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28. 迷宮に浮かぶ文字

§

――――全員、慌てて空中に留まろうとした。魔法の発動が間に合わずそのまま落ちた者も多かったが、問題にならなかった。落下は本当に一瞬で、ほとんど衝撃なく地面に着地したのだ。


どよめきと短い悲鳴の中で視界が回復した。


自分達が二秒前とは違う場所にいることはすぐに分かった。


柱と柱の間の何もなかった場所に壁が現れ、森が見えなくなっていた。柱自体も巨大な扉に姿を変えている。

はっと後ろを振り返ると、後ろも同じ状況だった。


柱は扉に、扉と扉の間は壁へと姿を変えた場所は、入り口の「神殿」と相似を成す円形だった。


ただ「神殿」の倍は広い。


「祭壇」だけが元の形と大きさのまま、同じ位置にあった。


壁と扉に囲まれたその場所に窓はなかったが、明るかった。全てが白大理石で出来ていて、広さと白さが広大な「くう」を思わせる。


欠けている者がいないか確認するための点呼が行われる中、扉の数が柱の数と同じであるかを数え、それから光源を探して上を向くと天井がなかった。


果てが見えない。


わたし達は巨大な円筒形の空間の底にいた。


上から落ちたと考えるには落下時間があまりに短かった。あの外に出ても「神殿」はないだろう。柔らかな光が降り注ぐ上は空のように思えるが、それも違う。どんなに上へと飛んでも外には出られないと感じる。



これがレベルゼの迷宮。



自分の呼吸に意識を集中して、体と心の強張りを解きほぐそうとした。



落ち着け。

まだ攻撃されることはない。



全員同じ認識を持っていたと思う。皆不安気な表情かおはしていたが、ちゃんと冷静さを保っていた。


魔道具の一覧がまだ提示されていなかった。


最初にその一覧を提示するのは古代の魔法使い達のルールだ。


何かの記録とか遺物とか、創造者について手掛かりになるものが残されている時は、帝国魔法使い(わたしたち)はそれを研究してから迷宮に挑んだ。迷宮には創造者の個性が色濃く反映されるからだ。


「人類史上最強の魔法使い」レベルゼの記録は多かった。


不世出の天才レベルゼは、前例のないことを次々としてのけた魔法使いだ。だが強烈な自負心の裏返しとも言えるが、レベルゼは、「無駄に奇をてらうこともしない人間」とわたし達は見ていた。


共通の約束ごとを破って不意打ちを仕掛けるようなことを、レベルゼはおそらくしない。


果たして点呼が終わるか終わらないかの内に、祭壇の上に音もなく浮かび上がるものがあった。


文字だ。


「!」


古代文字が宙につづられて行く。



全員が一瞬だけ騒めくと、ほぼ終わりかけていた点呼を急いで済ませ、そのは皆固唾を呑んで宙に記されて行く魔道具の名前を見つめた。



海を割る刀


風を操る手袋


魔法の範囲を定める地図


着けた者が見る物を破壊する「破壊の仮面」………



ひと文字ひと文字記されて行く古代語。



リストの提示の仕方に決まりはない。迷宮ごとに全て違う。


火や水を使って華やかに演出する魔法使いも多いが、レベルゼのそれはただおごそかで、同時に美しかった。



九行、三列に渡った魔道具の一覧。



やがて二十七個目に「幻影を操る水晶玉」と記されると、一定の速度で書き続けられていた文字が止まった。


それがリストの最後なのだと理解し、見たものをそのまま記録出来る魔道具の帳面に各自がリストを写し取った。



その時。



宙の文字が消え、同時に祭壇の姿が掻き消えた。



「……!」



しるしを!



手を伸ばしながら叫ぼうとした。


方向が分からなくなる。


祭壇がなくなるとどちらを向いても同じ景色だ。何かを置くか、魔力で床に直接印を付けようとしていた。



だが遅かった。



また突然床が消えた。




今度は本当の落下だった。


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