最大強度にはしていなかったが、それでも今の自分の保護魔法が破られたことに驚愕する。同時にどこかが微かに引っ掛かる。


と、川下の霧の中でまた光が生じ、二発目が飛んで来た。


保護魔法の強度を上げつつ、一発目と似た軌道を描くその光の粒を観察しようとした。


が。



ボンッ!!!



爆発は体の正面で突然起こった。



「!!」



保護魔法ごと後ろへと吹き飛ぶ。

魔法の膜は今度は破れこそしなかったが、ビキビキとひび割れた。水面が近かったため凄まじい大きさで水飛沫(しぶき)が立つ。


「ぐ……ぅ……ッ!」


回復しきっていない肺に、突然の衝撃がこたえた。先刻さっきの違和感の正体に今気付く。



これも光魔法だ!!

軌道がずれている!!



どうりで遅い(・・)、と思う。発射地点から距離があるせいもあり、光の粒はぎりぎりかわせそうな速度で飛来していた。それは攻撃魔法としては、遅かった(・・・・)。だが軌道がずれて見えているのなら、目視可能な意味がない。



けてみせろと言うことか。



光の歪みを一瞬で修正し身をかわさなければならないのだと、「試験の課題」を察した。ここまでが「予行練習」に過ぎなかったらしいことも。下流で今度は、数十の光が一斉にまたたいた。


「!!」


間に合わない!


保護魔法の強度を最大に上げた。保護魔法を最大強度にすることはあまりない。音や温度と言った失いたくない情報のみならず、空気まで遮断してしまうからだ。だが今、強度を最大にしなければ到底防ぎきれない。



ふっつりと音が途絶えた世界で光の矢が一斉に放たれた。



あれが全てずれて見えているのか。



血の気が引いた。


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