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第十三話:鬼がきた

※ブロマンス要素が含まれた描写がありますのでご注意ください。

苦手な方は次話の投稿まで今しばらくお待ちくださいませ。


 後ろから声をかけられたカシラは返事をした


「おう、やっていいぞ。こいつの首を切り落としてからな」


 カシラはいばらの前髪をぞんざいに掴みとり、気を失っている彼の顔をじっと覗き込んだ。


「それにしてもこいつの顔は本当にいいな、いっそ金持ちの変態に高く売りつけるか」


 どうやって金儲けをしようか独り言を呟きながら考えていると周りが静かになっていることに気づいた。


「どうした、お前ら?」


 一番近くにいるものが自分の後ろを見ていることに気づいた。そして他の者たちが同様にである。釣られるように視線の先を追っていくとそこにはーー鬼がいた。


〇〇


 月明かりの中、岩の上に立っているのは、煌めくような赤銅色の髪に冷たく凍りつくような青い瞳をもつ大きな人の形をした生き物だった。


 そして何より、鬼だと分かったのはそれは自分たちと異なる部分を持っていた。男の頭の上には二本の角が生えていたらである。


 ゴロつきたちはそれを見てさっきまでいばらを袋叩きにしていた男たちは恐怖で震え上がっていた。


「鬼じゃねえか…!?」


「初めて見た」


「本物か、あれは?」


 ごろつきたちが動揺し右往左往している中、鬼は周りを見て何かに気づき口を開いた。


「最近、俺のナワバリのハズレで悪さをしている奴らがいると聞いてな」


 低く通る声が辺り一面に響き渡る。


「それで近くの里から娘が二人帰らないと言っていた、お前たちの名はアオイとスズか?」


 鬼に名を呼ばれた女性二人は咄嗟に声をあげる。


「は、はい 私がアオイです!」


「ス、スズですっ」


 鬼はじっと二人を見て、服が乱れていることに目を細めて凍りつくような視線で男たちを睨みつけると恐怖で声を上げた。


「ひぃっ!?」


「親父さんとおっかさんが心配している、ーーお前ら覚悟しろよ」


 鬼とは思えない優しい声に二人に涙がポロリと溢れた。その後の低い声音が誰に向けて放たれた言葉なのか彼らは逃げたくても恐怖で金縛りのように体が硬直していた。



〇〇


『あの男もたった一人なんだっ 俺たちに勝てるわけがない』


 忽然と現れた鬼がたった一人だということにカシラは希望を見出していた。 恐怖を振り払うかのようにカシラは大声を振り上げる。


「お前ら、こいつはたった一人だ! 大勢で叩けば何も怖くない!!」


「そうか…お前が親玉か」


 鬼は空高く跳躍し、カシラに襲いかかる。いきなりの急襲にカシラは防御することなく攻撃をモロに喰らってしまい、地面へと叩きつけられる。


「へぶぁっ!?」


 カシラは奇声をあげて痛みで気を失った。いとも簡単に首領を倒されてしまい、ゴロつきたちはその光景にあんぐりと口を開けてただ呆然とすることしかできなかった。それは女性たちも同様である。


「さてと、お前らもやるか…?」


 怯えるごろつきたちを見て鬼は愉快そうに笑うと悲鳴を上げた。蜘蛛の子を散らすかのように逃げ去っていく。


「ひぃぃぃぃ!!?」


 ゴロツキたちも逃げていくのを見ながらスズは何かを思い出したように走った。すぐそばにいたアオイはいきなりの行動に驚く。


「スズ、どこに…!?」


 走っていく方向にいたのは自分たちを助けてくれたいばらがいた。スズはいばらの元に駆け寄ると、自分たちを助けて人の変わり果てた姿に膝から崩れ落ち、涙が止まらなかった。


「ごめんなさい…私たちを助けるために…私が川で涼みたいってわがまま言わなければ、アオイちゃんも攫われなくて、この人もこんなことには…っ」


「スズ…」


 泣き出す友人にアオイは肩を優しくさすった。


「スズが泣いていたら、浮かばれないよ…この人も」


 友人の悲しみを少しでも拭おうとした一言に返事をしたのは忽然と現れ女性たちを助けた鬼だった。


「何を言っているんだ? そいつ、まだ生きているぞ」


 たった一言でアオイとスズは顔を上げると、その瞳には驚きに満ちていた。そしてそのわずかな希望に縋り付いた。


「ほ、本当ですか!?」


 スズはずいっと興奮して立ち上がり恐ることなく近寄って聞いた。


「ああ、ただしかなり弱っている。このまま何もしなければいずれは死ぬだろう」


「そんな、私に…私は何かできないですかっ…?」


 鬼に聞く友人に隣にいるアオイは止めようとはしなかった。彼女も自分を助けてくれたことに何かできないかと思っていたからだ、命の恩人をこのまま見殺すことはできないと。


「そうだな、どうやらこいつは俺と同じらしいが、まだ目覚めてはいないようだな…」


 その言葉の意味に二人は意味が分からずに首を傾げた。そういうばとスズは思い出したことがあった。


「そうだ、この人の目、赤く輝いていた!」


「赤く?」


「はい、とても綺麗に夕焼けのようでした」


 賊のものたちは恐怖で萎縮し、震えていたが、スズはいばらの瞳を見たときに怖いというよりもこの世にこんな美しいものがあるのかと思った。彼が賊たちから袋だたきにされた時は胸が潰れそうだった。


「そうか、それは見たいものだな」


 この時、鬼はいばらに初めて興味を抱いた。それと女性を命懸けで賊から助けたこともだが。この場で亡くすのは惜しいと思った。


 鬼はぷつりと手のひらを自分の牙で傷つけ、血が溢れ出した。その血をいばらの口元に差し出した。しかし意識がもう無いため、血がなかなか口の中に入っていかない。


「ああ、もう面倒だっ」


 ぐいっといばらの襟を引き寄せそれにアオイとスズは「え」と仰天した。鬼は自分の血を含み、いばらに口付けをしたのだ。


 そして血を体内に入れようと口の中に舌を入れた。突然の鬼の行動に女性たちは開いた口が塞がらずただただ唖然としていた。その行為が功を奏したのか、徐々に顔色が良くなり、荒れていた呼吸も少し安定し、閉じていた瞼を開けた。


「お、目を覚まし…」


 目を開けたことに鬼はいばらの瞳を覗き込んだ。そして硬直した。彼女たちが言っていた通りにそこには赤い瞳があった。その鮮やかさに鬼も目を奪われるほどに。そして彼が今、何を求めているのか分かった。


「いいぜ…」


 鬼はいばらに身を引き寄せて首をさらした。いばらが吸血しやすいように彼の体を支えた。血の渇きを癒そうといばらは鬼の首にガブリと食らいついた。


「好きなだけ持っていけ、俺は頑丈だからな」


 無我夢中に血を啜ろうとする姿に鬼は目を細めながらいばらの頭を優しく撫でながら微笑んだ。先ほどの盗賊崩れを情け容赦なく殴りつけたとは思えない鬼の姿があった。

意識無くなっている時に液体が口に上手く入るのか、鬼は人の血を吸えても与えることはできないのでどうしようかと考えた結果、こうなりましたm(_ _)m

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