第十話:先祖返り
〇〇
目を開けたらそこは自分の家のマンションの寝室の天井だった。
『今の夢…一体、なんだったんだ。長い夢を見ていた気がする…』
でもあまりにもリアルすぎていて夢とはとても思えない…。しばらくそうしていたが、視界の端に時計を見て、考えていてもしょうがないと立川慶吾は顔を洗って切り替えることにした。
新米刑事として特殊な部署に配属されて半年以上が経過する。月日に追われると、あっという間に12月になり年の暮れに行われる陰陽局が主催する交流会が開催されるらしい。
それで警備の者を陰陽局から要請を受けて足立と立川は赴くことになったのだった。今日はその日のための打ち合わせがあり今はその帰りである。
「…ちかわ、立川!」
「うぇい!?」
同じ職場である先輩の足立の声に立川は奇声の返事をしてしまう。眉間に皺を寄せながらこちらを見ていることに立川はしまったと後悔するがもうすでに遅い。
「お前、今日はこのまま一回帰って寝ろ」
「え、でも」
「運転中、お前、俺に話しかけてこなかっただろ?」
立川は思い出そうとするが睡眠が取れてないせいで思い出すのも時間がかかりそうだった。後輩の反論する時間も与えずに立川は話を進めた。
「ああ、今日は俺がお前を送っていくから、警察官が居眠り運転なんて示しがつかねえぞ」
先輩の言っていることにごもっともで、何も反論することもなく、素直にと言うよりも警察官という言葉に立川は言い訳を考えてしまった自分を恥じた。
「申し訳ありません、先輩、お願いします」
謝罪と共に深くお辞儀をした。足立は立川の住んでいるところを知っているため着くまで寝ていろと言われたが、先ほどの出来事でなんだか目が冴えてしまったのだった。
このまま無言で帰ってもよかったが珍しく足立の方から声をかけてくれた。いつもは無口だがなんだかんだ面倒見が良く立川はこの人が先輩でよかったと心から思った。
「立川は昨日寝れなかったのか?」
「はい、なんか変な夢を見てしまって、なかなか寝付けなくなってしまって集中している時は眠気とかなかったんですけど」
会議が終わった途端に集中が途切れたのだオルト足立は察した。
「完璧な寝不足だな、こうゆうことはたまにあるのか?」
「いえ、今までなかったんですけど…なんか妙になまなましいんですよね。自分が刀をみたいな持っていたんですよね」
「刀? 侍が持っていたやつか?」
「はい」
「それってもしかして予知夢ってやつじゃないか」
「ええ、予知夢って夢で見たことがそのまま現実になるって夢ですよね、今のご時世刀を持っていたら銃刀法違反になってしまいますよ」
立川は苦笑するとそれにうなづいた。
「そうだな」
足立も釣られたようにおかしそうに笑った。念押しするように言われて立川はうなづいた。
「警部に報告しておくから、今日はもう休め」
「分かりました、警部にお伝えください」
「了解した」
立川は家に到着して、寝る支度を整えてそのまま寝たが、ぐっすりとはいかず、その後また不思議な夢を見た。しかしその夢は前に見たようなものではなく、小さい頃の自分の記憶だった。
〇〇
小さい頃はよく田舎の祖母の家に遊びに行った。祖母の家は広く、その中には蔵があった。その蔵はまるで秘密基地みたいで探検することが好きだった。蔵の中には大昔の巻物などの掘り出し物があったが、子供の自分はそれにどんな値打ちがあるのか知らない。
「おじいちゃん、これなあに?」
「どうした、けいご? ああ、これはご先祖さまが描かれた巻物なんだ、蔵から取ってきたのかな?」
「ご先祖さま…」
「そうだ、私たちより早くに生まれたずっと大昔のご先祖さまは妖怪を刀でやっつけるすごいお人だったんだ」
「妖怪って?」
「妖怪はご先祖さまの天敵なんだ、だが妖怪にも悪いやつばかりではなかった。『首なし妖怪を助けてほしい』といってこの世を去ったらしい」
「首なし妖怪ってどんな妖怪なの??」
「首がないから、こんな感じだろっ?」
祖父は勢いよく服を捲り上げて、声を上げる姿に慶吾は手を鳴らして面白そうに笑った。
「ええ、見てみたいな」
「ああ、いつか会えるといいな」
そしてしばらくして数年後、祖父祖母が亡くなり、田舎には疎遠となり行くことは無くなった。
『どうして忘れていただろう…』
立川は目を覚ますと、時刻は6時前でまだ起きるには少し早かった。けれどもう眠気はどこかへと飛んでいた。
立川慶吾がどうして不思議な夢を見ていたのか…それは彼が狩野定暁の子孫であるからだ。そしてその血は渡辺綱を祖先にもつ。その強すぎる血縁のせいで時折、霊感が強い子供が生まれてきた。その例が三浦定信こと狩野定暁だった。
その強い体質のお陰か、邪気や瘴気に蝕まれることなかったが、立川は霊感がめっぽうなく、警察官になるまでは普通の一般人として暮らしていた。
変化が訪れたのは狭間高校の近くで起きた通り魔事件だった。定暁の由来となった賀茂暁光である御影様に出会ったことで、知らず知らずのうちに力が覚醒してしまったのだ。そして年末の交流会である人物たちと邂逅することも本人は未だ知る由もなかった。
ようやく第九部のラストスパートです(・_・;
次話の投稿は12日となります。




